井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

JRの指定券は1回に限り変更できる

変更後の特急券には「乗変」の標記が加わる。3人掛け中間のB席になってしまったが、早く帰る方を優先した

 多くの場合、最初にスケジュールを立案したら、特にジャマが入らない限りはそれをそのまま実行する。だから、最初に手配した乗車券や特急券などは、そのまま使うことが多い。しかし、規定上は変更もできる。

こちらは変更前の原券。なお、場合によっては変更前の特急券と変更後の特急券をワンセットで持ち歩かなければならないことがある

変更の内容は多種多様だが

 例えば、乗車券なら区間や経由を変更する場面が考えられる。指定券なら対象列車を変更することがある。自由席から指定席への変更も可能だが、これはもちろん、指定席に空席がある場合に限られる。この仕組みがあるため、繁忙期にしばしば「本日は指定席はすべて売り切れですので、自由席から指定席への変更はできません」とのアナウンスが聞かれる。

 こうした変更については、変更の可否や差額の収受・返金などについて、さまざまなケースごとに事細かな定めがある。そのすべてについて解説するのは本稿の趣旨ではないし、JR各社のWebサイトに規定に関する情報がちゃんとある。そちらを見ていただく方が確実だ。

 今回は、さまざまな「きっぷの変更」のうち、比較的、利用する可能性が高い「特急列車の指定席車における特急券の変更」を、実際の旅行でどのように使うか、というテーマを取り上げてみる。

予定より早くなったり、遅くなったり

 未使用の特急券であれば、1回に限って変更ができる。2023年4月現在の時刻表をもとに、例を示してみる。

 例えば、福岡市内に何か用事があってお出かけする場合。少し余裕を持たせて、博多を18時36分に発車する「のぞみ62号」の普通車指定席を確保していたとする(東京行きの最終より1本前の列車だ)。ところが実際には早めに片付いてしまい、17時30分ぐらいに博多駅に着いたとする。

 もちろん、そこで1時間ばかり暇をつぶしてもよいのだが、17時36分発の「のぞみ56号」がある。これに空席があれば、「のぞみ64号」を「のぞみ56号」に変更できる。「みどりの窓口」に行って頼んでもよいし、指定席券売機を使用してもよい。首尾よく変更できれば、1時間早く帰れることになる。これとは逆に、原券よりも遅い時間の列車に変更することもできる。

東海道新幹線・新大阪駅の発車標。これぐらい「のぞみ」の本数が多いと、予定より早い、あるいは遅い列車に変更する場面も増えてくるだろう。本数が少なければ、そもそも変更する意味が薄かったり、変更できる列車がなかったりする
指定席券売機の画面例。右側の列、3段目に「指定席の変更(本日乗車分)」がある。これを選択して、手持ちの特急券を読み取らせることで変更できる

 変更ができるのは、先にも書いたように1回だけ。2回目以降は「変更」ではなく「取り消して新規に買い直し」となる。どちらでも結果は同じだが、同一区間・同一内容で列車だけが異なる場合、1回目の変更ではおカネは動かない。取り消して新規に買い直すと、払い戻しと新たな支払が発生するのが相違点だ。

「でも、EXサービスでは改札通過前なら何回でも変更ができるよ?」との突っ込みがありそうだ。そのとおり。

 しかし実は、EXサービスの「何度でも変更できる」は、内部的には「変更」ではなく「取り消して新規に買い直し」を繰り返している。だから、変更回数の制限を受けない。あとでクレジットカードの明細を見ると、同じ日に返金と新規の支払が発生していると確認できるはずだ。

実際に経験した事例

 個人的に、先に書いた「繰り上げ変更」は何度も経験している。不測の事態に備えてスケジュールに余裕を持たせたものの、実際には案ずるほどのことはなく、という場面があるからだ。裏を返せば、意図的に遅めの列車を確保しておき、「早く帰れそうなら早い時間の列車に変更」という使い方も可能ということ。ただし当然ながら、これが成立するのは早い時間の列車に空席がある場合に限られる。

 盛岡から東北新幹線で帰ろうとしたら、福島県内の強風で規制がかかり、列車を出せなくなった場面に遭遇した経験がある。このときにはすかさず指定席券売機に向かい、手持ちの特急券よりも前、かつ、その時点でまだ発車していない列車に空席を見つけて変更した。いったん抑止が解けたら、そちらの方が先に発車すると踏んだからだ。

 ところが、その特急券で改札を通って列車に乗り込んでも、一向に発車しない。結局、盛岡駅発車の時点ですでに、特急券の払い戻しとなる2時間を超える遅延だった。それでも、当初予定の列車に乗るよりは早く帰れたわけだ。しかも特急料金は払い戻し。

めぐり合わせがわるいと、指定席をとっていた列車が運休になってしまい、変更を余儀なくされることもある。そんなときは即断即決。ボヤボヤしている間に、指定席の空きはどんどん埋まっていく

取り消しをめぐる余談

 近年ではトンと聞かなくなったが、過去に、指定席の重複発売がときどき発生した一因が、販売済み指定席の取り消し操作にあったらしい。券面記載内容を見ながら手入力すれば、ときには間違いが起きることもあっただろう。

 しかし、自動改札機の普及を受けて、情報をきっぷの裏面に磁気エンコードするようになったので、その情報を読み取れば済むようになった。「みどりの窓口」に設置するマルス端末機のうち、1983年に登場したM型から、磁気情報の記録や、それを利用した自動取り消し処理が可能になったそうである。