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中部国際空港(セントレア)、国際線航空機の事故も想定した消火救難・救急医療活動総合訓練を実施
(2015/10/5 00:00)
- 2015年10月1日 実施
中部国際空港(セントレア)は10月1日、開港以来続けている消火救難・救急医療活動総合訓練を実施した。空港会社や公的機関、消防機関、医療機関、航空会社など、さまざまな機関で構成される中部国際空港緊急計画連絡協議会により実施される。雨に見舞われた2015年の訓練は、国際線のボーイング 737型機がギヤ(車輪)降下表示が出ないトラブルにより胴体着陸を行なうものの、第2エンジン付近が爆発炎上するという想定で行なわれた。
訓練は航空機からギアトラブルの一報が管制塔に届くところから始まった。航空機と管制塔が交わす、緊急事態における詳細な情報の交換もシュミレートしているとのこと。事態を把握したのちには中部国際空港より緊急事態の宣言がなされ一斉通報装置で警察や消防、医療機関等の関係各所に伝えられる。このような通報訓練のあと、消化活動や救助活動、避難誘導の訓練が行なわれた。
考えられる緊急事態の形態はさまざまであり、また多くの機関から人が集結することを考えると特定のフォーマットを決めての対処が困難なので、現場で肝心なのは情報の集約と指示形態だという。中部国際空港の場合、多くは常滑市消防本部から必要な情報が発信され、関係各所での情報の共有が図られる。
消化活動が終わるとすぐさま救助活動だ。訓練会場にはパッセンジャーステップが用意され、機内から乗客を救出し所定の場所でトリアージ(疾病者の緊急度、重症度を分類)し、あらかじめセットされたテントに運び入れる訓練が行なわれた。また仮安置所での検視や遺体安置所での面会など、最悪の事態をも想定した訓練も同時に行なわれた。
なお今回の設定は、日本人以外の乗客が多数含まれる国際線を想定していて、入国管理局も加わり緊急時の通関、入国、検疫の対応の訓練も実施された。パスポートを持たず避難してきた乗客に対するこのような訓練は大切だ。また日本語がまったく分からない乗客も多数いると考えられる国際線の場合救助や避難、また救護においても言葉の壁は大きくこのような訓練は非常に意義深い。
訓練開始から時間が経つに連れ次々と関係者が現地に到着してくる。実際の現場ではさまざまな場所から時間差で集まってくる事が想定されるため、そうした状況をもシュミレートしている。なお、ここでも先着隊が後から到着した隊にいかに状況を伝え、情報の共有化できるかが大事だという。
ちなみにDMATとは、医師、看護師や他の医療関係者で構成される、災害発生時から活動できるようトレーニングを受けた災害派遣医療チームだ。1995年の阪神・淡路大震災の際の初期医療体制の遅れを教訓とし2005年に発足している。
想定された73名の救出がすべて完了したところで関係各所から集まった450名の訓練は終了した。今回の想定について、関係各所の代表が全員口を揃えて「決してあってはならない緊急事態」と述べたところに航空機事故の本質が見える。
現場での実体験があってはならない消火救難・救急医療活動においては、訓練の蓄積こそが人やシステムを進化させる唯一の手段なのだ。中部国際空港では今回のような日中の滑走路や駐機場での訓練のほか、夜間訓練、海上での事態を想定した訓練などを繰り返し、その成果を発揮する日が来ないことを願いながら訓練を続けているのだ。