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WILLER TRAINS、京都丹後鉄道の開業式典

カフェトレイン「あおまつ」に乗ってみた

2015年4月1日 京都丹後鉄道 開業

WILLER TRAINS 代表取締役 村瀬茂高氏(左)、国土交通省 鉄道事業課長 大石英一郎氏(左から2番目)ほか、関係者が参列し、福知山駅 京都丹後鉄道ホームで出発式が行われた。

 WILLER TRAINS(ウィラートレインズ)は4月1日、北近畿タンゴ鉄道の運営を引き継ぎ「京都丹後鉄道」を開業した。これは、第三セクターの北近畿タンゴ鉄道が2013年10月から上下分離方式(路線の保有と列車の運行を別の会社で行なう方式)による鉄道事業再構築に向けて運行会社の公募をしたところ、ウィラーグループに決定したもので、同グループは新たにWILLER TRAINSを設立、京都丹後鉄道を運営する。この上下分離方式では、鉄道の運行と線路や施設などの整備・運営をWILLER TRAINSが行い、施設の保有などは引き続き沿線の地方自治体などが組織する第三セクター会社の北近畿タンゴ鉄道が引き続き行なう。

 北近畿タンゴ鉄道は、京都府宮津市から福知山市に至る宮福線(宮津駅~福知山駅)と京都府舞鶴市から兵庫県豊岡へ至る宮津線(西舞鶴駅~豊岡駅)の2路線を運営していたが、京都丹後鉄道では、宮津線を宮津駅を起点に分割し、宮津駅~豊岡駅間の「宮豊線」と、宮津駅~西舞鶴駅間の「宮舞線」とし、宮福線は維持した3路線体制とした。現在のところ、時刻表や運用は3月14日に北近畿タンゴ鉄道がダイヤ改正したものを引き継いでおり、路線の分割は、路線名の分かりやすさを狙ったもの。

路線名のわかりやすさを改善するため、宮津線を宮津駅を起点に分割し、宮津駅~豊岡駅間の「宮豊線」(赤色)と、宮津駅~西舞鶴駅間の「宮舞線」(青色)とした。宮福線(緑色)はそのまま継承
WILLER TRAINS株式会社 代表取締役 村瀬茂高氏

 開業記念式典で挨拶をしたWILLER TRAINS 代表取締役 村瀬茂高氏は「我々はこの地域の活性化を行いたいという想いからWILLER TRAINSを設立しました。この地域は非常に風光明媚で海の幸や山の幸にも恵まれています。また豊かな歴史もあり、私自身が2014年の6月から生活していて心を奪われる素晴らしいところだと実感しました。ただ、普段の仕事や生活するうえでは公共交通だけでは不便で厳しいと感じました。そこで、地元の方が普段から利用できる交通に変えていくことをしっかりとやっていきたいと思います。全てを便利にするには時間が掛かりますが、利用頻度が高い場所だけでも利便性を高くするは可能だと考えます。この地域には、鉄道やバス、フェリーと様々な交通手段があります。これらで連続性のあるネットワークを形成し、クルマよりも便利で高齢者が安心して利用できる仕組みを作ることで、利用者を増やして行きたいと思います。地元の方に利便性の高い交通は、観光客にも利便性が高いということです。国内外の方が景勝地をまわれる仕組みも、様々な交通のネットワークを形成することで作って行きたいと思います。また、町作りも重要な地域だと考えています。ここから数十年先も安心して生活できる地域というのを作って行きたいと考えています。まだまだたくさん、我々にはできること、やるべきことがあります。これから長く走り続けて、この地域全体を活性化していくように努力していきます」と述べた。

国土交通省 鉄道事業課長 大石英一郎氏

 続いて国土交通省 鉄道事業課長 大石英一郎氏が登壇し「京都府、兵庫県北部の交通を長年支えてきた、北近畿タンゴ鉄道が地域と民間企業の新しい形を実現し、新たに京都丹後鉄道して開業を迎えられた。特に観光をはじめて様々なノウハウを持つウィラーグループに上下分離として運営を委ねるということは、我が国で初めての取り組みです。また、昨年11月に施行された改正地域公共交通活性化再生法のもと全国で初めて認定を受けた事業であり、私共も大変注目をしています。厳しい経営状況で努力している全国の鉄道のなかで京都丹後鉄道の今後のご活躍が大きな希望を与えてくれるように期待するとともに、国土交通省としても様々な形で重点的にお手伝いをさせて頂きたいと考えています。同時に「海の京都構想」をはじめとする沿線自治体の取り組みと手を携え、地域内外の皆様に利便性の高い公共交通のサービスを提供されることや、沿線市町がお互いを支え合い魅力的な地域を形成する『地域創生』の取り組みに京都丹後鉄道が力強く貢献してくれることを期待いたします」と祝辞を述べた。

