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ダイナテック、ホテル予約エンジン「Direct In」をPayPal決済に対応

高まるインバウンド需要の取り込みを目指す

2016年3月17日 発表

ダイナテックのDirect InがPayPal決済に対応することで、宿泊施設に新たな価値を提供できるという
ダイナテック株式会社 代表取締役副社長の齋藤克也氏

 国内最大のホテル・旅館向けオンラインブッキングエンジン「Direct In」を運営するダイナテックと、世界的なEC決済システムを運営するPayPalは、3月17日に記者説明会を開催し、Direct Inにおいて2016年7月よりPayPal決済を導入すると発表した。

 現在、国内の宿泊業界は、ここ数年の訪日外国人観光客の増加や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催、国内での景況感の回復、レジャー需要の高まりなどの要因から、追い風の状態にあるという。実際に、2015年の訪日外国人観光客数は1974万人と、2014年より47%も増えており、今後も増大が予想される。そういったなかで、いわゆるインバウンド需要を取り込むための取り組みとして発表されたのが、今回のDirect InにおけるPayPal決済への対応だ。

 現在、国内のホテルや旅館のインバウンド需要の取り込みは、旅行代理店や、海外の予約サイトを活用するのが中心となっている。ただ、ダイナテック 代表取締役副社長の齋藤克也氏は、「これからは、自社直販率を高めトータルコストを削減することが重要」と指摘する。

訪日外国人観光客の増加が今後も続くと予想され、その需要をいかに取り込んでいくかがホテル業界の課題となっている

 ダイナテックは、オンラインブッキングエンジンのDirect Inだけでなく、ホテルシステムからWebサイトの作成ツールまで、宿泊施設トータルの関連システムを提供している。実際に、Direct Inを導入する国内の宿泊施設数は約2400件と日本最大で、多くの宿泊施設の自社システム構築に貢献しているという。また、2015年7月にダイナテックはヤフー傘下となり、Direct Inと、ヤフーが運営するオンライン旅行サイト「Yahoo!トラベル」が連携。Yahoo!トラベルからDirect Inを経由して自社サイトで宿泊予約が行なえるシステムを提供している。これにより、従来に比べ自社サイトに到達するユーザー数が増え、直販率が高まっているという。

 そして、今後さらに高まると予想されるインバウンド需要の取り込みを目指しての施策が、今回のPayPal決済への対応となる。訪日外国人観光客の増加に伴い、予約の直前キャンセルや、予約したまま未宿泊(ノーショウ)といったトラブルも多く発生しているという。これには、クレジットカードを利用した事前決済に躊躇する訪日外国人観光客が多いということも背景にあるそうで、今回のPayPal決済への対応が、そういった問題を改善するとともに、インバウンド需要取り込みの機会損失を軽減することにつながると齋藤氏は指摘。「Direct Inを利用する宿泊施設のオンライン予約時に、PayPalを利用した決済が可能となることで、さらなるインバウンド需要の取り込みを目指したい」と述べた。

ダイナテックは、宿泊施設のオンラインブッキングエンジンの導入からWebサイト作成ツールまで、トータルの宿泊業者関連システムを提供
今後の訪日外国人観光客増加に合わせての施策が重要となる
齋藤氏は「これから宿泊施設は自社直販率の向上とトータルコスト削減が重要」と指摘
ダイナテックはヤフーの傘下となり、Yahoo!トラベルからDirect Inを利用する宿泊施設のWebサイトで予約できるシステムを提供し、自社直販率を高めている
さらに、今回のPayPalとの連携により、インバウンド需要の取り組みを進める
PayPal東京支店 ラージマーチャントセグメント統括部長の橋本知周氏

 続いて、PayPal東京支店 ラージマーチャントセグメント統括部長の橋本知周氏により、PayPal決済の特徴や利点が説明された。

 PayPal決済では、PayPalのIDに紐付けされている個人情報と、クレジットカード番号などの支払い情報を利用した決済を可能としている。例えば、あるオンラインショッピングサイトでPayPal決済で何かを購入する場合には、PayPalに登録しているユーザーIDとパスワードの入力だけで決済が完了する。また、PayPal決済ではクレジットカード番号などの支払い情報が秘匿化され、オンラインショッピングサイト側に支払い情報が伝わらない(決済代金はPayPalから事業者の口座に振り込まれる)という特徴もある。これによって、利用者側は住所などの個人情報の入力を省けるだけでなく、クレジットカード番号などを相手に知らせる必要がなく、安全性が高まるというメリットがある。また、事業者側にとっても、クレジットカード番号の管理が不要となり、省力化やコスト削減につながることになる。

PayPal対応オンラインショッピングサイトでは、PayPalのIDとパスワード入力のみで決済が完了
PayPalによって、ユーザーは安全かつ手軽なオンラインショッピングが行なえ、事業者側はクレジットカード番号の管理が不要となり省力化やコスト削減につながる
PayPalは3段階の高度なセキュリティを実現しており、安心・安全な取引が可能

 さらに、海外では他国のオンラインショッピングサイトを利用する場合にはPayPal決済を利用する率が高いことも、インバウンド需要の取り込みという意味で大きな利点になると橋本氏は説明する。欧米各国やオーストラリアでは、他国のオンラインショッピングサイト利用時に使用する決済手段としてPayPalがトップシェアを占めているというデータを示しつつ、その要因も手軽さや安全性の高さにあると指摘。

 このほか、Direct InとPayPal決済を利用している宿泊施設の情報を、世界各国でPayPal対応サイトやお得情報などを提供する「ペイパルクリップ」や「ペイパルニュースレター」などで紹介していくという。宿泊施設が自社直販率を高めるにはプロモーション活動も不可欠となるが、PayPal側がその手助けをすることで、インバウンド需要の取り込みに寄与すると橋本氏は説明した。

海外主要国では、自国以外のオンラインショッピングサイト利用時にPayPalを利用する割合が非常に高く、PayPal決済に対応すると訪日外国人観光客の取り込みにつながる
ペイパルクリップやペイパルニュースレターなど、PayPalが実施するプロモーションサービスで宿泊施設が取り上げられ、海外へのプロモーションのチャンネルにもなる

 今回の提携により、2016年7月からDirect Inを利用している宿泊施設の自社サイトでの予約時にPayPal決済が利用可能となる。また将来的には、「請求書メール発行機能」も提供する計画とのこと。この機能では、宿泊予約時にユーザーのメールアドレスに請求書メールを送付して事前決済を可能としたり、宿泊施設滞在中の顧客に請求書メールを送付することで、チェックアウト前に決済を終了させたりすることで、フロントに立ち寄らずチェックアウトできるエクスプレスチェックアウトサービスを実現するという。加えてダイナテックでは、宿泊施設の自社サイトを英語対応にする手助けもしていきたいとのことだ。

まずは予約時のPayPal決済から提供となるが、将来的には請求書メール発行機能も提供する計画という

(平澤寿康)