旅レポ
ジェットスターの上海初便でLCC初体験・歴史的名所を愛でる旅(その1)
初めての成田空港第3ターミナル
2017年8月24日 00:00
ジェットスター・ジャパンは6月2日、同社初の中国本土路線となる成田~上海線を就航した。成田~上海線は、成田を夜に出発し、上海へ早朝に到着するスケジュールで運航する。成田からは月・水・金・日曜発、上海からは月・火・木・土曜発で週4往復という運航体制だ。運賃は片道4980円からと格安に設定されている。
今回その初便に搭乗し、上海を旅する機会を得たので、その模様をレポートしたい。
ジェットスター・ジャパンの成田国際空港~上海浦東国際空港線
GK35便:成田(22時15分)発~上海(翌00時40分)着、月・水・金・日曜運航 ※6月2日~10月27日
GK36便:上海(02時05分)発~成田(06時10分)着、月・火・木・土曜運航 ※6月3日~10月28日
さて、ジェットスターは国内最大規模のLCCである。実をいうと、筆者はLCCでの旅はこれが初めてであり、これまでと勝手が違い、いろいろと不安やとまどいもあった。その辺りも含めてお伝えしたい。
初めてのLCC、初めての3タミ
成田空港には、LCC専用ターミナルとして第3ターミナル(3タミ)が2015年に開設されており、ジェットスターも第3ターミナルを利用する。ただ、第3ターミナルへ直通の鉄道はないため、第2ターミナル駅で降りて、ターミナル連絡バス、または徒歩で移動することになる。
何を隠そう、筆者が第3ターミナルの存在を知ったのは、搭乗前日のことである。最近の出張関連は羽田利用のみで、成田空港に行くこと自体も久しぶりだったため、そこはかとなく不安がよぎったが……。成田空港第2ターミナル最寄りの空港第2ビル駅から空港構内に入るとすぐに案内板があり、第3ターミナルへの道を示すサインボードも目立つように設置されていたため、迷うことはまったくなかった。
成田空港のWebサイトによれば、徒歩で約15分、ターミナル連絡バスなら乗車時間約5分ということなので、ターミナル連絡バスに乗ることにした。運行間隔は、3~5分(11時~15時は約7分間隔)ということで、待ち時間が長いということもなさそうだ。
20時を少し過ぎたくらいの時間帯だったが、筆者が乗り場に着いたときにはすでに連絡バスは待機している状態で、乗車すると1分もせずに発車。空港周辺の道はそれなりにクルマ通りがあったが、それでも発車から4分30秒かからずに到着した。
連絡バスの車内は大きな荷物を持った乗客を想定してゆったりとした作りで、段差も最小限。乗降の負担が少なく、快適だった。バス乗降場から第3ターミナル内までもゆっくり歩いても1分もかからないほどの距離。手探り状態ながらも第2ターミナルで成田エクスプレスを降りてから、15分ほどだろうか。実にあっさりと第3ターミナルへとたどり着いた。
なお、このターミナル連絡バスについては、開設当初はルートの関係で乗車時間が長いことから評判がわるかったようだが、2016年10月のルート変更で短縮されて使いやすくなったということだ。
シンプルでコンパクトな3タミ
初めて見る3タミは、天井の骨組がむき出しになった簡素な構造に少々驚いたが、コンパクトに機能が集約されていて楽だなという印象。
チェックイン、手荷物検査、出国検査といった手続きをすませて搭乗ゲートに向かうが、コンパクトな作りのために迷うこともえんえんと歩くこともなく、大きなターミナルに慣れていると新鮮だ。
LCCは深夜便などもあるためフードコートの辺りには深夜のフライトを待っている人が多くいたが、横になって休んでいたり、友達と談笑したりと、それぞれ楽しそうに過ごしていたのが印象的だった。
なお、ジェットスターの上海便は大人気の様子で、初便は満席。搭乗ゲート付近は隣のゲートも近い時間の国際便があり、人でごった返していた。
想像よりはるかに快適だった居住空間
第3ターミナルという不安要素はクリアしたが、LCCに初めて乗る筆者にはもう1つ大きな不安要素があった。それは座席だ。
