旅レポ

ベルリン名物「カリーブルスト」を食べ比べ! しこたま食べてきた

 ドイツの名物料理といえば、どういったものを思い浮かべるだろう。アイスヴァイン、ザワークラウト、シュニッツェルなどが定番といったところか。これらは、ドイツに行ったらまず間違いなく食べる料理ではあるが、筆者の個人的な印象では、ドイツ料理は味が単調ですぐに飽きてしまうことが多く、滞在中何度も食べることはほぼないに等しい。

 そういったなか、筆者がドイツで飽きることなく食べている食べ物がある。それは、ソーセージだ。ドイツのソーセージには色々な種類があって、それぞれが個性的な味わいで、飽きることがない。また、街角で売られているホットドッグも非常に美味しく、ドイツに行ったときにはかなり頻繁に食べている。

 ところで、ドイツで食べられるソーセージを使った料理のなかで、筆者が絶対に外せないと考えているものがある。それは、ドイツの首都ベルリンの名物料理「カリーブルスト」だ。

 香ばしく焼いた絹引きのフランクフルトソーセージを一口サイズに切り分け、カレー粉とケチャップをたっぷりかけて食べるという、なんともシンプルかつジャンクな雰囲気な食べ物。街角の屋台のようなスタンドで気軽に買って食べる、ファストフード的な存在で、日本で言うところの“ご当地グルメ”や、“B級グルメ”といった類のものというと分かりやすいかもしれない。そして、このベルリンのカリーブルスト、シンプルながら結構奥が深い。

 ベルリンに行くと、電車や地下鉄の駅を出た広場や繁華街の街角など、至る所に小さな売店があり、カリーブルストを売っている。チェーン店もあるようだが、個人商店のような独立系の店も多い。そして、ソーセージやケチャップ、カレー粉など、それぞれの店ごとに味わいが異なっている。そこで、ベルリンで開催された家電見本市「IFA 2016」の取材に訪れたついでに、ベルリン市内でカリーブルストを食べ歩いてきた。

Maximilian am Stutti

 今回のベルリン滞在では、「シャルロッテンブルグ駅」の近くにあるホテルを利用したが、そのシャルロッテンブルグ駅を出てすぐの場所にある店が「Maximilian am Stutti」。貨物のコンテナを改造したかのような店で、店先には樽を使ったテーブルが並べられ、その場で食べられるようになっている。

 カリーブルストを注文すると、先に鉄板で焼きあげておいたソーセージをフライヤーに入れ、数分揚げて温めたのちに切り分け、カレー粉とケチャップをかけてできあがり。値段は1.9ユーロ(約220円、1ユーロ=約116円換算)。

 できあがったカリーブルストは、鮮やかな赤いケチャップがたっぷりとかけられていて、いかにもB級グルメといった見た目。また、たっぷりと振りかけられたカレー粉も顔を覗かせていて、とにかく食欲をそそる雰囲気だ。

 味は、どちらかというと酸味のきいたケチャップがストレートに感じられる。カレー粉の風味はやや弱めで、ケチャップに負けているという印象。ソーセージは、比較的淡泊な味わいだが、肉の旨みはしっかりと感じられ、たっぷりのケチャップのなかでも存在感は失われていない。ただ、温めなおしが足りなかったようで、できたてながら全体的にぬるかったのがやや残念だった。

シャルロッテンブルグ駅の近くにある「Maximilian am Stutti」
カリーブルストは1.9ユーロ(約220円)
ソーセージは鉄板であらかじめ焼かれており、横のフライヤーで温めなおして提供される
ソーセージは一口大に切り分けるのが基本
Maximilian am Stuttiのカリーブルスト。カレー粉と鮮やかな赤のケチャップがたっぷりかけられてできあがり
酸味のきいたケチャップが強くカレーは弱め。当日はソーセージがぬるかったのが残念

CURRYWURST EXPRESS

「CURRYWURST EXPRESS」は、ファストフード店に近い佇まいのカリーブルストのチェーン店。ベルリン市内の鉄道駅構内でよく見かけた店だ。今回は、ベルリン東駅(Berlin Ostbahnhof)の構内にある店で食べてみた。CURRYWURST EXPRESSでは、カリーブルストにパンがセットになっていて、値段は3.29ユーロ(380円強)。

 CURRYWURST EXPRESSのカリーブルストにかかっているケチャップは、Maximilian am Stuttiのケチャップのような鮮やかな赤色ではなかったが、こちらも酸味の強い、非常にパンチのある味わいのものだった。また、ケチャップの上からカレー粉がかけられていることもあって、カレーの味も強めに感じられる。口に入れると、まずカレーの風味が広がったあとに、酸味の強いケチャップが舌を刺激する。

