週末駅弁
小淵沢駅「元気甲斐」
2022年6月3日 11:30
「元気甲斐」は80年代にテレビ朝日系列で放送されていた料理バラエティ番組「愛川欽也の探検レストラン」の企画で1985年に誕生した、小淵沢の老舗弁当屋 丸政(まるまさ)の駅弁です。とかく短命になりがちなテレビの企画ものでありながら、36年も経った今なお人気を維持し続けている駅弁を今回いただいてみました。
さて、そんな経緯で生まれた「元気甲斐」ですが、今でも手作業で作っているという2段重ねの経木折詰はそれぞれが一の重、ニの重と名付けられ、一の重は京都の銘亭 菊乃井、ニの重は東京の味処 吉左右が担当しています。このような文化の違う東西の共演は山梨県の立地はもちろん、いかにも80年代のテレビっぽい何でもアリの華やかなプロフィールとも感じます。
一の重のご飯はたっぷり入った胡桃のプチプチとした食感と風味がしっかりとした胡桃御飯です。おかずはサクサクとした食感のレンコンのきんぴら、セロリらしさは残しながらクセは弱めのセロリの粕漬、山女魚の甲州煮は濃いめの味付け、胡麻の主張が強いぜんまいと揚げの胡麻酢合え、さっぱりとしたカリフラワーのレモン漬けと、とにかく味のバリエーションが幅広さが印象的です。でも食べ進めていてもバラバラ感皆無。それどころか、どこか伝統的な日本の味のまとまりすら感じます。
ニの重のご飯はほんのり甘い栗としめじのおこわです。ご飯を食べ進めると、下に敷いてある笹の葉の香りがほんのり漂うのもなかなかよいものです。串に刺さった鶏の柚味噌合えはそれほど柚子の主張は強くなく、わりと淡白でボリュームがあります。アスパラの豚肉巻きは豚の脂の旨味とアスパラがよく合っています。
伝統的な和食感の強い一の重に対し、ニの重はどちらかというと若々しい感じ。一度で2種類のお弁当を食べているようなハイブリッドな駅弁です。2段重ねのお弁当だけに量的には十分ですが、お腹いっぱいガッツリ系という印象はありませんでした。価格は1750円とちょっとお高めですが、バラエティに富んだ食事を楽しみたい人にはオススメです。
ちなみに包み紙のアートディレクションは映画監督の伊丹十三さん、描いたのはイラストレーターにして作家の安西水丸さん。八ヶ岳連峰の山々が標高とともに描かれ、麓の鉄橋には蒸気機関車が警笛を鳴らしながら走る姿もなかなかかわいらしいものです。
「元気甲斐」
価格: 1780円
販売駅: 小渕沢駅
購入場所: 小淵沢駅 MASAICHI本店(改札外)
購入日: 2022年4月15日
【お詫びと訂正】初出時、地域名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。