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JAL、女性活用を推進する「JALなでしこラボ」プロジェクトのキックオフイベント
研究プロジェクト「なでしこラボプロジェクト」がスタート
(2015/12/8 18:47)
- 2015年12月7日 実施
JAL(日本航空)は9月30日、女性をはじめとする多様な人材の活躍を推進するために、「JALなでしこラボ」を発足。12月7日には、研究プロジェクトの概要説明やメンバーの顔合わせなど、本格活動に向けたキックオフイベントを同社で実施した。
この「JALなでしこラボ」は、研究プロジェクトやグループ各社で女性活用を推進するプロジェクトなど、グループ企業の壁を超えて集結した取り組みで、今回開催されたのはその研究プロジェクトである「なでしこラボプロジェクト」のイベントだ。「なでしこラボプロジェクト」では、JALグループ各社13社から18名のメンバーが集まり、研究するテーマごとで3チームに分かれて議論を深めながら、女性の活躍推進のあるべき姿やどうすれば活躍できるのかを研究していく。
キックオフイベントで挨拶を行なったプロジェクトの担当役員 大川順子取締役専務は、2016年4月1日から従業員が301人以上の企業を対象に施行され、行動計画の策定などを義務づけられる女性活躍推進法案について説明。また、「JALなでしこラボ」の3つの柱として、女性活躍推進の数値目標と行動計画の取りまとめである「実績」と、意識改革とワークスタイル改革の「実践」、なでしこラボプロジェクトを指す「理論」を掲げた。
大川専務は「企業は理論を研究するだけでなく、実践できるものをしっかりと作り上げていかないといけない」と話し、「『なでしこラボプロジェクト』での研究活動をただ理論で終わらせずに、仕事や職場の制度や男女双方の仕事に対する意識に連携させることで、女性をはじめ多様な人材が活躍できる会社を目指す」と説明した。
また、「研究の成果を社外に発信することで、とても僭越な言い方かもしれないけれど、女性の活躍推進・ダイバーシティのリーディングカンパニーになるという気持ちで本気でやっていくことが必要になります」と、「JALなでしこラボ」に対する決意を語った。
クロスファンクショナルチーム体制で女性活躍の場を実現へ
続いてJAL 人事部の蘆野健副部長が、「JALなでしこラボ」の体制について説明を行なった。
蘆野副部長は、「女性活躍推進法案の”従業員数が301名以上”という数にとらわれることなく、JALグループのJALを含めた44社全部で数値目標を含んだ行動目標を策定し、全体に公表していく」と説明。「その実現に向けた体制が、グループ企業すべてが参加するクロスファンクショナルチームだ。この体制において、研究プロジェクトである『なでしこラボプロジェクト』の他に、JALグループ44社の情報交換と共有を目的とした『グループプロジェクト』を設ける」と語った。
「グループプロジェクト」内には、グループ各社の女性活躍担当者が集まる「なでしこミーティング」と、グループ企業が3~4社集まって行なわれる「ミニラボ」を設置。なでしこミーティングは、担当者のネットワーク作りや、取り組み内容・女性活用における問題の情報交換を行なう場として四半期ごとに開催する。一方、「ミニラボ」は月次開催で自主行動計画の中身や、日々の業務の中での取り組みについての情報交換を行なう場にするとのこと。また、グループプロジェクトにおいて、44社のお互いの情報共有を助ける、共通であがっている問題点をまとめる、問題点解決のための視点を共有する、といった目的のための非常勤のチームメンバーを設けると解説した。
さらに、グループプロジェクト責任者の直下に、自主行動計画の進捗管理やなでしこミーティング事務局、ワークスタイル変革の担当者を設けることで、「JALなでしこラボ」の3つの柱のひとつ「実践」に向けての取り組みを行なっていく。
また蘆野副部長によると、グループプロジェクト責任者直下の担当者を通して産学官との連携も行なっていきたい方針。「今後、研究のなかで、他の会社がどんな風にやっているんだろうかということを教えていただいたり、逆にこちらの中で実際にやっている成果を僭越ながらお伝えしたりだとか、そういうことを産業界ともやりたいですね。学術的な部分では、大学などでテーマとして研究されている方ともデータの共有など。また、官庁の中で施策を進めている方と交流や情報をいろいろうかがいたいです」と語った。
「なでしこラボプロジェクト」の活動内容とは
蘆野氏のスピーチの後、JAL 意識改革・人づくり推進部の野村直史部長が「なでしこラボプロジェクト」の活動内容についての説明を行なった。
