旅レポ

ハワイ島の歴史と美しいビーチに包まれてゆるやかな時間を過ごせる「マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ」

「マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ」(写真提供:マウナ ラニ リゾート)

 ハワイに抱くイメージは人それぞれだが、青いビーチやショッピング街など、にぎやかながらも、どこか自由な風が吹いている南国らしい風景を真っ先に思い浮かべる人の多いのではないだろうか。しかし、ハワイは大小多数の島から成り、島のなかを移動するだけでも雰囲気は大きく変わるし、島が違えば見所も変わるほど、魅力的な観光スポットが多い。

 そうした島の一つで、州の名前を冠するのが「ハワイ島」だ。州都のホノルルがあるのはオアフ島で、ハワイ島は面積がより広く、ハワイ諸島最大。このことから「ビッグアイランド」の通称も持つ。

 そのハワイ島には東岸のヒロ、西岸にコナといった主要都市があり、それぞれに空港がある。今回はホノルル国際空港からコナ国際空港へ移動してハワイ島を訪れた。コナ空港から州道19号をハワイ島の西海岸に沿って北上すると、火山から流れ出た溶岩が生み出した黒い大地と、そこを切り裂くように走る道路という日本ではちょっとお目にかかれないであろう強烈な風景に出会える。

コナ国際空港から州道19号を北上。火山から流れ出た溶岩による黒い大地を切り裂くように道路が走るという、それだけで新鮮な光景のなかをドライブ

 この西海岸の道路沿いには、数々のリゾートホテルが林立しており、各リゾートエリア内で思い思いのバカンスを過ごすことができるのがハワイ島・コナ地域の魅力だ。ワイキキなどとは、また違ったノンビリとしたムードの時間が流れる。

 そんなハワイ島のリゾートホテルのなかで、今回宿泊したのが「マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ」だ。

「マウナ ラニ リゾート」

 このリゾート地が作られた場所は、古くは「カラフイプアア」と呼ばれ、ハワイ王国時代からパワースポットとして知られていたという。また、この地の養魚池「フィッシュポンド」で育った魚は王族に食用として供与されてきた。

 そして、1936年にこの地を購入したのが王族の地を引くフランシス・ハイド・イイ・ブラウン。ブラウンは1964年の東京オリンピックの際に、東急グループの五島昇と出会う。五島昇はこの地をリゾート地として開発、1983年にホテルを創業した。マウナ ラニ ベイや36ホールのゴルフ場はいまも東急グループの資本下にある。

 と、このように由緒ある土地が日本の資本によってリゾートへと変革していった物語を持つマウナ ラニ リゾートだが、宿泊施設であるホテルのほか、ゴルフ場、スパ&フィットネスエリア、ショップなどがエリア内に点在。さらに、パワースポットとされた「カラフイプアア」時代の名残を残すエリアも「ヒストリック・プリザーブ」として残されており、古きを温めつつも現代のリゾート地として地位を築いている。

チェックインやゲストサービスは日本語対応可能、部屋は9割以上がオーシャンビュー

「マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ」

 マウナ ラニ リゾートの宿泊施設「マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ」は、州道19号沿いの入り口から入ってもっとも奥、海にほど近い場所に建っており、オーシャンビューの部屋が多いのが特徴だ

 その入り口は両脇に池があり、日本庭園のようでもあり、やはりハワイのようでもあり、優雅な雰囲気が漂っている。そして、一歩館内に入ると地下から上層階まで吹き抜けの中庭が広がって開放感がある。閉塞感を一切感じさせない設計は、ゆったりとした時間を過ごそうとリゾート地を訪れた人にとっては心地よいものに感じられるだろう。

 チェックインも日本人に優しい。日本語を話せるスタッフが常駐しており、一通り説明を聞けるだけでなく、ゲストサービスも日本語で対応可能(対応時間はシーズンにもよるが原則として9時~18時)。困ったことや相談したいことがあるときに日本語で解決へ導けることは、休暇をストレスなく過ごしたい人にとって何よりの安心感だろう。