LCCといえば「座席が狭い」というイメージが強い。筆者は身長170cm体重110kgと体が大きいため、不安で一杯だった。自分が窮屈な思いをしたくないというのもそうだが、隣の人に迷惑をかけてしまいそうなのが何よりつらい。正直にいうと、当初、担当編集からは「中国旅行のレポート」くらいにしか聞かされていなかったので、LCCだと聞いてから心配だったのだ。
ジェットスターのWebサイトで調べてみると、アジア行きの国際便は、エアバス A320-200型機を利用し、座席幅45cm(17.88インチ)、シートピッチは74cm(29インチ)とあるが、いつも意識していないだけにまったく見当がつかない。気休め程度にダイエットに励んだものの、10日やそこらで体のサイズが大きく変わるわけもなく「隣に人が来ないといいなぁ」という願いもむなしく、あいにくの満席。覚悟を決めて乗り込んだが……実際に乗ってみると拍子抜けするほど普通だった。
狭いといってもシートピッチのみで、横幅は普通、というよりもむしろ余裕がある部類だ。座ったときに「新幹線の普通指定席より楽だなぁ」と感じたが、あとで調べてみると新幹線の座席の横幅は44cm(JR東海 N700系)ということで、感覚が正しいことが裏付けられた。
シートピッチにしても数値上は狭いのだろうが、シートの形状が工夫されていることや、荷物ポケットが下にないため、足元はとてもすっきりしていて、体感的にはまったく狭さを感じなかった。レザー張りのシートも感触がよく、快適といってよい居住空間だ。
一方、荷物ポケットが固い素材のために、これより厚みのあるものは入らない。また、映画や音楽などを楽しめるエンタメ設備もない。長時間のフライトであれば、こうした点はネックになるかもしれないが、深夜の3時間くらいのフライトでは優先順位は低い。
清潔感のある内装も印象的。ライトグレーを基調にした明るくシンプルなカラーリングでジェットスターのイメージカラーであるオレンジは差し色程度。クルーの制服やグッズなどのオレンジがよく映え、とても好印象だった。
機内食有料システムは実はメリットが大きい
離陸してしばらくすると「プリオーダーミール」の提供が始まった。機内食サービスを事前予約した客への提供だ。LCC各社がそうであるように、ジェットスターも機内食サービスは有料だ。まず事前に予約した客へ提供され、その後、機内販売が開始される(一部メニューはプリオーダーのみ)。
筆者は事前オーダーはしていなかったが、機内販売でコーラとタコスベーグルサンドをオーダー。ベーグルサンドを温めるか聞かれたので、温めてもらうことにした。数分後に持ってきてくれたベーグルサンドはチリビーンズと豆乳クリームが入っていて、なかなかの美味であった。
なお、機内販売では日本円のほか、香港ドル、台湾ドル、フィリピンペソ、人民元が利用できる(日本円以外は紙幣のみ)のも便利だ。その場で計算してくれて、お釣りは日本円でもらえる。
プリオーダー、機内販売ともに利用する人はまばら。全員に配るわけではないため満席の短時間フライトでも慌ただしさがなく、サクサクと進み、食事も落ち着いていただくことができた。機内食サービスが有料であることも知らなかった筆者だが、機内食サービス前後の慌ただしさがないのは、快適さという点において大きなメリットに感じた。
計算された合理的なシステムが好印象
機内食サービスが終了すると、免税品の機内販売となり、ほどなくして機内は暗くされる。深夜便ということもあり、ほとんどの人が寝ていたようだ。上海へは定時より少し早く、0時30分ごろに到着。入国審査で20~30分並び、預け荷物の受け取り、ロビーに出たときには午前1時を少し過ぎていた。
LCCを選択肢に入れたことがなかった筆者だが、今回の搭乗を通じてLCC、ジェットスターへのイメージは大きく変わった。清潔感がある内装、居住空間重視の座席設計、希望者のみへの機内食提供により、満席であっても窮屈さも慌ただしさも感じずに快適に過ごすことができた。優先順位の低いサービスを省く一方で居住空間は犠牲にしておらず、実によく計算された合理的なシステムだと感じた。格安の料金で行けるなら、国内線やアジア旅行の際は、積極的に選択肢に入れてみたいと思うようになった。