 ソーセージは、こちらも比較的淡泊な印象ではあるが、油で揚げているためかコクが強く、パンチのあるケチャップやカレーにまったく負けていない。ケチャップはたっぷりかけられているので、パンをちぎってケチャップを付けて食べてもよい。注文時には、3.29ユーロという値段はやや高いと感じたが、ソーセージの量が多く、パンも付いているのでこの値段も納得だった。

 ちなみに、CURRYWURST EXPRESSでは、辛さの違うカレー粉や、ハラペーニョ、ナチョスなどのトッピングも用意されている。ケチャップに負けないカレーの風味があり、ソーセージも主張が強く、なかなかの美味しさだった。

ベルリン東駅構内の「CURRYWURST EXPRESS」
CURRYWURST EXPRESSではカレー粉の種類を変えたり、トッピングを加えることが可能
CURRYWURST EXPRESSのカリーブルストはパンが付いて3.29ユーロ(380円強)
ケチャップの上からカレー粉をかけるスタイル
見た目の色以上にケチャップは酸味が強い。また、カレーの風味も直接感じられパンチのある味わいだ
ケチャップをパンに付けて食べても美味しい

CURRY 36

「CURRY 36」は、ベルリンで特に人気が高いというカリーブルストのチェーン店。ベルリンのガイドブックにも紹介されているようで、日本人を含めた観光客の姿も多く、常に混雑している店だ。今回は、ベルリン動物園駅(Bahnhof Berlin Zoologischer Garten)にある店で食べた。

 店の中を見ると、いろいろな種類のソーセージが焼かれている。カリーブルストに使われるのは、白いソーセージだが、油がたくさんひかれた鉄板で揚げ焼きのように焼き上げられており、表面はカリッと香ばしくきつね色。それを一口大に切り分けて、カレー粉とケチャップがかけられて完成。値段は1.8ユーロ(約210円)。

 非常に鮮やかな赤色をしたケチャップからは、Maximilian am Stuttiのカリーブルストと同じように、これぞB級グルメといった雰囲気が伝わってくる。ただ、ケチャップ自体は酸味がそれほど強くなく、比較的マイルドな味わいだ。そのためか、カレー粉の味わいがより強く感じられる。

 そして、ソーセージは、まわりの皮がカリカリで香ばしく、コク深い肉の味わいもしっかりで、ケチャップやカレー粉に負けずに強く味が伝わってくる。確かに、これは人気なのも納得の味わいだ。このCURRY 36のカリーブルストは、ベルリンのカリーブルストの基準となる味と考えていいかもしれない。

ベルリン動物園駅のすぐそばにある「CURRY 36」
店内では色々なソーセージが焼かれている
カリーブルスト用のソーセージは、表面がこんがりきつね色になるまでじっくり焼かれている。1.8ユーロ(約210円)
濃い赤色のケチャップがたっぷりかけられて、いかにもジャンクな見た目だ
ソーセージはしっかり焼かれ、皮がパリパリで香ばしい。ケチャップはマイルドでカレーの風味もしっかり感じられる

EUROPA CENTER CURRYWURST

「EUROPA CENTER CURRYWURST」は、ベルリン中心部のショッピングモール「EUROPA CENTER」の店先にある屋台型のカリーブルスト店。こちらのカリーブルストは、白いソーセージを使っていて、うっすらと焼き目が付いている程度で、ソーセージの白さが失われていない。

 また、ケチャップの上からカレー粉をかけるスタイルで、カレー粉もやや多めにかけられているので、カレー粉の黄色がまず目に飛び込んでくる。鮮やかな赤いケチャップと相まって、派手な見た目となっている。値段は2.5ユーロ(約290円)。

 ソーセージは、ほかの店のものに比べると柔らかく、かなり淡泊な印象。そのため、ケチャップやカレー粉の味が強く感じられて、ソーセージの肉のコクなどは思ったほど感じられなかった。また、ケチャップ自体も酸味が弱めでパンチがない。逆に、たっぷりとかけられたカレー粉の風味がかなり強く、これまで食べたなかで最もカレーの味わいが勝っていた。ただ、見た目の派手さとは裏腹に、全体的に淡泊な味わいで、やや物足りない印象を受けた。

ショッピングモール「EUROPA CENTER」の横にある「EUROPA CENTER CURRYWURST」
白ソーセージを軽く焦げ目が付く程度に焼いて提供される
ケチャップの上からカレー粉をたっぷりかけて提供。2.5ユーロ(約290円)
柔らかな食感のソーセージがほかの店とはやや違う印象。カレーの風味が強烈だが、全体的に淡泊な味わい

