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JAL、グランドスタッフが“おもてなし”の技を競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」(本選編)

2015年11月11日~12日 実施

本選に進んだ13名の出場者たち

 JAL(日本航空)は11月11日と12日の2日間にわたり、国内外の空港から選ばれたグランドスタッフの接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を羽田空港新整備場地区にある同社第一テクニカルセンターで開催した。今回で4回目となる本コンテストでは、日本航空グループが就航している国内38空港、海外9空港から選ばれた58名が参加した。

 日本航空では2016年度までの中期経営計画でJCSI(日本版顧客満足度指数)調査での顧客満足度向上を目標の1つに掲げており、それまで空港ごとにばらつきのあったサービスの均一化とレベルの底上げを目指して本コンテストを2012年より行なっている。

 コンテストは「アナウンス」と「カウンターチェックイン」の2つの審査が行なわれ、11日の予選を勝ち抜いた13名が12日の本選へ駒を進めた。また、今回から初めて保安検査部門が行なわれ、選出された3組6名が参加した。本記事では12日に行なわれた本選の模様をお伝えする。

 本選では、社外からゲスト審査員として、アメリカン航空の真壁元氏、帝国ホテルの室谷廣二郎氏、オリエンタルランドの南澄恵さん、早川清敬さんが招かれ、JAL社内からは植木義晴社長をはじめ執行役員らが審査員を務めた。

アナウンス審査の様子

 12日午前中に行なわれた本選のアナウンス審査は、本番前に控え室に集まった出場者にお題を発表。お題の内容は「空港の発着便混雑の影響で管制当局から出発待機を指示され、出発が30分遅れる事が決定した」という状況を想定したものだ。それぞれの出場者は、利用客に不安や不満を与えないように、的確に状況をアナウンスできるかがカギとなる。

 アナウンス審査に続き、保安検査部門の審査が行なわれた。今回初めて実施された本部門は、予選審査から選出された、羽田空港のにしけい 新井規晃さん、新海真弓さん、鹿児島空港の鹿児島綜合警備保障 安藤洋平さん、有村理佐さん、新千歳空港のセノン 日向佳太さん、松尾みさきさんの3組6名が出場した。

 保安検査部門の審査では、乗客役を演じたJALの教官がさまざまなトラップを用意。内容は、「長い間列に並んでようやく検査の順番がやってきて少々イライラしている様子」「手荷物のキャリーバックの中にケーキを入れているため、鞄を横にすることができない」「ポケットにカッターナイフを持っている」「携帯電話をポケットに入れたまま金属探知機を通過する」といったもの。いかに乗客にストレスを感じさせずに、航空法や手順に沿った検査を正しくできているかが問われる。

 優勝した羽田空港の株式会社にしけい 新井さん、新海さんペアは、次々に出くわすイレギュラーな事態にも、冷静に笑顔で対応。真摯に乗客に説明して保安検査への理解を求めた。審査を終え、ゲスト審査員のアメリカン航空 真壁元さんは「航空会社にとってセキュリティが最大の顧客サービスと言われている。海外の空港では軍隊姿のセキュリティの警備もおり、アメリカではTSAというセキュリティチェック機構がある。その警備する側に顧客サービスというものが本当に必要なのかを考えていたが、日本人のカルチャーのなかでは“是非とも協力していただきたい”という姿勢が必要なのかと感じた」と、“おもてなしの心”を体現した保安検査に驚いている様子だった。

保安検査部門出場の鹿児島空港 鹿児島綜合警備保障株式会社の安藤さん、有村さんペア
保安検査部門出場の新千歳空港 株式会社セノンの日向さん、松尾さんペア
保安検査部門で優勝した羽田空港 株式会社にしけいの新井さん、新海さんペア
カウンターチェックイン審査の前に、空港企画部 教育・サポート室の松藤 教官によるデモンストレーションが行なわれた

 午後に実施されたカウンターチェックイン審査は、実際の空港カウンターを模したモックアップで行なわれた。審査では6名の教官が「搭乗手続き後に搭乗口が分からずに迷う利用客」「機内に持ち込む手荷物に、危険物と知らずにアーミーナイフを入れていたために保安検査場からカウンターへ戻ってきたビジネスマン」「初めての上司との出張で座席の指定を任されて戸惑う部下」「英語しか話せない外国人旅行客」など、さまざまなシチュエーションの乗客を演じて接客スキルを審査。制限時間は8分間だが、国際線の手続きなど時間のかかるケースもあるので、6名すべての対応ができなくても失格にはならない。乗客に寄り添った対応で、またJALを利用したいと思ってもらえるかという細やかな気配りがカギとなる。

