【イベントレポート】
【ツーリズムEXPO 2017】第3回ジャパン・ツーリズム・アワード表彰式、大賞は「南三陸ホテル観洋」
震災の記憶を語り継ぐ「語り部バス」の取り組みが評価
2017年9月22日 07:00
- 2017年9月21日~24日 開催
世界最大級の旅イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」が、日観振(日本観光振興協会)、JATA(日本旅行業協会)、JNTO(日本政府観光局)の共催で、9月21日~24日(一般公開日は23日~24日)に東京・有明の東京ビッグサイトで開催されている。
初日の9月21日には「ツーリズムEXPOジャパンフォーラム」と呼ばれる公式イベントが実施され、そのなかで、観光振興の取り組みを行なっている企業、団体などを対象に、先進性、発展性、持続性、社会性を審査基準に選考した「第3回ジャパン・ツーリズム・アワード」の表彰式が開かれた。
大賞を受賞したのは震災の記憶を受け継ぐ「語り部バス」を企画した「南三陸ホテル観洋」
「ジャパン・ツーリズム・アワード」はツーリズムEXPOジャパンに合わせて行なわれている表彰プログラムで、今回が3回目。日本の観光振興に役立つ取り組みを行なっている企業団体などを対象に、有識者などからなる審査委員が評価して各賞を決定する。世界的な観光イベントに成長しつつあるツーリズムEXPOジャパンで表彰式などを行なうことで、世界各国から来ている旅行業界の関係者に日本の観光プログラムを紹介するよい機会になるという狙いもある。なお、JCBブランドのクレジットカードで知られるジェーシービーが協賛しており、入賞者には副賞としてJCBギフトカードが贈られている(金額などは非公開)。
大賞を受賞したのは、阿部長商会 南三陸ホテル観洋。2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた南三陸町にある南三陸ホテル観洋は、直後から被災者を受け入れたが、現在ではその震災の被災者を語り部(経験を語る人のこと)として同ホテルが運営するツアーバスに乗ってもらい、震災遺構を巡る「語り部バス」を運営しており、それが受賞の理由となった。
表彰式には南三陸ホテル観洋の女将である阿部憲子氏が登壇し、大賞のトロフィーと副賞などを受け取った。阿部氏は「震災から7年目を迎え、日本や世界から暖かい応援を受けて進んできた。今回は大賞をいただき、光栄でうれしい。東日本大震災では街の中心部が8割、駅、病院、スーパー、役場もすべて失ってしまった。甚大な地域に足を運ばれると、ここは更地だったのかと聞かれることが多いぐらい。このことを伝えないといけないと、語り部バスが始まった。世界中で語り部の必要性があるのではないかと思っており、世代や国を超え、文化を継承して未来へ伝えることが大事。1000年に一度の災害は、1000年に一度の学びの場。三陸地域、東北、日本へ多くの方にお運びいただきたい」と述べ、受賞の喜びと東日本大震災での経験を伝えていきたいという想いから語り部バスを始めたという経緯を語った。
ジャパン・ツーリズム・アワードは旅行業界のアカデミー賞を目指すと審査委員長
最後に、審査委員長を務めたUNWTO(国連世界観光機関)駐日事務所 代表で、首都大学東京 特任教授の本保芳明氏が総評を行なった。
本保氏は「今回は235件の応募をいただき、多様で粒揃い、かつ革新的な取り組みが目立っていた。内容も、エコツーリズム、ユニバーサルツーリズムなど社会性が高いものが多かった。大賞は震災を風化させないための語り部の取り組みで、持続可能な観光国際年にふさわしい内容だと考えている。この大賞は熊本地震などの被災者の方々への応援メッセージも含んでいる」と述べ、大賞を獲得した南三陸ホテル観洋の語り部バスを評価した。
そのうえで「それ以外の部門賞も大賞とは紙一重で、観光と文化を融合させたビジネスの展開、地域性のきわめて高いDMOの取り組み、旅の新しい形を実現したビジネス展開など、いずれも素晴らしい取り組みだ。これらを全体として並べると、素晴らしい日本観光のショーケースとなる。日本の観光はレベルが上がってきており、この賞は観光のアカデミー賞を目指すべきだと言われてことがあるが、まさにそうした方向性でやっていきたい」と述べ、毎年取り組みのレベルが上がってきており、海外へのプレゼンテーションとしてもこのアワードが有効だとした。
【お詫びと訂正】初出時、本保芳明氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正いたします。