荒木麻美のパリ生活

日本に関するフリー・ペーパー発行元がパリ10区にカフェを開業

「日本」をキーワードにする日仏交流スポット

フランス在住の日本人向けフリー・ペーパー「OVNI」の発行元がカフェ「MEDIACAFE」を開業

 フランス在住の日本人なら誰でも知っているフリー・ペーパーがあります。「OVNI(オヴニ:UFOの意)」といって、毎月2回、フランスで旬となっている話題や出来事、求人や賃貸物件のお知らせといった、とても役に立つ情報が12ページに渡ってコンパクトにまとめられています。 1974年に創刊され、現在もパリを中心にフランス各地の和食レストランや和食材屋さんなどで手に入ります。

 OVNIは日本国内でもフランスに関係のある場所などで入手することができますから、フランスに興味のある人ならば、フランスに住んでいなくとも知っている人は多いかもしれませんね。

 OVNIの発行元である「エディション・イリフネ」では、日本に興味のあるフランス人向けのフランス語によるフリー・ペーパー「ZOOM Japon(ズーム・ジャポン)」も出しています。「ZOOM Japon」は英語版、スペイン語版、イタリア語版もあり、イギリス、スペイン、イタリアでも発行しています。

 OVNIのようなフランス在住の日本人向けフリー・ペーパーは、昔は数種類ありました。しかし現在はOVNI以外はすべて撤退してしまったので、OVNIはこれからも末永く続けてもらいたいものです。

 さて、そのOVNIとZOOM Japon編集部はパリ10区にあります。編集部はエディション・イリフネが運営する「エスパス・ジャポン」という名のスペース内にあり、ここには料理教室や、日本語の書籍や雑誌の図書館、日本語教室、展示会スペースなども入っています。

OVNIとZOOM Japonを発行するエディション・イリフネが運営する「エスパス・ジャポン」

 ここで2018年9月から新たに始まったのが、「MEDIACAFE(メディアカフェ)」というカフェです。

MEDIACAFE

所在地:12 rue de Nancy, 75010 Paris
TEL:+33 (0)1 47 00 77 47
Webサイト:MEDIACAFE(仏語)

「MEDIACAFE(メディアカフェ)」
「MEDIACAFE(メディアカフェ)」

 MEDIACAFEの営業時間は火曜日から金曜日までは13時から19時、土曜日は13時から18時。平日は1日限定20食というランチプレートもあります。おにぎり3つに小皿4品の9ユーロ(約1170円、1ユーロ=約130円換算)とおにぎり2つに小皿2品の6ユーロ(約780円)があり、「ZOOM Japon」編集部の古賀律子さんが中心となって、すべて手作りしています。この内容でこの値段は、外食の値段が高いパリでは本当にお得で貴重。

この日のセットメニューは白米と炊き込みご飯のおにぎり、ミニトマトのゴマだれ、ナスの甘辛煮、レンコンの炒め物、キュウリの香の物。使っている食器類はすべてリサイクル品だそう

 日本の実家で食べるような、出汁の効いた薄味の家庭料理は食べていてほっとします。パリでお茶が無料で付いてくるなんてことは滅多にないので、無料で付いてくる麦茶もありがたいです。

パリではなかなか出会えないコーヒーゼリー、かき氷、アイスコーヒー、ラムネ、抹茶カフェラテ、カルピスなどのほか、日本酒、焼酎、梅酒といったアルコールもあります
コーヒーゼリーも古賀さんのお手製

 MEDIACAFEは構想を思い立ってから8年目にしてできた念願のカフェとのこと。編集業と並行しながらのカフェ運営は大変だと思いますが、古賀さんにどうしてこのカフェを作ろうと思ったのか、このカフェに込める願いなどを聞いてみました。

――MEDIACAFEのこだわりはなんでしょうか?

古賀さん:こだわらないことですね(笑)。普通の家庭で出されるような和食を手ごろな値段で出すことで、和食に対するハードルを低くし、パリ在住の日本人はもちろん、和食好きのフランス人、そして日本に興味がなかった近所の人たちにも気軽に来てもらいたいです。

 私はフランスに留学して一度日本に帰ったんですね。そのとき日本のいわゆる田舎と言われるところに住んでいたのですが、そこでいつもフランス人と交流できる機会を探していました。もしかしたら、同じような思いのフランス人がパリにいるかもしれないと思ったのが始まりで、同じ文化や情報を求める人たちがなんとなく気軽に集まれる場所を、今住んでいる町に作りたかったんです。実は、食事のサービスはその場所のアイテムの一つに過ぎないんですよね。

――どうして「MEDIACAFE」と名付けたのでしょうか?

古賀さん:ここがフリー・ペーパーを出す出版社だからということと、さらにもっと積極的に情報を発信していきたいと思いまして。アーティストを応援するイベントなどもやっていきたいですね。

 とにかく居心地のよい場所にして、ここに来る人たち同士が自然と仲よくなっていくような場所になってほしいという古賀さん。「こだわらない」と言っていましたけど、コーヒーは近所にある、こだわりの強いコーヒー専門店からウガンダ産の豆を仕入れているそう。若干酸味の強いこのコーヒー、慣れると癖になってほかのコーヒーだと物足りなくなるとのことでした。

カフェのロゴはフリー・ペーパーの発行元である「エディション・イリフネ」(入船から来ている)と「人」を合わせて作りました

 10区はここ数年開発が加速化しており、「BOBO(ボボ:ブルジョア・ボヘミアンの略称)」と呼ばれる人が多く住んでいます。BOBOはそこそこ裕福ながら典型的なブルジョワ的生活をよしとしない人たちなのですが、BOBOの増加に伴いオーガニックのお店や個性的でおしゃれなお店もどんどん増えています。一方で庶民的な雰囲気もまだまだ残っているので、私の好きなエリアの一つです。機会があれば10区を散策がてら、MEDIACAFEにも立ち寄ってみてくださいね。パリ在住の日本人や、日本好きのフランス人が集う場所ですから、観光客でも歓迎されること間違いなしです。

9月29日から8日間に渡ってパリ中で開催された日本酒のイベント「酒巡り in Paris」の会場の一つにもなったMEDIACAFE
お酒と、それに合わせた特別創作料理も提供されました

 ちなみに「OVNI」「ZOOM Japon」のどちらもオンラインでも読めますので、紙版を入手しにくい方はオンラインでどうぞ。

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/