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JALの767が40周年。“これだけで元取れそう!”な操縦士の実況付き濃密フライトに乗ってきた
2025年11月4日 06:00
- 2025年11月1日 実施
JALは10月30日~11月1日の2日間、成田空港をベースに「ボーイング767 JAL就航40周年記念チャーターフライト&格納庫見学ツアー」を実施した。
本ツアーは「11月1日に就航40周年を迎えるボーイング 767型機の魅力を飛行機を愛する皆さまへ深掘りしてお伝えする」と企画された。1日目は格納庫で機体を見学しつつ、コクピットでの記念撮影をはじめ運航乗務員や整備士の解説を聞くといった座学を、2日目は実際に767のチャーターフライトで性能や特性を実際に体感できるというもの。
旅行代金は宿泊を含まず7万6700円~で、8月19日~30日にかけて募集を行なった。最終的に応募者数は約890名、当選倍率は約5.9倍。
このツアーは運航訓練部767訓練室 飛行訓練教官の鈴木伸二郎氏が発案し、767運航乗員部 業務グループの三好真由氏が事務・調整などを担当している。
鈴木氏は「1985年11月1日に日本航空の767は就航いたしました。今日は節目に当たる40周年の当日になっております。この40年間を振り返ったときに運航と整備の方々、社員が安全の層を1枚1枚積み重ねて40年という期間を迎えられたのかなというふうに思います」と述べるとともに、「767が40年間飛べたのはお客さまがあってこそ」であることからこうしたツアーを企画したとコメント。
また、コンテンツに関しては「ライトなファンは767(が好きな人)にはいない」という想定でターゲットを絞り込んだと明言。平日にまたがった日程にもかかわらず多くの参加申し込みがあったことから、座学を含めて「767が好きな人がこれだけ集まったので、もう、そういう方に合わせたレベルで提供」し、フライトに関しては「前日に得た性能などの知識を体現する」ものにすると意気込んだ。
三好氏は「お客さまにとにかく楽しんでいきたい」という思いで整備部門や成田空港との調整を進めたとコメント。ツアーでは1日目を座学、2日目はフライトとしたので「1日目に学んでいただいたこと、実際に細かいものを見ていただいた」ことが、実際のフライトではどんな感じになるのか体感して楽しんでいただきたいと述べた。
ボーイング 767型機
ボーイング 767型機は1970年代に開発がスタートした双発機。操縦席の計器にモニターを採用した、いわゆる「グラスコクピット」の先駆けとなったモデルでもある。機内に2本の通路があるワイドボディ機で、エコノミークラスの座席配置は2-3-2をベースとしており、多くの乗客が窓側または通路側に座ることができることから人気の高い機種となっている。
JALでは767-200型機を1985年に初受領し、同年11月1日に羽田~福岡線で初便就航。同型機はすでに退役しており、現在は胴体を延長するとともに高出力エンジンへの換装および燃料搭載量の増加などスペックをアップした767-300ER型機を27機保有(2025年3月31日現在、含貨物3機)。国内線および比較的近距離の国際線で運航している。
ボーイング 767-300ER型機
全長: 54.9m
全幅: 47.6m/50.9m
全高: 16.0m
エンジン推力: 27.2t×2
標準座席数:
[国内線仕様(A27/A28)]261(クラスJ 42、普通席 219)
[国際線仕様(A44)]199(ビジネスクラス 24、エコノミークラス 175)
巡航速度: 862km/h
最大離陸重量: 133.8t/181.9t
航続距離: 2930km/1万460km
飛行機ファン垂涎のチャーターフライト
ツアーは2日間の日程が組まれており1日目は109組145名が参加。翌2日目は成田国際空港の国内線カウンターに参加者が集合。3代目の制服(1974年1月~1987年12月)をまとった旅客スタッフとともに、この日のために用意された専用の画像が出迎えるなか、受付を実施。この日の参加者は148名となった。
搭乗口では発案者でもある鈴木氏と副操縦士の杉本祐規氏、そしてリモートでオペレーションコントロール部 国内運航管理室の京極彩乃氏が参加しての模擬ブリーフィングが行なわれた。内容は今回のチャーターフライトをベースとしたもので、飛行ルートや搭載燃料はもちろん、天候、風向きを踏まえた飛行高度による燃料消費の違い、揺れを抑えるためのルート選定など、本番さながらの詳細な打ち合わせを実施。普段見ることのできないフライト前の舞台裏を垣間見ることができた。
当日のフライトに充当されたのはJA617Jで、国際線仕様の機材だ。便名はJL4907で成田11時発~14時着のスケジュール。10時30分過ぎに搭乗を開始し機内へ。出発前の機内アナウンスでは「機長は途中787に4年間乗務しておりましたが、出戻りまして767乗務歴14年の沢田龍太郎、副操縦士は767一筋乗務歴2年の安間基気でございます」と乗務員が紹介された。