Witty's

「Witty's」は、ヴィッテンベルクプラッツ駅を出た所にあるカリーブルスト店。こちらの店では、“Bio”という文字が目立つように書かれている。Bioとは「オーガニック食品」という意味で、ドイツではオーガニック食品の認定を受けた食材にのみ“Bio”マークを付けられるという。Witty'sでは、ソーセージ、ケチャップ、マヨネーズなど、すべてオーガニック認定を受けた食材のみを使ったカリーブルストを提供しているそうだ。

 注文時、ソーセージに白ソーセージか赤ソーセージのどちらがいいか聞かれたが、今回はほかの店が白ソーセージばかりだったので、比べるために白ソーセージを選んだ。値段は3.5ユーロ(約410円)と、ほかの店に比べるとかなり高い。

 こちらのカリーブルストは、非常に鮮やかな赤色をしたケチャップに、こんがりきつね色に焼き上げられたソーセージ、たっぷりのカレー粉と、見た目はオーソドックス。ただ、一口食べると、その味わいはほかの店と大きく違った。ケチャップは、トマトの風味がしっかりとしていて、酸味も十分に感じられるが、他店のような刺さるような味わいはなく、非常にまろやか。また、ソーセージも非常にコク深く、肉の味わいも非常にしっかりしている。カレー粉の風味もそれらに負けていない。ケチャップ、ソーセージ、カレー粉それぞれがその存在をしっかり主張しつつ、かといってどれかが主張しすぎることもなく、一体感のある味わいとなっている。値段はかなり高いが、この味わいなら納得だ。実際、店には客がかなり多く集まっており、地元でも人気店のようだ。

ヴィッテンベルクプラッツ駅そばにある「Witty's」
オーガニック食品を意味する“Bio”の文字があちこちに見える
ソーセージ、ケチャップ、マヨネーズなど、オーガニック食材を使って提供
赤ソーセージと白ソーセージが選べる
鮮やかな赤色のケチャップが印象的。3.5ユーロ(約410円)
トマトの風味がしっかりとしたケチャップと風味豊かなカレー、コク深くしっかりとした味わいのソーセージで、飛び抜けた美味しさ

Curry Uwe

「Curry Uwe」は、ベルリン中心部の「Olivaer Platz」という公園の一角にあるカリーブルスト店。こちらも基本的な作り方はほかの店と大きく変わらないが、注文してからフライヤーでソーセージをじっくり揚げるため、できるまでにやや時間がかかる。また、切り分けたソーセージに2種類のカレーパウダーをかける点も、ほかの店とは違うようだ。3分ほど待ってできあがり。値段は1.8ユーロ(約210円)。

 この店のカリーブルストは、とにかくソーセージの味わいがとても濃い。ソーセージがしっかりと揚げ焼きされていることで皮がパリパリで香ばしさとコクもあるが、それ以上にソーセージのスモーキーな肉の味わいがしっかりとしている。ほかの店では、ソーセージの味がケチャップやカレー粉に負けていると感じるものもあったが、こちらは美味しいソーセージを食べているという印象がかなり強い。

 また、カレー粉の風味の強さも特徴で、口いっぱいにカレーの風味が広がることで、さらに食欲がそそられる。ケチャップは程よい酸味ですっきりとした味わいとなっていて、ほかの店に比べると主張が少ないが、ソーセージの味をしっかりと引き立てている。この店もかなりの美味しさだった。

公園「Olivaer Platz」の一角にある「Curry Uwe」
たっぷりの油をひき、時間をかけてソーセージを揚げ焼きにしている
2種類のカレーパウダーを使っていた
こちらもいかにもジャンクっぽい見た目。1.8ユーロ(約210円)
じっくり揚げ焼きしたソーセージは香ばしく肉の味わいもしっかり。ソーセージを食べているという感覚の強いカリーブルストだ

 今回カリーブルストを食べた6店のうち、個人的に最も気に入ったのはWitty'sだ。ここのカリーブルストは値段は少々高いが、ずば抜けて美味しい。また、Curry UweとCURRY 36も申し分ない味わいで、値段の安さを合わせると、満足度はかなり高い。

 もちろん、今回行った店はベルリンでカリーブルストを売っている店のごくごく一部。実際に見かけつつ行っていない店も数多くあり、おそらくまだ美味しい店がたくさん存在していると思う。もしベルリンを訪れる機会があるなら、手軽に楽しめて小腹を満たせるB級グルメとして、カリーブルストを楽しんでみてはいかがだろうか。

平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。