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バス路線に歴史あり! 谷底の“独立勢力・阪急バス”ついに廃止へ ~2026年9月で消える名物路線バスたち~
2026年9月30日 06:00
全国で約60万km弱にものぼる路線バスの減少幅は、2022年度に1598km、2023年度には2496km、2024年度には3887kmと、どんどん広がっている。比率で見ると1年で0.5~1%に達しようとしており、加速をつけて路線廃止が進みつつある。
本稿では、2026年9月のダイヤ改正で廃止される一般路線バスを取り上げていく。交通手段が徒歩か牛車しかなかった時代に「どうしても必要だ!」と共同出資で誕生したバスだったり、つい数年前まで頻繁に走っていた都市圏のバスだったり、九州のほぼ最南端バスだったり……あまりに多過ぎて網羅できない「9月廃止の路線バス」のごく一部の路線を紹介しつつ、廃止に至るまでの事情を見てみよう。
数年前まで存在した! 独立勢力の「ジェネリック・阪急バス」
阪急バス
廃止区間: [武田尾線]JR武田尾駅~西谷夢プラザ~上佐曽利など
廃止日: 2026年10月1日廃止(前日に最終運行)
ここに大阪から直通する列車が発着するのか? そう驚くような谷底にあるJR福知山線 武田尾駅から、バスで山を分け入る。そんな「阪急バス武田尾線」が、まもなく全線廃止となる。
実は、このバスは長らく「阪急バス」ではなく「阪急田園バス」、その前は「西谷自動車」であった。この地域(西谷村)の人々に必要とされ、沿線のささやかな出資によって開業に至った歴史がある。
西谷村は大正時代のなかごろまでクルマが走行できる道路がなく、農作物を運ぶために286頭もの荷牛を抱えるような拠点でありながらも、三田や宝塚へは徒歩移動を余儀なくされていたという。しかし、1899年(明治32年)に地区の南端に阪鶴鉄道 武田尾駅が開業すると、南北に長い西谷村を貫くバス路線の開設要望が高まり……。しかし駅までクルマが通れる道がなかった。
ようやく一部道路が拡張され、手始めに中古のシボレーを神戸から2000円(換算して少なくとも100万円以上)で購入。しかし平地で動いたものの、武田尾ではエンジンが故障してしまい、動かなくなったクルマを「池に捨ててしまった」という(宝塚市史より)。西谷村や武田尾の坂は、それだけ険しいものだったのだ。
その後、西谷自動車はシボレーやフォードなどを3~4台を使用して、1924年(大正13年)にようやく開業に至る。もっとも武田尾駅には道路が狭過ぎてバスの乗り入れができず、3kmも手前の「武田尾辻」から駅までは徒歩という状態が開業翌年まで続いた。それでも、村の喜びはひとしおであったのだろう。
不安視されていた経営面も、村の10地区の有志が株を持ち合いつつ、しっかり採算を採ってきた。戦後に阪急バスの資本参加を経て、西谷自動車は1997年(平成9年)に子会社「阪急田園バス」に名称変更。その後も一定の独立を保っていたのも、バス会社としてそれなりの勢力を保っていたこともあったのだろう。
しかし、100周年に近づくにつれて客足も運転本数も減少し、「阪急田園バス」は「阪急バス」に吸収。宝塚市内・三田市内への乗り入れも消滅し車庫も消え、補助を受けても年間3000万円以上の赤字が出る状態に。こうして旧・西谷自動車の路線は、開業から100年を超えたところで廃止のやむなきに至った。
廃止後の代替手段として、朝晩だけ定時運行しつつほかの時間帯は予約制の「西谷試験運行バス」を開始する(地域住民以外でも利用可能)。
西鉄バス佐賀
廃止区間: 江見線
廃止日: 2026年10月1日廃止(前日に最終運行)