入り口。両脇の池にはスイセンが咲いていたり、コイが泳いでいたりと、どこか和風で親しみを感じる
館内に入ると吹き抜けの広々とした中庭が広がっており開放感がある。地上階部分のスペースではフラショーなども行なわれる
ライティングも美しく夜の顔も印象に残る
チェックインやゲストサービスで日本語の対応が可能。バカンスに来て言葉のストレスがないのはありがたい
チェックイン時には、男性にはククイの実、女性のシェルのレイをプレゼント。同行のカメラマンはすっかり気に入って、滞在中ずっと首にかけていた

 このマウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズは、矢印のような形をしているのが特徴で、矢の先が海に面している。その矢の先に設けられた部屋を「オーシャンフロント」、矢の節の部分から海を望める部屋を「オーシャンビュー」と分類している。

 先の中庭の写真からも分かると思うが、中庭に面しては廊下しかなく、一部エントランス側に向いた部屋があるものの、9割以上の部屋は風景は違えど海を望める“オーシャンビュー”となっているのが特徴だ。さらにメインの建物から少し離れたところには邸宅型スイートの「バンガロー」が5棟用意されており、こちらからも海を望むことができる。

 ちなみに、同ホテルは2014年に改装したばかりで、ハワイ島・ヒロ出身のデザイナーであるシグ・ゼーン氏による温もりを感じる部屋のデザインになっている。

矢印の先端部分に並ぶ「オーシャンフロント」の部屋
プールや庭などを超えて海を望める「オーシャンビュー」
邸宅型スイートの「バンガロー」。このエリアはゲートがあり、宿泊客のみがクルマで直接バンガローの前まで乗り付けられる

 記者が宿泊したのは、「オーシャンビュー」の部屋だ。1泊(2名まで)の料金は655ドル。プールを挟むようにして海が見える部屋だった。

 部屋にはキングサイズのベッドが1つに、ソファ、ワーキングデスクを備え、装備は十分。ウェルカムフルーツに、コナ・コーヒーのドリップパックも提供され、料金以上のリッチな気分を味わえる。デザインも木や繊維の温もりを感じる有機的な空間を作り出しており、心安まる夜を過ごすことができるだろう。

マウナ ラニ ベイの「オーシャンビュー」ルーム
入り口から部屋を眺めたところ
洗面台とバスタブ
アメニティも充実
コナ・コーヒーのドリップパック
ライトも貝殻型でおしゃれ

 このほか、より上質な2つの部屋を見学させてもらうことができた。1つ目は「オーシャンフロント」だ。料金は790ドル。この部屋は先述のとおり、矢印の先に並んでいる部屋で、バルコニー(ラナイ)に出ると一面の海が広がるのが魅力だ。

「オーシャンフロント」
バルコニーに出ると一面の大海原を望む。ちょうど陽が傾いた頃で、夕陽を待ちたくなる光景だ
見学したのはクイーンサイズのベッドが2つの部屋
ヤシの木の葉をイメージしたような装飾1つ1つが“自然のなかのリゾート”感を高めてくれる
スイートを含め約100室にウォシュレット付きトイレを備える

 2つ目の部屋は「パウオア スイート」。“デラックスオーシャンビュースイート”とも呼ばれており、オーシャンビューの最上階(6階)に設けられている。料金は1800ドル。

 ダイニングテーブルも置かれる広々としたリビングに、クイーンサイズのベッドが2つのベッドルーム、2個の洗面台を装備。そして何より驚くのが、バスタブもオーシャンビューになっている。部屋にいるだけで贅沢な一時を過ごせそうだ。

「パウオア スイート」のリビングルーム
ベッドルームにはクイーンサイズベッドが2台置かれている
2部屋を持つスイートルームだけにラナイも広々
ヤシの木越しに海を眺めながらくつろげるバスルーム
洗面台は2カ所備えている
アメニティはシグネイチャブランドの「コカニラ」(Cocanilla)
グラスなどをゆすぐには十分は簡易キッチンも備えている

サンセットを眺めながらの優雅なディナー

「カヌーハウス」でディナーを満喫

 マウナ ラニ ベイの主要レストランは、ビーチに面した「カヌーハウス」、朝食ビュッフェやアラカルトメニューを提供している「ベイテラス」、プールサイドで軽食やハンバーガー、グリル料理を楽しめる「オーシャンバー&グリル」が用意されている。