活動内容は、多様な人材が活躍するために何が必要であるか、各チームで研究内容を決めたうえで、スケジュールに沿って研究を進めていくというもの。また、研究内容・研究結果を論文に取りまとめ、2016年3月に研究内容の中間発表を、2016年7月に研究結果についてのフォーラムを開催し、そのなかで発表していく。
また、野村部長は18名のメンバーが1チーム6名の3チームに分かれて、チームを率いるメンターと共に研究活動を行なうと説明し、「非常に少ない人数でかつ、期間も限られています。その中で研究を進めていこうとしていますので、やはり1人ひとりがしっかりと自分の役割を果たしていかないとなかなか最高のパフォーマンスは出てきません」と参加メンバーに向けてメッセージを送った。
この後、JALグループの女性が現在どういう状況に置かれているのか、「なでしこラボプロジェクト」のメンバーで共有するという目的で、JALの現状と女性のキャリアについて中丸亜珠香人事部グループ人事企画グループ主任が説明した。
JALグループでは、全社員における女性の比率は47%と男女比がほぼ半々なのに対し、2015年3月末の時点で女性管理職が全管理職のうち15%。女性管理職割合の国際比較を見ると、日本の場合は2012年で11.1%であり、JALは15%と日本の平均を少し上回っている状況だ
その一方で、2013年度から現在までJALグループが女性の活躍推進を進めていることと、数値目標としてJALグループ全体で女性管理職比率20%を掲げており、それを達成するための取り組みを行なっているとのこと。中丸主任は、「これらの数値は女性優遇のための数値とは考えておりません。女性の育成をちゃんとして、その結果、女性の管理職が増えるのを理想としていますので、まだ成長が十分でない人が管理職になることではありません」とコメント。
しかし、日本に比べ他の欧米諸国で女性管理職の比率は軒並み高く、アメリカでは43.1%と管理職の2人に1人が女性である。中丸主任は、アメリカとの数値を比較して、日本で女性がなかなか管理職になれない原因、例えば日本独特の女性と男性の役割分担という意識や残業が当たり前の就業時間、一度、就職したとしても出産や結婚といったライフイベントで30~40代の就労人口が減っていくという、「なでしこラボプロジェクト」の研究テーマになりうる問題を挙げていった。
中丸主任による説明の後、再び野村部長により「なでしこラボプロジェクト」のチーム分けについて説明が行なわれた。チームは3つに分けられ、それぞれ「意識」「ポジション」「継続性」という研究テーマが与えられている。「意識」チームではダイバーシティを進めていくうえでの男女の意識改革について、働き方や仕事に対する考え方、モチベーションなどの研究。「ポジション」では、管理職、一般職、役員といった役職を切り口にキャリアパスやロールモデルについて研究。「継続性」では女性ならではの結婚や出産などライフイベントによる休職や復職といったライフプランに照らしてダイバーシティのあり方を考えていく。
野村部長は3つのテーマによるチーム分けについて、「これはあくまで研究を進めていくための入り口です。おそらく研究を進めていくと、3つがかなり重なり合ってくる部分が出てくると思います。この3つの円が重なり合ったところがあるとすれば、そこを『なでしこラボプロジェクト』として最終的には総括的に研究をまとめていけばいいな、と思っています」とプロジェクトの主旨について説明。
その後、各チームのメンターが紹介された。ポジションチームのメンターとして浜井ゆり子JALブランドコミュニケーション WEB事業本部 WEBコンテンツ部 部長が、継続性チームのメンターとして今村厳一JAL 健康管理部 統括マネジャーが、意識チームのメンターとして浅香浩司JALマイレージバンク役員 代表取締役社長が就任。
また、「なでしこラボプロジェクト」のメンバーの所属も併せて発表された。メンバーには実際に出産や子育てといったライフイベントを経験している女性が多数在籍している。中には女性の割合が少ないグランドハンドリング業務を務めており、どうすれば女性が生き生きとして仕事できる職場になるのか模索するために応募した女性や、客室乗務員として輝いて仕事をしている女性、職場を去る女性を見てきた経験をプロジェクトに活かしたいという男性など、強い思いを抱いて応募したメンバーも多かった。
大川専務は冒頭の挨拶で「この取り組みは、福利厚生でも何でもないんですよね。本当に企業戦略としてやっていくべきものでございます」と「JALなでしこラボ」について話した。現在、大企業は女性活躍推進法案の成立を機に、どのように女性を活用していくか試されている。そんななか、今回のJALグループのように8カ月と短い期間ながらも研究プロジェクトを設けつつ、グループの垣根を超えたクロスファンクショナルチームのように研究を企業環境にフィードバックする取り組みは、女性活用においてどんな効果をあげるのか期待されるところだ。