井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
JRの指定券は1回に限り変更できる
2023年4月5日 06:00
変更の内容は多種多様だが
例えば、乗車券なら区間や経由を変更する場面が考えられる。指定券なら対象列車を変更することがある。自由席から指定席への変更も可能だが、これはもちろん、指定席に空席がある場合に限られる。この仕組みがあるため、繁忙期にしばしば「本日は指定席はすべて売り切れですので、自由席から指定席への変更はできません」とのアナウンスが聞かれる。
こうした変更については、変更の可否や差額の収受・返金などについて、さまざまなケースごとに事細かな定めがある。そのすべてについて解説するのは本稿の趣旨ではないし、JR各社のWebサイトに規定に関する情報がちゃんとある。そちらを見ていただく方が確実だ。
今回は、さまざまな「きっぷの変更」のうち、比較的、利用する可能性が高い「特急列車の指定席車における特急券の変更」を、実際の旅行でどのように使うか、というテーマを取り上げてみる。
予定より早くなったり、遅くなったり
未使用の特急券であれば、1回に限って変更ができる。2023年4月現在の時刻表をもとに、例を示してみる。
例えば、福岡市内に何か用事があってお出かけする場合。少し余裕を持たせて、博多を18時36分に発車する「のぞみ62号」の普通車指定席を確保していたとする(東京行きの最終より1本前の列車だ)。ところが実際には早めに片付いてしまい、17時30分ぐらいに博多駅に着いたとする。
もちろん、そこで1時間ばかり暇をつぶしてもよいのだが、17時36分発の「のぞみ56号」がある。これに空席があれば、「のぞみ64号」を「のぞみ56号」に変更できる。「みどりの窓口」に行って頼んでもよいし、指定席券売機を使用してもよい。首尾よく変更できれば、1時間早く帰れることになる。これとは逆に、原券よりも遅い時間の列車に変更することもできる。
変更ができるのは、先にも書いたように1回だけ。2回目以降は「変更」ではなく「取り消して新規に買い直し」となる。どちらでも結果は同じだが、同一区間・同一内容で列車だけが異なる場合、1回目の変更ではおカネは動かない。取り消して新規に買い直すと、払い戻しと新たな支払が発生するのが相違点だ。
「でも、EXサービスでは改札通過前なら何回でも変更ができるよ?」との突っ込みがありそうだ。そのとおり。
しかし実は、EXサービスの「何度でも変更できる」は、内部的には「変更」ではなく「取り消して新規に買い直し」を繰り返している。だから、変更回数の制限を受けない。あとでクレジットカードの明細を見ると、同じ日に返金と新規の支払が発生していると確認できるはずだ。
実際に経験した事例
個人的に、先に書いた「繰り上げ変更」は何度も経験している。不測の事態に備えてスケジュールに余裕を持たせたものの、実際には案ずるほどのことはなく、という場面があるからだ。裏を返せば、意図的に遅めの列車を確保しておき、「早く帰れそうなら早い時間の列車に変更」という使い方も可能ということ。ただし当然ながら、これが成立するのは早い時間の列車に空席がある場合に限られる。
盛岡から東北新幹線で帰ろうとしたら、福島県内の強風で規制がかかり、列車を出せなくなった場面に遭遇した経験がある。このときにはすかさず指定席券売機に向かい、手持ちの特急券よりも前、かつ、その時点でまだ発車していない列車に空席を見つけて変更した。いったん抑止が解けたら、そちらの方が先に発車すると踏んだからだ。
ところが、その特急券で改札を通って列車に乗り込んでも、一向に発車しない。結局、盛岡駅発車の時点ですでに、特急券の払い戻しとなる2時間を超える遅延だった。それでも、当初予定の列車に乗るよりは早く帰れたわけだ。しかも特急料金は払い戻し。
取り消しをめぐる余談
近年ではトンと聞かなくなったが、過去に、指定席の重複発売がときどき発生した一因が、販売済み指定席の取り消し操作にあったらしい。券面記載内容を見ながら手入力すれば、ときには間違いが起きることもあっただろう。
しかし、自動改札機の普及を受けて、情報をきっぷの裏面に磁気エンコードするようになったので、その情報を読み取れば済むようになった。「みどりの窓口」に設置するマルス端末機のうち、1983年に登場したM型から、磁気情報の記録や、それを利用した自動取り消し処理が可能になったそうである。