 このほか、ホテル内にはコナ・コーヒーの農園である「マウンテンサンダー」のカフェがあるほか、同リゾートエリア内にはゴルフ場のクラブハウスに寿司などを提供する日本食レストラン「ジャパニーズレストラン しおの」、ショッピングエリアのカフェなど、バリエーション豊かな食事を楽しめる。

 今回の訪問では、ホテルにある「カヌーハウス」でディナーを楽しんだ。カヌーハウスはオープンテラスでハワイの地元料理を楽しめるお店だ。夕方から夜にかけては水平線に沈むサンセットを眺めながら、至福の一時を過ごすことができる。営業時間はディナーが17時30分~20時30分、カクテルバーが17時30分~21時。

カヌーハウスはビーチに面したオープンテラスのレストラン。ヤシの木に囲まれ、ハワイアンムードも満点
カヌーハウスからはビーチも見え、海に沈む太陽を眺めつつディナーを満喫できる
1日の終わりを告げる夕暮れに包まれてハワイアン・キュイジーヌに舌鼓。評判のお店だけあって味は文句なし。量は多めで成人男性も満足できるはずだ
コナ・コーヒーの農園である「マウンテンサンダー」のカフェでは、酸味の利いた100%コナ・コーヒーを味わえる。店員さんも陽気
マウナ ラニ ベイでは砂浜でのプライベートディナーも提供している。誰にも邪魔されず特別な時間を過ごしたい人にぴったりだ

ウォーキングやジョギングも人気

 マウナ ラニ リゾート内はビーチだけでなく、緑も豊かで、一方で火山地帯らしい独特の地形も見ることができる。こうした風景を眺めながらのジョギングやウォーキングも人気だ。

 先述のとおり、エリア内には「フィッシュポンド」と呼ばれる養魚池のほか、考古学的に貴重な原住民の暮らしの跡を、ヒストリック・プリザーブ(歴史保存エリア)として保護している。このヒストリック・プリザーブは、溶岩が作り出したユニークな地形に包まれ、ウォーキング&ジョギングルートも起伏にも富んだ面白いルートとなっている。

 ここで人気なのが、「シェルター・ケーブ」と呼ばれる場所だ。ここは溶岩の表面が冷えて固まり、中の溶岩だけが流れ出て生み出される洞窟で、古くは住居として使用されていたところ。

 シェルター・ケーブの中には天井から自然光が射し込む部分があり、その下に立てば、まるで光のベールに包まれたような写真を撮ることができるのだ。特に正午近くは、太陽が天頂に近づくことでより強く光が射し込むベストな時間だという。とはいえ、記者が訪れた早朝のように陽が低い時間帯でも、暗い洞窟の中に1点だけ光が射し込む幻想的な光景を拝むことができる。

ホテルを出て、ビーチからフィッシュポンド、ヒストリック・プリザーブへと続くルートが用意されている。途中、カヌーの格納小屋なども目に留まる
このルートを歩いているとマウナ ラニ リゾート内のゴルフ場やクラブハウスが見える
ヒストリック・プリザーブのルートは起伏に富んでおり、周囲の灌木や風景も日本人には目新しい光景で、歩いているだけでハワイ島らしさを感じられる
火山帯にあるハワイ島。ヒストリック・プリザーブは不思議な形をした地形にあふれており、動きを感じる大地を堪能できる
岩肌に刻まれた「ペトログリフ」。どのような意味があるものなのかを考えてしまう
溶岩が作り出した洞窟に天井から幻想的な光が射し込む「シェルター・ケーブ」

 このようにハワイの歴史に彩られ、前述のように食事の満足度も高いマウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズ。観光というとアクティブに動きまわりがちだが、落ち着いた空間でのんびりと休日を過ごす旅もよいものだ。

 また、今回は体験していないが、レイやラウハラ作り、フラレッスン、ヒストリックツアーといったアクティビティも用意。日本語の公式Facebookページで最新情報をチェックできる。

 日本語を話せるスタッフも多く、言語の面でも疲れない環境であることはありがたい。青い海と空、緑に包まれながら心身ともにリフレッシュしに行ってみてはいかがだろうか。

マウナ ラニ ベイ ホテル&バンガローズのプールから眺める薄日の光景(写真提供:マウナ ラニ リゾート)

編集部:多和田新也

Photo:高橋 学