京都府 副知事 岡西康傅氏

 京都府 副知事 岡西康傅氏は「北近畿タンゴ鉄道の再生と京都縦貫道の全線開通、この2つが北近畿、京都北部の『海の京都エリア』の地域創生の鍵になると思っています。この政策は京都府にとっても最重要課題のひとつです。また、京都府 山田啓二 知事は次のように祝辞を申しています。代理で読み上げます。これからの高齢者社会を迎えるにあたっては、さらに地域が元気になる取り組みが必要です。京都府では、観光面では『海の京都』の取り組みを、地域政策では、教育や医療などを相互に支える連携都市圏作りを進めており、この基軸をなすのが交通ネットワークの再構築です。WILLER TRAINS社は25人の若者を雇用され、次々と新しい企画を打ち出しています。これが動き出した地域再生の先鞭となり、地域再生の好循環をもたらすものだと大いに期待しております。都会ではできない豊かな生活圏形成のモデルとなる、都市圏作りの実現を京都府も目指します」と述べた。

 式典の最後には、開業を記念して2015年5月下旬に「大丹鉄まつり」を開催すると発表。内容に関しては調整中のようだが、地域住民はもちろん、広く京都丹後鉄道をアピールするために開催される。

2015年5月下旬に「大丹鉄まつり」の開催を発表
関係者によるテープカットが福知山駅の北口前で行われた。参列者は、西日本旅客鉄道株式会社 執行役員 福知山支社長 土肥弘明氏(左1番目)、福知山市 市長 松山正治氏(左2番目)、国土交通省 鉄道事業課長 大石英一郎氏(左3番目)、WILLER TRAINS 代表取締役 村瀬茂高氏(中央左)、北近畿タンゴ鉄道株式会社 代表取締役社長 松村憲次氏(中央右)、京都府議会 議長 多賀久雄氏(右3番目)、京都府 副知事 岡西康傅氏(右2番目)、元内閣官房長官 野中廣務氏(右1番目)
出発式は福知山駅14時59分発の天橋立駅行きカフェトレイン「あおまつ」を使用した列車で行われた。乗務した運転士の矢野裕城氏(右)とアテンダント 前田菜津美さん。制服はウィラーグループのイメージカラーであるピンクのラインが入ったものに変わった
運転士 矢野裕城氏への花束贈呈
WILLER TRAINS 代表取締役 村瀬茂高氏はじめ関係者によるくす玉割り
統括駅長 土出尚登氏による発車の号令

カフェトレイン「あおまつ」に乗ってみた

 記者もこの出発セレモニーが行われた福知山駅14時59分発の天橋立駅行きカフェトレイン「あおまつ」を使用した列車に乗った、その様子を以下にレポートする。

ホームからあふれるばかりの報道陣が見守るなか発車
福知山駅は高架駅に改修されたので、発車後はしばらく高架線を走る
関係者を乗せた「あおまつ」の車内。カフェトレインということで、各ボックス席にはテーブルが備えられている
車内には販売カウンターがあり、コーヒー(250円)、紅茶(250円)、宇治茶(150円)、地元のみかんジュース、りんごジュース、ぶどうジュース(各300円)や名産品のお菓子などが購入できる
購入できるお菓子。きんつばや煎餅、おからを使った菓子など
「あおまつ」ほか水戸岡鋭治氏がデザインした車両のクリアーファイル(300円)やシール(300円)、ポストカード(セットで800円)などのグッズが購入できる
車内には窓を向いた席もあり、車窓を楽しみながらコーヒーが飲める
車内には地元の特産品を飾った棚が設置
車両の後方には観光パンフが設置してあるスタンドがある
お手洗いの入り口も列車というよりカフェのよう
小さいながらも鏡の広い化粧室を完備
お手洗いの個室内は改造される前の雰囲気が残るが洋式となっている
あいにくの雨だったが、風光明媚な山間の景色が楽しめた
途中の駅では、JR西日本が乗り入れを行っている特急「はしだて」との交換が見られた
「あおまつ」の車両番号はKTR708、大阪車両工業製で、リニューアルデザインを行った「DON DESIGN ASSOCIEATES」のロゴも見られた
宮津駅では方向転換をするため5分前後の停車
地元の小学生たちが元気に出迎えてくれた
終着の天橋立駅16時5分に到着。ここでは、天橋立のキャンペーンガール「プリンセス天橋立」が出迎えてくれた

 北近畿タンゴ鉄道は、2014年3月期の決算で経常損失が8億円前後と地方私鉄の中でも赤字額が大きく厳しい状況にあった。WILLER TRAINSの発表会で村瀬氏は、「確約はできないが初年度を黒字にするためにさまざまな施策を行っていく」と語った。この上下分離方式と村瀬氏の地域の創生と一体となった施策がどのような展開を見せるのか、日本中の鉄道会社が注目している。

編集部:柴田 進