伊丹空港 永野美希さん
岡山空港 津内沙紀さん
羽田空港 坂巻詩保さん
羽田空港 石塚美桜さん
成田空港 福島英峰さん
福島さんは男性ならではのフレッシュな雰囲気で対応していた
新千歳空港 泉樹里さん
那覇空港 後藤未来さん
新千歳空港 河田歩実さん
羽田空港 藤代麻里さん
大分空港 衛藤奈津子さん
北九州空港 辻佳苗さん、
福岡空港 田島由佳里さん
田島さんはこの時、後ろのカウンターでチェックインが終わった利用客にも気を配っていた
福岡空港 緒方良美さん
審査にあたるJALの植木義晴社長(前列中央)とゲスト審査員
出場者の臨機応変な対応に会場から笑いが起こることも
福岡空港 緒方さんの応援団。各空港から非番のスタッフが応援に駆けつけた

 審査の結果、福岡空港の田島由佳里さんが優勝。準優勝は成田空港の福島英峰(ひでたか)さん、審査員特別賞に福岡空港の緒方良美さんが選ばれた。

 JALの植木義晴社長は「いつも感動させられる、これはコンテストだから、勝利を得た者と得ない者がいる。得られなかったものは悔しがるといい。みんなが1番を目指して、また1年頑張れ」と出場者たちねぎらった。

 さらにコンテストをラグビーに例え「最後のホイッスルの瞬間に“ノーサイド”、試合が終われば右も左も敵も味方もない、みんな1つの仲間。そして“ワン・フォー・オール”。うちで言えば、1人1人がJALのために力を尽くす。そしてJALという会社はみんなを一番大切にする。また明日から、来年のこの日を目指して頑張ろう」と出場者に語りかけた。

閉会式で出場者を激励するJALの植木社長
JALの植木社長(左)と優勝した田島さん(右)
JALの植木社長(左)と保安検査部門で優勝した新海さん(中央)と、新井さん(右)

 また、植木社長は優勝した田島さんについて「すごく自然体だった。他の人が気付いていないこと、例えば別のスタッフが対応した人にも気遣いができていたり、待っている人にも“もう少々お待ちください”と声をかけたりなど、彼女だけが気付いていたことがいっぱいあった。さらに自然体だから安心感、安定感、信頼感があった。彼女はずっと努力をしてきて、努力を重ねた者だけが出す表情を持っている。それは強い」と評価した。

 またグランドスタッフの理想像として「素直な心、他人を思いやれる心、このベースさえあればお客様に心は通じる。もう1度スタッフに会いたい、またJALを利用したいと思ってもらえるのは心の繋がりだと思っている」と話した。

 優勝した田島さんは入社7年目「まず感謝の気持ちでいっぱい。このコンテストに臨むにあたり、自分の実力以上は出ないと思っていた。とにかくお客様に心を尽くすところを、今できる精いっぱいを体現できるように頑張った。気持ちが伝わったのかなと思う」と優勝した思いを語り、続いて「世界一お客様に選んでもらえる航空会社になるために、英語力を含め日本のおもてなしの心を体現できるようなグランドスタッフになりたい」と今後の目標を語った。

 準優勝の福島さんは本選で唯一の男性出場者だった。「女性と肩をならべて勝負しなくてはいけないというプレッシャーがあった。普段と同じようにフレッシュな感じでやろうと決めていた」と話した。JAL総合職として入社した福島さんは、1年半前に成田空港に配属された。総合職は多岐にわたる仕事があるが「お客様がどういう気持ちで飛行機に乗っているのか、現場で感じ取っているのが強み、直接お客様の顔が見えない間接部門に行っても、現場で経験したことは役に立つと思う」と現場での経験の大切さを話した。

JALの植木社長と肩を組む、福島さん(左)、田島さん(中央右)、緒方さん(右)
優勝した田島由佳里さん
準優勝の福島英峰さん
審査員特別賞の緒方良美さん

 本選に出場した13名のグランドスタッフには、アルメリアの花をデザインしたバッジが授与された。アルメニアの花言葉は「おもてなし」。このバッジはJALのおもてなしの模範となるグランドスタッフの証で、過去3回の本選出場者も着用している。

アルメリアの花をデザインした銀バッジを着用する本選出場者たち
羽田空港 坂巻詩保さんの応援団
コンテストで乗客役を演じた空港企画部 教育・サポート室の教官たち

 JALは11月に発表されたJCSIの調査で、初めて「国際航空」の顧客満足部門で1位を獲得した。植木社長は今後の目標について「ずっと同じことを追い続けるだけ。1番目に安全運航、2番目に顧客満足。お客様に愛されなければ、航空会社は話にならないと思っている。そして3番目には財務基盤の安定。安全の面も顧客満足の面も当然投資が必要になってくる。誰かが払ってくれるものではないので、しっかりと稼いで投資し、この3つを安定させることが重要」と語った。

58名のコンテスト出場者たち
13名の本選出場者
福岡空港 田島由佳里さん
成田空港 福島英峰さん
福岡空港 緒方良美さん
新千歳空港 泉樹里さん
新千歳空港 河田歩美さん
羽田空港 石塚美桜さん
羽田空港 坂巻詩保さん
羽田空港 藤代麻里さん
伊丹空港 永野美希さん
岡山空港 津内沙紀さん
北九州空港 辻佳苗さん
大分空港 衛藤奈津子さん
那覇空港 後藤未来さん

(鈴木崇芳)