井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

鉄旅の指定席、どの号車・どちら側を取る?

「えきねっと」でシートマップ表示を行なった例。「×」が表示されている席はすでに売れてしまっている。「北見方面」「旭川方面」と列車の向きも示されている点に注意

 今と昔とで大きく異なるのは、指定席を確保するときの「シートマップ指定」が一般に利用できるかどうか、かもしれない。「みどりの窓口」で席番を決め打ちして「○号車の△番が空いていたらそれを」とリクエストする方法は、かなり昔から存在していたが。

どちら側に座るかが問題になるケース

 号車や席を自由に選択できるということは、選択するための判断基準が要るということでもある。

 まず、分かりやすいテーマとして「どちら側に座るか」。普通、車内の配置は中央に通路があり、その両側に腰掛が並ぶ形だから、進行方向に向かって右側の席なら右側の車窓が見やすいし、左側なら逆になる。すると、「車窓がよいのはどちら側?」が気になるだろう。

 ポピュラーな事例でいうと、東海道新幹線。富士山が見えるのはD・E席側である。静岡県内において、東海道新幹線は太平洋側を走っており、富士山はそれより内陸部にあるから、新大阪方面に向かう下り列車なら右側、東京方面に向かう上り列車なら左側に来る。それがD・E席側である。

N700Sの普通車。左がE席とD席で、富士山が見えるのはこちら側だ

 在来線では、例えば羽越本線の特急「いなほ」。日本海側を北上するから、海が見える側は酒田方面に向かう下り列車なら左側、新潟方面に向かう上り列車なら右側となる。

特急「いなほ」は日本海に沿って北上する。写真は下り列車で、手前に向けて走ってきているから、日本海は左側となる

 中央本線~篠ノ井線の特急「しなの」では、姨捨付近を通過する際に善光寺平を見下ろせるのは、長野方面に向かう下り列車なら右側、名古屋方面に向かう上り列車なら左側となる。

 基本的には、狙った車窓風景が線路に対してどちら側に来るのかを地図で確認して、「進行方向に向かってどちら側の席を取ればよいか」を判断すればよい。

 ところが、「○○はどちら側」と単純に決められないケースもある。例えば、高山本線の特急「ひだ」は飛騨川沿いに走っているが、途中で何回も飛騨川を渡るので、飛騨川が右側に現われたり左側に現われたりする。

HC85系「ひだ」の車内で。ここでは進行方向に向かって左側に飛騨川が現われているが、右側に来ることもある

 なお、ここでは特急列車の話ばかり書いているが、普通列車でも事情は変わらない。車内に入って、左右どちらにも空席があったときに、どちらを選ぶか。車窓重視なら、事前に調べておくとよいだろう。

線路は意外とグネグネしている

 ただし、地図を見てみると分かるが、線路というのは意外とグネグネしていたり、大きく向きを変えたりしているものだ。だから、時として意外な(?)現象も起きる。

 例えば、朝の早い時間に、眠い目をこすりながら下りの東海道新幹線に乗る場面。車内では寝ていたいとなれば、窓から直射日光が射し込んでいたら寝づらい。太陽が位置するのは南側(進行方向に向かって左側)のA席側だから、反対側のE席を取れば大丈夫だろう、と思っていると……。

 実は、愛知県内に入ると今度は、進行方向に向かって右側のE席側から朝日が射し込んでくる。豊橋から岐阜羽島にかけて、東海道新幹線はおおむね北西~北北西に向けて進むので、午前中の早い時間だと太陽がE席側に来るのだ。

 新幹線でもこれだから、在来線ならなおのこと。実は高速道路にも似たような話はある。

どの号車を選ぶかが問題になるケース

 車窓や日光の射し込みは「左右」の問題だが、「前後」が問題になることもある。つまり、何両もの車両を連結している列車で、どの号車の席を取るか。「とにかく空席があれば何号車でもよい」という繁忙期はともかく、選択の余地があるならその方がよい。

 これが問題になるのは、主として新幹線のような長大編成。なぜかというと、端の方の車両からは出口が遠い。大抵、新幹線の駅は出口に向かう階段やエスカレーターがホームの中心付近にあるからだ。仮にホーム上で150m歩くことになれば、それだけで2分ないしそれ以上かかる。

西九州新幹線・長崎駅で。ここでは少し位置が偏っているが、新幹線では基本的に、階段、エスカレーター、エレベーターは中央付近に設けられることが多い

 なお、東北新幹線のうち盛岡以南では、10両編成の「はやぶさ」「やまびこ」「なすの」は東京方の端に寄せて止めるので、その分だけ位置がずれる。これは、「こまち」や「つばさ」を併結したときと位置を合わせるため。すると、編成の真ん中となる5・6号車あたりに陣取っても、ホームの中心より東京駅に寄った位置になってしまう。

東北新幹線の上野駅で。単独10両編成の「やまびこ」と、「つばさ」を併結して17両編成となる「つばさ・やまびこ」で、1~10号車の位置が揃っている様子が分かる。撮影時期が古いので、「はやて・こまち」だったり「あさま」が8両だったりするところは御容赦いただきたい

 ともあれ、新幹線は「編成端部の車両だと出口が遠い」が明白だが、在来線は千差万別なので、決まった法則がない。事前に調べてみるか、何度も同じ駅を利用しているうちに覚えてしまうか、といった話になろうか。電車で通勤・通学している方なら、いつも利用する駅で何号車が階段やエスカレーターに近いかは覚えてしまうだろう。そういう話である。

京浜東北線の上中里駅では、階段もエスカレーターも大船方の端に寄っている。ホーム端部に駅舎があるからだ