旅レポ
透明感抜群の平戸白磁。佐世保で窯元訪問&街歩き、日本一のお茶とも出会いました
2023年3月2日 06:00
日本初の海外貿易港長崎・平戸と平戸藩にまつわるエリアをグルメとともに巡った前回。今回は平戸島を飛び出し、同じく藩の領地であった佐世保が舞台。
高速船で一気に海を渡り、佐世保市内散策から、平戸藩御用窯へ。周辺エリアを巡り、日本一のお茶とも出会った旅の様子をお届けします。
高速船で平戸から佐世保へ! 島々を眺めつつ約50分で一気に到着
まずは平戸島から一路佐世保へ。島の南東に位置する津吉港から、2021年10月に就航した高速船「つよし」で佐世保港へ向かいます。この日は波がシケ気味で外に出れずでしたが、通常はデッキエリアで北九十九島や佐世保港に停泊する艦船も眺めることができるそう。
佐世保さんぽで新旧の商店街をチェック。防空壕活用&電車が通るアーケード街も
港へ到着後、まずは佐世保さんぽへ出発。「めずらしい場所ある」との情報をもとに「戸尾市場」へ行ってみることに。一見小学校の下に連なるごく普通の商店街ですが、実は太平洋戦争中に掘られた防空壕を活用し奥に長~い別名「とんねる横丁」なんです。
特に防空壕跡が顕著なのが「四軒目食堂」。内装と店名は70年営業した先代からそのまま引き継ぎ、昭和レトロな居酒屋としてリニューアル。お勧めは、あごだしベースのおでん。戸尾市場の食材を使いまさにご近所感満載の地元の味が楽しめます。
続いては、とんねる横丁から徒歩2分ほどの「させぼ四ヶ町商店街」へ。約1kmと連なる商店街は、屋根の付いたアーケードとしては日本一の長さ。途中には日本一短い駅間として有名な松浦鉄道「佐世保中央駅」もあります。
もちろんアーケード周辺には佐世保の美味しいが勢揃い。スイーツ好きには佐世保の名物南蛮菓子ポルトがお勧め。ザクザククッキーで羊羹を挟んだ和洋折衷な味わい。地元産卵と壱岐産の柚子も使用しています。お店にはひっきりなしに佐世保っ子が訪れるほど地元に根付いたお菓子なんです。
ちなみに、ちょっと一杯!な気分のときはアーケードからすぐの「ささいずみ」がベスト。こちらファミリー連れから友人同志まで幅広い層に支持される佐世保っ子御用達の居酒屋。朝獲れ鮮魚を使ったお造りはマストでオーダーを。店内には生簀があり、まさに鮮度抜群です。
平戸藩御用窯へ。その前に「三川内焼美術館」で基本を学びます
初日の平戸・南蛮菓子巡りのお茶室で出会った「三川内焼」。香炉を思わせる透かし彫りが印象的で、献上品・贈答品の代表格として、また特別なときに使う器として平戸の人々にとっても高級品。三川内皿山エリアで窯元歩きが楽しめると聞き、早速訪れることにしました。
窯元歩きの前に基本を知るために「三川内焼美術館/三川内焼伝統産業会館」にも寄ります。三川内焼と聞くと「豆皿」と思い浮かぶ人も多いはず。ちょうど館内でも500枚ものお皿が並ぶ豆皿市が開かれていました。
窯元歩きで白磁の三川内焼にうっとり&あっかんべに伝統と親近感も
平戸焼こと三川内焼の起源は豊臣秀吉の文禄・慶長の役が深く関係していて、朝鮮から戻ってきた際に平戸藩松浦鎮信が陶工を連れ帰ったことが起源。そして良質の原料を求めた末に見つけたのが研磨用として使われていた天草陶石です。
目を見張るほどの精巧技法で生み出された平戸白磁は“繊細優美”で朝廷や将軍家への献上品として重宝され、平戸藩御用窯として三川内エリアで焼き物文化が大成していきます。
窯元さんぽで訪れた「嘉久房窯 平戸窯悦山」は、3代に渡り素材を探し続け、今村弥次兵衛の代で純白白磁を完成させた歴史ある窯元。藩主から「如猿」(猿の如し)の名を与えられつつも、心のなかでは「あっかんべ」ということで「舌出三番叟人形」が生まれたという逸話もあるそう。
14代平戸悦山・今村均氏の卓越した捻り細工を施した作品群はその白さも相まって、まさに優美そのもの。15代今村ひとみさんの作品はモダンで、ともにいつまでも眺めていたい美しさです。
窯出しのワクワクを一緒に。「平戸洸祥団右ヱ門窯」で技術を間近に見学
続いて向かったのは「平戸洸祥団右ヱ門窯」。ちょうど窯出しの作業中で「この瞬間が一番ワクワクするんです」と中里太陽さん。また工房で中里一郎氏が細工を施す様子なども見学。
作品を手に、登り窯と電気窯の出来の違いから、技術継承に関して地域で協力し次世代を育てていることなども教えてもらえました。
実際に三川内焼はどう使われる!? ホテルオークラで盛り付けを見学
三川内焼が生まれる場所や技術を学んだあとは、実際に活用されている場所も見てみたいもの。ということで、こちらも平戸藩の領地内であった「ホテルオークラJRハウステンボス」へ。三川内焼が採用されているのが鉄板焼き「大村湾」で、三川内焼コースの実際の盛り付けを見てみました。
定番の唐子から青海波が細かく描かれたカップまで、オリジナルオーダーの三川内焼が使われているのが「料理長こだわりコース~日本遺産“三川内焼き”を器に~」(1万8000円)。料理を乗せると、パッと食材が華やぎつつも上品にまとめる印象。先ほど訪れた窯元の器も使われています。なお、こちらは完全予約制・ディナーでの提供です。
【番外編】フライト前にちょっと寄り道。日本一の「そのぎ茶」を探しに、道の駅&情報拠点へ
東京へと戻る前に、ちょっと寄り道。実は2年前の軍艦島訪問後のランチで飲んだ「そのぎ茶」が気になっていたんです。すっと爽やかで飲みやすい、日本一に選ばれたお茶を探しに「Sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫」へ。
こちらは元農協米倉庫をリノベーションした情報発信拠点。入居した店舗はテスト販売後、周囲に店舗を構えるなど地域活性化に貢献しているんだとか。
こちらに入るセレクトショップ「くじらの髭」ではおしゃれなパッケージのそのぎ茶を販売中。地元産のお土産も多く取り揃えて、気の効いた一品を探すにもってこい。また、お隣の「Tsubame coffee」では「そのぎ玉緑茶ラテ」(500円)、「そのぎ玉緑茶フラッペ」(650円)などが味わえ、ドライブがてら立ち寄る人々が多く見られました。
また、すぐ近くの「道の駅 彼杵の荘」へも立ち寄り、名物「茶ちゃ焼き」(100円)をいただきました。そのぎ茶を使った緑茶あんがお茶っぱ型の生地にぎっしり。白あんベースで食べやすく、人気の一品です。「そのぎ茶」と一緒に味わうとさらに美味しさ倍増ですよ。