そして、ここからがチャーターフライトの真骨頂。鈴木氏により出発前のコクピットの様子が随時紹介されていく。「本日はAKAGI4デパーチャーでランウェイ34レフトからデパーチャーすることを予想して管制から承認をいただいております」と管制とのやり取りを紹介したかと思えば、「右側のハイドロを入れたいと思います。エルロンがハイドロを入れたときにポンと上がるのをお楽しみください」と出発前のチェックを紹介。アンチコリジョンライト点灯時はパイロットは外の様子を見ているので、そのタイミングで「手を振っていただけるとありがたいです」と豆知識も。
プッシュバックを終え11時1分に管制がエンジンスタートを承認。それを受けて「右エンジンからスタートいたします。昨日見ていただいたAPUのブリードエアを右のエンジンのスターターに回します。それによってN2が回ってくるのを確認してください」「それではライトエンジンスタートします」「スターターに圧縮空気が送られて低い音でスターターが回っているのが確認できたかと思います」「現在、N2が回り始めてオイルプレッシャー上がってきました。低圧部のタービンのN1も回転を始めました。このあとフューエルインいたします」「右エンジンスタートノーマルいたしました」……。
普通のフライトなら機内はざわざわしているタイミングだけれども、周囲からは物音ひとつ聞こえず、アナウンスのほかはエンジンの始動音が響くのみ。パイロットが離陸前の一挙手一投足を解説してくれるのだから飛行機好きにはタマラナイに時間に違いない。そのあともフラップ、エルロンと解説しながらチェックをしたあと、滑走路34レフトへ。ここでも「ティラー」(ノーズタイヤを動かすステアリングのようなもの)を使った横揺れのコントロール、ブレーキを強めに操作するなど普段は体験できないメニューを実演していく。
そして離陸。「本日は離陸重量27万5000ポンドです。スラストレーティングは3。3段階あるうちの1番強いマックスで、いわゆるドッカン離陸というのを行ないたいと思います。40万ポンドのウェイトでも上がる飛行機が27万ポンドで上がりますので13万ポンドの余裕があるので、その分上昇率非常に高くなってます」「フラップ上げるまでの間、ピッチ20°ほどになりますので、767の上昇どうぞお楽しみください」「一旦ランウェイで止まって70%N1まで回転数を上げたうえで離陸を行ないたいと思います。外のエンジン音に注目してください」……。
エンジン音が高まったところでブレーキが外され加速していく。それなりに767には乗っているけれど、これほど加速度を感じたのは初めての体験だ。「80ノット」「V1」「ローテート」「V2」と逐次状況がアナウンスされ、滑走路を離れるととんでもない角度で上昇していく。離陸は11時23分。左右に翼を振って成田空港をあとにした。ここまでスポットを離れてからわずか20分ほどながら、濃密な時間を過ごすことができた。正直これだけでも多くの人が「元は取った!」と思えるのじゃないだろうか。どのぐらいすごいのかは言葉だけでは表わしづらいので、飛行経路追跡アプリをチェックできる人はそのスゴさを確かめてほしい。
水平飛行に移ってからは乗務員によるトークショー、この日のために特別に用意されたお弁当の提供、整備士と運航乗務員が作った20問のクイズ大会などを実施。チャーター機はその間、新潟を目指したのち金沢、松本の上空を経由し、木曽の上空で「767」を描き浜松、御蔵島を経由して成田へ。降下開始を前に鈴木氏が「本日、大変暖かいお客さまと一緒に、この40周年のフライトを一緒に飛行できたことを乗務員を代表いたしまして深く御礼申し上げます」とあいさつ。およそ3時間のフライトを経て13時44分に成田空港に着陸した。
ターミナルビルのスポットに戻るのかと思いきや格納庫前のスポットでエンジン停止。そのままトーイングカーで格納庫内へ向かい、そこで降機するなんて前代未聞のサプライズが。
格納庫では多くのJALスタッフが参加者を出迎え、その場でセレモニーを実施した。運航本部長の南正樹氏、767運航乗務部長の原一夫氏、整備本部長の濱本隆士氏らのあいさつに続き、チャーターフライト乗務員の対談、機内クイズの解説と順位発表、記念撮影を行ないイベントは終了となった。
発案者の鈴木氏がターゲットを絞り込んだというだけに、2日目のチャーターフライトだけを見てもそうとうにマニアックなツアーだったのは確か。記事内では水平飛行後は大幅にはしょってしまったけれど、着陸までの間にも多くの解説が行なわれており、3時間というフライト時間以上に参加者の満足度は高かったのではないだろうか。ほかの機種でも同様のツアーをぜひ実施してほしいところだ。
































































