井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

年末年始の駅で大荷物とベビーカー……エレベーターはどこ? 超繁忙期の移動をスムーズにするコツ

ある日の東海道新幹線東京駅で。この程度なら混雑しているうちには入らないが、超繁忙期にはホームもコンコースも人であふれかえり、構内での移動が円滑に進まなくなる

 いよいよ年末。年始にかけて民族大移動・帰省ラッシュ/Uターンラッシュがやってくる。筆者もそのただなかで移動する1人だ。当然ながら、駅の構内は普段以上に多くの人があふれる。そうしたなかで、できるだけスムーズに移動する手はないものか。特に駅構内の話に重点を置いて、考えてみた。

駅構内での移動-親子連れは特に大変

 親子連れの場合、人数が多いだけでなく、荷物も多くなる傾向にある。クルマだったら、みんな荷物スペースに放り込めば終わりだが、列車で移動する場合には、自分の手で持って歩かなければならない。当然ながら機動力が低下する。

 特に乳幼児がいる場合には、ベビーカーに乗せて移動する場面が増えるだろう。空いていればまだしも、混雑していると、人を避けながら移動するだけで一苦労。しかもベビーカーが加わることで、また荷物が増える。

 特に鉄道が悩ましいのは、上下方向の移動がどうしても発生してしまうこと。「←出口」の案内に従って進んでみたら、そこには階段だけが控えていた、なんていうことになったらつらい。

 また、エスカレーターは2基以上が並んでいれば「片方が上り、他方が下り」と双方向に使い分けるのが一般的だが、1基しかないと片方向だけになってしまう。その場合、「反対方向に向かうエスカレーターは離れた場所にある」あるいは「上りだけで下りがない」といった按配になる。

 そこで可能であれば、移動の際に利用するそれぞれの駅について、駅構内図で「予習」をしておいたらどうだろうか。駅構内図が公開されている駅なら、「駅名 構内図」で検索すれば、大抵何か出てくる。それを印刷して持ち歩いてもよい。

 その駅構内図を見て、駅の構造や全体の配置、そしてエスカレーターやエレベーターがある場所を把握しておけば、エレベーターやエスカレーターを探し回る手間、乗り換えの際の導線を探す手間は軽減できるとの期待を持てる。

 もっとも、どこの駅構内図でも「どの辺にエスカレーターやエレベーターがあります」ということは書いてあっても、「何号車付近です」までは書かれていないことが多い。それでも大雑把な位置が分かっていれば、車両との位置関係を推察する材料にはなる。

 例えば、東海道新幹線なら全列車が16両編成だから、ホームの中央付近が8~9号車となる。すると、ホームの中央より博多方にあるか、東京方にあるかで、個々の号車との位置関係を推察する材料になる。北陸新幹線も全列車が12両編成で揃っているから、同じ要領。それと比べると、さまざまな編成両数が混在している路線は話が難しくなるのだが。

北陸新幹線 敦賀駅のエスカレーター。新幹線ホームの位置が高い位置にあるため、新幹線ホームと乗り換えコンコースを結ぶエスカレーターはちょっと長い
車両と階段・エスカレーター・エレベーターの位置関係を示した掲示の例。西九州新幹線の長崎駅で

 なお、1人で身軽に移動する場合には、逆にエレベーターやエスカレーターを避けて階段を使うと、移動がいくらか円滑になるかもしれない。必ず速く移動できるという保証はいたしかねるが、多くの人がエレベーターやエスカレーターに集中して、そこで詰まる傾向が強まるのが超繁忙期である。

乗り換えの時間には余裕を持って

 大きなトランクやベビーカーがある場合には、エスカレーターよりもエレベーターの方が便利だ。ただし構造上、どうしてもエレベーターによる上下移動は待ち時間が発生しやすい。乗り換えの時間に余裕がないと、なかなか来ないエレベーターを待ちながらイライラ、ということも起こり得る。

