旅レポ

ハワイアン航空のコナ直行便でハワイ島を満喫(その3)

キラウエア周辺をめぐるハワイ火山国立公園の旅

ハワイ火山国立公園の入口。今日はここからスタート

 ハワイ島を堪能する旅はカワイハエ湾のクルーズ体験、ドトールのコーヒーファームに続き、いよいよキラウエア火山を中心とするハワイ火山国立公園へ。ハワイ島というと美しい海に加え、島にはマウナケア、マウナロア、コハラ、フアラライ、キラウエアと5つの火山があって“火山の島”というイメージが強い。そのなかでもハワイ島の南東にあるキラウエアは今も活動している火山ということで観光スポットとして人気が高く、知らない人はいないのでは思う。

 ハワイ火山国立公園にはハレマウマウ火口のクレーターやカルデラの周りを1周できる道路「クレーター・リム・ドライブ」がある。ただし、公園の地図によると道路の南側と西側は現在閉鎖されているとのことなので、今回はクレーター・リム・ドライブの東側と北側の、比較的短時間でキラウエア周辺のスポットを見てまわれるルートを通った。

イキ・クレーター周辺の自然と溶岩トンネルの中を歩く

 最初に訪れたスポットは「キラウエア・イキ・トレイル」と「サーストン・ラバ・チューブ」。クレーター・リム・ドライブ内には、西に巨大なハレマウマウ・クレーター、東に比較的小さなイキ・クレーターがあり、イキ・クレーターの北東周辺を歩くコースがキラウエア・イキ・トレイル。そして、キラウエア・イキ・トレイルの途中にある溶岩トンネルがサーストン・ラバ・チューブである。

 ハワイ島というと黒い溶岩台地がよく知られているところだが、キラウエアのクレーターやカルデラ以外の周辺はむしろ緑豊か。恐竜の時代を思わせる木生シダ「ハプウ」やハワイ島の代表ともいえる植物「オヒア・レフア」を中心に多様な植生を誇り、また野鳥の楽園となっている。キラウエア・イキ・トレイルを歩くと、そういった自然を肌で感じつつ、時々、イキ・クレーターの台地を見下ろすことが可能だ。

キラウエア・イキ・トレイルとサーストン・ラバ・チューブの距離案内板
キラウエア・イキ・トレイルではこのように舗装されていない山道をとおる
道の脇を見てみると、ハプウが生い茂っている
トレイルから見たイキ・クレーター。なお、柵はないので注意

 ほかにも途中、横倒しになりながらも空に向かって枝を伸ばしているオヒア・レフアの木や、木の根に苔が生えて緑の象に見えるエレファントと呼ばれるポイントを過ぎ、花を咲かせるジンジャーの群生(繁殖力が高く、固有種を脅かす外来種だそう)を見ていくうちに、サーストン・ラバ・チューブの入口に到着。

横に倒れつつも枝を垂直に伸ばしているオヒア・レフアの木。その生命力に驚嘆
ハプウの芽を覆う産毛は殺菌能力があり、昔は傷を覆うのに使われたとか
木の根が象の形に見えるためエレファントと呼ばれている
華やかな花を咲かせるジンジャー。繁殖力が高く、外来種として問題視されている

 サーストン・ラバ・チューブなど溶岩トンネルは、溶岩が流れているうちに表面が冷えて固まるが、内側の熱い部分はそのまま流れてしまいできたもの。今回通ったサーストン・ラバ・チューブは中に照明が取り付けられ、足下も歩きやすいよう削られているが、実際に中を歩いてみると岩肌の迫力は抜群。また、天井を見ると長い年月かけて伸びたオヒア・レフアの根が垂れていて自然の不思議を感じさせる。

風景や植物を見て回るうちにサーストン・ラバ・チューブ入口へ到着
入口ではシダの枯葉が暖簾のように垂れ下がっている
サーストン・ラバ・チューブの内部。溶岩の岩肌がダイナミックだ
トンネル内で垂れ下がっているオヒア・レフアの根
電灯がなかった昔に使われた燭台の跡
サーストン・ラバ・チューブを通り抜けたら階段をのぼって地上へ

 サーストン・ラバ・チューブ自体は数分あれば通り抜けできるほどの長さだが、キラウエア火山周辺にはこのような溶岩トンネルが無数にあり、長いものでは数十kmになるとのこと。キラウエア・イキ・トレイル自体は30分もあれば行って戻ってくることができる。ただし、トレイルコースは舗装されていない山道であるうえ、ところどころ穴や隆起している木の根があり、イキ・クレーターを一望できる場所は柵がない所もあるので足下には注意した方がよさそうだ。

ボルケーノ ハウスとスチームベントに立ち寄る

 キラウエア・イキ・トレイルをまわったら、クルマに乗ってキラウエア・ビジターセンター方面へ。寄ったのはビジターセンターの向かいにあるホテル「ボルケーノ ハウス」。

 パッと見た感じはシックでオシャレなロッジといった雰囲気だが、火口が近く、レストランなどからはハレマウマウ・クレーターが見渡せるという珍しいホテル。夜になるとハレマウマウ火口が赤く光っているのが見えるときもあるそうだ。個人的に気になったので、あとからネットでホテルのサイトを調べてみたら“オーシャンビュー”ならぬ“クレータービュー”という部屋があるとのこと。