福岡県・佐賀県境を越えて久留米市・佐賀市を結ぶバスは2系統。JR長崎本線に沿って国道34号を進む「佐賀~目達原~長門石~久留米線」と、5kmほど南側の国道264号をひたすら走る「江見線」だ。特に江見線は佐賀市・神埼市・みやき町・久留米市の鉄道でカバーできない地域を走るとあって、特急バスも走るほどのにぎわいを見せていたという。
しかし、地域が離れているとはいえ鉄道・バスともどもライバルが存在しているとあっては経営も厳しく、コロナ後には8往復から3往復に減便。利用客は通勤31%、通学14%で1日500人はいたものの、西鉄側の運転手不足で廃止に至ったという。
江見線の廃止に伴って、10月からは「ジョイックス交通」(神埼市)が委託を受ける形で、沿線の佐賀市・神埼市・みやき町が共同運行で「江見線バス」として引き継がれる。しかし福岡県側の久留米市は協同運行から外れており、佐賀県側の3町がどこまで支え切れるかが注目だ。
なお、県境を越えるバスは、片側が支えなくなると全線廃止に至りやすいという問題もあり、同じ佐賀県でも長崎県境を越える「JRバス嬉野線」が2025年に廃止になったばかり。長崎県側の東彼杵町が補助打ち切り、デマンドバス転換を選んだことから廃止に至っており、江見線でも「(補助金を拠出しない)久留米市方面への廃止」「佐賀県側の3自治体の足並みが乱れる」などの事態があると、代替バスの存続も危うくなる可能性がある。
西武観光バス
廃止区間: [長沢線(倉尾線)]小鹿野役場~長沢
廃止日: 2026年10月1日廃止(前日に最終運行)
イカロス出版「秘境路線バスをゆく」シリーズでも「スリリングなポイントが目白押し」と紹介されていた「狭隘バス路線」(道幅の非常に狭い区間)も、ついに廃止となる。
小鹿野町の中心部から山間部の藤倉方面を結ぶこのバス路線は、終点・長沢バス停から先は林道しかなく、バスは折り返して戻っていくという路線だった。走れる限界ギリギリまで山を踏み分けていたのだ。
走行するルートは狭路としても知られ、大型バスでの通行が難しいことから中型車が走っていた。2011年に新しい「要(かなめ)トンネル」が開通するまで、ここをなぜ通れるか分からないほど、狭い手掘りのトンネルを通過していたのも懐かしい。
廃止後の代替手段として、秩父市では以前から運行している「あいAIタクシー」(吉田大田乗合タクシー)が料金を引き下げて対応するという。ただ、利用者は「秩父市吉田・大田地域在住者」のみに限定されている。なお、万年橋などを経由して吉田元気村に至る「D2」系統は存続するため、上吉田駐在所~上吉田間は路線バスとして存続する予定だ。
鹿児島交通
廃止区間:
[系統290]鹿屋~大根占~佐多
[系統299]垂水中央病院~垂水港~根占
廃止日: 2026年10月1日廃止(前日に最終運行)
大隅半島の先端・佐多岬の「佐多岬駐車場」まで向かっていたバスは2006年に廃止となり、観光の拠点ともなっていた「ホテル佐多岬」の閉鎖に伴い、鹿児島交通の佐多~ホテル佐多岬~大泊~外ノ浦間も2023年に廃止。そして、国道269号の終点にして佐多岬への入り口にあたる「佐多」(南大隅町)集落までのバスも、ついに姿を消す。
垂水~根占間も、双方が両端でどちらもフェリーターミナルに接続しているという、なかなかめずらしいバス路線であった。なおこの2路線だけでなく、佐多岬への観光周遊バス「佐多岬・雄川の滝をめぐるバス旅」も2025年10月で運行を実質終了しており、大隅半島のバスは徐々に縮みつつある。
廃止後の代替手段として、「原則町民のみ利用」のコミュニティバスが運行を開始する。大隅半島の最南端・佐多岬へのアクセスは、もはやクルマでしか到達できない。


