 すると、荷物などの都合でどうしてもエレベーターを使わなければならない場合には、超繁忙期には通常以上に乗り換えの時間に余裕を持たせたい。

 また、乗車駅や降車駅における入出場、それと新幹線と在来線の境界では改札を通らなければならず、しかもその多くは自動改札機。利用に慣れている人なら問題ないが、不慣れな人が増えるのが超繁忙期である。すると、自動改札機のところで渋滞が発生する。これもまた、乗り換えの時間に余裕を持たせた方がよい、という理由の1つになる。

とある駅のエレベーター。周囲の通路や構造物との兼ね合いから、フロアによって開く扉が異なり、しかもそれが対面ではなくL字形になっているめずらしい例
大宮駅の新幹線~在来線乗り換え改札で。チケットレスサービスの登場で「改札の通り方」が多様化したため、こんな掲示が必要になった。こういうのも事前に予習しておきたい話である
岡山駅の、新幹線~在来線乗り換え改札。これだけ通路数があっても、混雑するときには人で埋まる

 そして、乗り換えの時間に余裕があれば、乗り継ぐ相手の列車が発車するホームに早めに上がっておいて、自分が乗車する号車の出入台がある位置まで移動しておくのも容易になる。号車案内は頭上や足元に掲出されているのが通例だが、可動式ホーム柵が設置されている駅では、可動式ホーム柵にも号車番号の掲示がある。

 時間に余裕がないと、とりあえず手近な車両に飛び乗っておいて車内で移動することになってしまうが、混雑する車内ではそれが簡単にできない。ことに自由席車では、通路まで人がビッシリということはよくある。最初から目指す号車に乗り込んでおけば、(指定席を確保できていれば)円滑に着席できる。

山陽新幹線の博多駅で。6両編成・8両編成・16両編成が混在しており、しかも8両編成はグリーン車があったりなかったりするので、案内掲示も相応にややこしい
新神戸駅の可動柵。開口の右側と足元に、号車番号の標示があるのが分かる。同じ開口でも、8両編成と16両編成で号車番号が異なる点に注意
北陸新幹線・金沢駅の可動柵。全列車が同じ車型の12両編成で揃っているので、シンプルに号車番号だけを標示している
北海道新幹線・新函館北斗駅の可動柵。ここでは号車番号に加えて、編成全体のなかでどの辺の位置ですよ、という情報も分かる内容にしている

ホームや通路の位置関係を事前に把握しておく

 先に駅構内図で“予習”をする話を書いた。ホーム、改札口、乗り換え通路などの位置関係が頭に入っていれば、いちいち立ち止まって案内表示を探す手間を少なくできるから、そこでも移動をスムーズにする効果がある。

 駅によっては床面に大きく誘導用の案内が描かれていることがある。ところが、こうした案内は、人が少ないときにはちゃんと見えるが、多くの人で大混雑している駅構内では見づらくなる。

 つまり、床面に書かれている案内だけをアテにして「行けば分かる」と高をくくっていると、思わぬ苦労をするかもしれない。そういう意味でも、事前に駅構内の配置を予習しておくことに価値が出てくる。もっとも、自分が構内図のなかでどの位置にいるのか、が分からなければ話は振り出しに戻ってしまうのだが。

北陸新幹線・敦賀駅の乗り換えコンコース。空いているから床面に書かれた矢印が明瞭に分かるが、混雑してくればそうもいかない

車内設備の案内も活用したい

 これは車両形式によってあったりなかったりするのだが、背面テーブルや出入台に「車内設備のご案内」が掲出されている場面は少なくない。それがあれば、「トイレはどっち?」みたいな場面で右往左往しなくても済む。

 旅慣れた人間にとっては、「東海道・山陽・九州新幹線のトイレと洗面所は奇数号車の東京方」(東北・上越・北陸新幹線では東京駅とは逆の端)などといった具合に承知しているものだが、普段利用する機会がなければ、知らなくてもムリはない。そういうときにこそ、車内整備の案内を活用したい。

背面テーブルに書かれた案内の例(N700A)。トイレ・洗面所は1両おきにあるので、前後の車両を含めた3両分の情報があれば大抵の用は足りるという考え
こちらはJR四国の2700系。同じ車両がさまざまな号車になる可能性があるので、号車番号を決め打ちで入れることはせず、自車のみの情報提供となっている