旅レポ

固形燃料で勝手にご飯。ソロキャンの定番アルミ製クッカー「メスティン」でお米炊いてみた

トランギアの「メスティン」を使ってみた

 キャンプで料理を行なう際に必須と言えるのが、鍋や器として利用できるクッカーだ。そのクッカーのなかでも、多くのキャンパーに支持されているのがトランギアの「メスティン」。

 メスティンは、170×62×95mm(幅×奥行き×高さ)、容量750mLとコンパクトなアルミ製のクッカー。ご飯を炊くための飯ごうとして使えるだけでなく、煮たり焼いたりにも使える柔軟性を備える。コンパクトで見た目が愛らしいことも人気の理由だろう。

今回購入したのは、ハンドル部分に赤いラバーが取り付けられた「メスティン レッドハンドル」。通常のメスティンはハンドルが黒い

 クッカーにはさまざまな種類があるが、選択する際のポイントとなるのは素材で、アルミとステンレス、チタンの3種類に大別できる。

 メスティンのようなアルミ製クッカーのメリットは、熱伝導率が高く調理がしやすい(ムラなく熱を伝えられる)ことと、チタン製のクッカーに比べると安価であること。ちなみにメスティンの輸入・販売を行なうイワタニ・プリムスの販売価格は1760円だが、チタン製クッカーになるとコンパクトなものでも3000円~8000円程度で価格にかなりの違いがある。

 一方、アルミのデメリットは衝撃を受けたときなどに変形しやすいことと、焦げ付きやすいこと。チタン製に比べると重いこともデメリットとして挙げられるが、とはいえメスティンの重量はわずか150gであり、気軽にキャンプに持っていくことができる。

メスティンを使い始める前の儀式

 さて、このメスティンには使い始める際に行なうべき重要な儀式(?)が、バリ取りと皮膜(酸化皮膜)作りである。

届いた商品はビニールに包まれただけの簡易包装だった
本体のなかにハンドルが入っており、自ら取り付ける必要がある

 メスティンは本体やフタのフチが切りっぱなしで、場合によってはバリで手や口を切ってしまうことがある。そこで使い始める前に、紙やすりなどを使ってバリ取りするわけだ。

 紙やすりを使う場合、とりあえず200~300番台のものでバリ取りし、必要に応じて400番台以上の細目の紙やすりで磨けばよいだろう。

尖ったバリがあるとケガにつながりかねない。しっかりバリ取りを行なっておこう

 続いて皮膜作り。アルミ製の鍋やクッカーは黒ずみが出てしまうことがあるほか、焦げ付きやすいデメリットもある。こうした黒ずみや焦げ付きを防ぐために作るのが酸化皮膜というわけだ。また、この作業を行なうことでアルミ臭さも軽減できる。

今回は大きめの鍋でメスティンと野菜くずを入れて10分ほど煮込んだ。メスティンが入る鍋がなければ、メスティンで米のとぎ汁や野菜くずを煮込んでもよい

 酸化皮膜を作るには、米のとぎ汁、もしくは野菜くずを用意し、それとメスティンを鍋のなかに入れて5~10分ほど沸騰させればよい。なおメスティンが入る鍋がなければ、メスティンそのものに米のとぎ汁、もしくは野菜くずを入れて煮込んでもよい。酸化皮膜が作れるのはメスティンの内側だけになるが、そもそも外側はそれほど黒ずんだり焦げたりすることはないのでこれでも十分だろう。

固形燃料を使えばほったらかしでご飯が炊ける

 では、実際にメスティンを使って調理してみよう。最初は本来の役割である飯ごうとして、ご飯を炊いてみる。

 このとき、ぜひ一緒に使いたいアイテムがエスビットの「ポケットストーブ・スタンダード」だ。折りたたみ式で、中央に固形燃料を置いて使うストーブで、名前のとおりポケットに入れて持ち運べるほどコンパクトなのが特長。メスティンとの相性が抜群で、ポケットストーブの上にメスティンを置くとピッタリのサイズ感になる。

エスビットの「ポケットストーブ・スタンダード」。折りたたむと、ポケットに収められる小ささになる
ポケットストーブの両端を立ち上げたところ。中央に固形燃料を置いて火を付ける
今回利用した固形燃料を置いたところ。これで20分ほど燃焼する

 エスビットはポケットストーブと組み合わせる固形燃料も販売しているが、今回は百均で手に入れた固形燃料を利用した。

 固形燃料の燃焼時間は約20分で、火が消えるころにちょうどご飯が炊けているので、ほとんど手間がない。

炊き始める前に、お米を水に浸してしばらく置いておく。これで炊き上がりがずいぶん変わってくる
メスティンを火にかけたところ。もしフタが浮くようであれば、重しとして石などをフタの上に置こう
固形燃料の火が消えたら、保温袋やタオルなどを使って蒸らす

 なお、火に掛ける前に30分程度お米を水に浸しておこう。これでお米が水を含み、炊き上がりがふっくらとする。炊き終わったあとは、メスティンを保温袋に入れるか、タオルに包んで10~20分程度蒸らせばできあがりだ。

ちょうどよい感じにご飯が炊けた。なお今回は白米として炊いたが、缶詰などを使って炊き込みご飯にチャレンジしてもおもしろい
炊きたてのご飯を梅干しでいただいた。炊飯ジャーで炊くご飯とはまた違った美味しさがある

メスティンなら1人鍋が気軽に楽しめる

 メスティンはご飯が炊けるだけでなく、さまざまな料理に活用できる。個人的にお勧めしたいのはメスティンを使った1人鍋だ。

 コンパクトなメスティンは1人鍋にちょうどよいサイズで、キャンプに行ったときはもちろん、自宅でも楽しむことができる。実際、今回は具材がキャベツと鶏肉だけというシンプルな1人鍋を作ってみた。

 作り方は簡単で、メスティンでニンニクを炒めたあとにだし汁を加え、鶏肉とキャベツを煮込んで一味唐辛子を加えるだけ。

ニンニクを炒めたあと、だし汁を加えて豚肉を煮込む。その後キャベツを投入し、好みで一味唐辛子を加えて完成。ピリ辛で美味しい

 このほかにも、メスティンは即席ラーメンを作ったり(ただし、そのままでは麺が入らないので2つに割る必要がある)、パスタを茹でたり(こちらも、そのままではパスタが長過ぎて入らないので2つに折る)と、メスティンはさまざまな用途で利用することが可能だ。

 便利な半面、皮膜を張っていても焦げ付きやすいという難点はある。特にメスティンをフライパン代わりにして肉を焼くと、簡単に焦げ付いてしまうので注意したい。ちなみに焦げ付いた場合、水を入れたあとに少量のお酢やクエン酸を加えて沸騰させると、意外と簡単に焦げ付きを落とすことができる。

 新型コロナウイルスの影響によりキャンプするのが難しくなっているが、メスティンを使って調理すれば自宅でも気軽にキャンプ気分が味わえる。通販サイトでは売り切れていることが多く、本来の倍近い価格で転売されていることもあるなど、なかなか入手しづらいのが残念だが、キャンプ料理を楽しむアイテムとして、メスティンは間違いなく魅力的な製品だ。

川添貴生