 また、ロビーにはハワイ島でおなじみ火山の女神ペレを彫り込んだ暖炉が設置されていた。1年中温暖なイメージがあるハワイだが、キラウエアをはじめとする火山のあたりは気温が低め。筆者が訪れたのは12月だったが、長袖シャツにカーディガンという服装でやっと暖かいかな? という状態だ。暖炉があってもおかしくない。

キラウエアのクレーターやカルデラが見渡せるボルケーノ ハウス
レストランからはキラウエアの景色を一望できる
ペレをモチーフにした暖炉

 ボルケーノ ハウスを見て、「次にハワイ島へ来たときに泊まってみたい」と後ろ髪引かれつつ、続いて訪れたのが「スチームベント」。こちらもビジターセンターの近くにあり、硫黄分のないスチームが湧き上がる場所だ。雨水や地下水などが地熱で熱せられて発生した蒸気が穴から出てきて、ハワイのキラウエアでここだけ、どことなく日本の温泉郷っぽい雰囲気だ。

 ツアーを案内してくれたガイドさんによると、湯気が立ち込めている部分の温度は57℃とのこと。熱いのでヤケドに注意した方がいいのだけども、取材に訪れたのは先にも書いたように12月で雨が降っており、シャツとカーディガンでもちょっと肌寒い日。穴の近くにいると心地よい温かさで、つい湯気で暖を取ってしまった。

 キラウエア周辺は天候が変わりやすく、雨や霧などでクレーターやカルデラの景色が見づらくなってしまうこともあるが、ここならどんな天気のときでも楽しめるのがメリット。クレーター・リム・ドライブを周る途中、ちょっと立ち寄ってみてはいかがだろうか。

「スチームベント」、これ以外にも蒸気を湧き出している穴がある
近くに寄ると湯気が立っているのが分かる
穴の中は煮立っているかと思ったらこんな感じ
別の穴からも湯気がもくもくと

ジャガー博物館でハレマウマウ・クレーターを見る

 キラウエアで温泉のようなスチームを見たあと、続くは今回のハワイ火山国立公園ツアー最後のスポット「ジャガー博物館」。名前からするとネコ科の動物を思い浮かべてしまうが、正式名称は「トーマス・A・ジャガー・ミュージアム」で、ハワイ火山観測所を創立したアメリカの火山学者から名前をとったそうだ。ここの見どころは展望台からの眺め。ハレマウマウ・クレーターや火口、その周辺のキラウエア・カルデラが見渡せるのだ。

 といっても、残念ながらこの日は小雨で、霧なのか雨が火口で蒸発してできた蒸気なのか分からないものの、一帯にもやがうっすらと立ち込めている状態。博物館から見て南に位置するハレマウマウ・クレーターがかろうじて見える程度だ。とはいえ、長辺が300mあるという巨大なクレーター、ぼんやりとした見え方でも迫力は十分。さらに天気は雨で、なおかつ着いた時刻が午後過ぎて太陽が西に傾いていたため、東側のカルデラを見ると虹が見えた。

ジャガー博物館の入口
博物館の建物。脇には展望台がある
もやがかかっているものの、遠くにハレマウマウ・クレーターが見える
キラウエア・カルデラ方面を見ると何と虹が

 また、博物館の中はキラウエアをはじめとする火山に関する資料を展示しているが、ハワイ島を知るうえでチェックしておきたいのが2種類の溶岩のコーナー。突発的な噴火により生成された鋭い凸凹が多い「アア」と、ゆっくり流れて固まった滑らかな表面の「パホエホエ」があり、コーナーでは2つの溶岩を並べて展示。間近で見比べられるようになっている。また、ハワイの火山と文化を理解するうえで欠かせないのが、火山の女神ペレ。館内では、気性が激しく惚れっぽいという彼女の神話をアートで紹介していた。

館内では火山やハワイのペレ神話にまつわる展示があり、ここも必見だ

 キラウエア周辺に行ったら必ず立ち寄りたいのはやはりこのジャガー博物館。火山の勉強になるのはもちろん、何より目の前のクレーターやカルデラの迫力ある風景は、ぜひ天気のいいときに、できれば溶岩が光る夜間時も合わせて見てみたいところ。

 今回のクレーター・リム・ドライブに沿って各ポイントをクルマで移動した所要時間は、入口からジャガー博物館を出るまで約2時間だ。ただし撮影があったとはいえ、急ぎ気味の行程になってしまった。ゆったりと見てまわりたい場合はもうちょっと余裕を持ったスケジュールをオススメしたい。

 火山の自然や風景を堪能できるのもハワイ島らしい楽しみ。もちろん、道路を走るだけでも日本ではなかなかお目にかかれないような黒い溶岩台地を見られるが、本格的に火山の島を体感してみたいなら、やはりキラウエアは外せない。ハワイ島のスポットにおける最有力候補といえるだろう。

丸子かおり

フリーライター/編集者。主にIT系の記事を執筆することが多いが、科学系の書籍や料理本を手がけることも。趣味はごはん・手芸・デジタルなどジャンルを問わない自作。著書は「AR<拡張現実>入門」(アスキー新書)、「放射線測定のウソ」(マイナビ新書)など。ブログはhttp://mrk-reco.com/