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【2024年度】京都市バス、営業係数・乗客ランキング。新路線がいきなりナンバーワンに!
2025年9月26日 12:00
止まらないインバウンド需要。それでも苦境の京都市バス「儲かり路線」はどこ?
祇園・清水寺・銀閣寺……インバウンド(訪日外国人旅行者)を中心に混み合う京都市交通局・バス事業は、2024年度は客数増加で3億円の黒字を確保しているものの、2025年度は人件費・燃料代の高騰で8億円の赤字に転落する見込みだという。
9月18日、そんな京都市バスの路線ごとの乗客数・営業係数が発表された。このデータをもとに、「黒字・儲かり路線」と「赤字・儲かっていない路線」を探し、原因と将来の展望を読み解いていこう。
※営業係数とは:100円の営業収入を得るための費用を示す。100未満であれば黒字で、数字が小さいほど効率よく稼いでいる、という計算になる。一方で、100を超えれば赤字で、数字が大きくなるほど採算性がよくない。
2023年6月に大規模なダイヤ改正を行なったこともあり、京都市バスでは路線数は前年の74路線から、83路線に増加した。うち黒字は24路線で、全体で3割ほどの黒字路線が7割の赤字路線をほぼ埋めている。なお、営業係数の全体平均は「103」だ。
さて、2024年度の「営業係数ナンバーワン=効率よく儲かっている路線」を発表しよう。予想だにしなかった、意外な結果が出た。
京都市バス・営業係数トップ10&上位ランキング!
第1位:106系統 京都駅前~三条京阪前(営業係数42)
堂々の1位は……なんと、2023年に開業したばかりの「106系統」。2024年に集計対象となって早々に、営業係数1位を記録した。
収益度の高さたるや、100円稼ぐのに、たった42円しかかからない。比較すると、都バスでも営業係数のトップは60~70台(品99、東22など)なので、京都市バス・106系統がいかに効率よく利益を稼げているか、お分かりいただけるだろうか。
ただ、この路線は平日だと1日2往復程度しか運行されず、1日平均の乗客数346は、乗客数トップクラスの205系統と比べて、100分の1程度しかない。そんな路線が、なぜ営業係数1位? 理由は「観光シーズンの大増便」にある。
「楽洛 東山ライン」の愛称がつく106系統は、観光シーズンになると混雑で乗車できなくなる206系統などと同じルートをたどり、特に混み合う「三十三間堂」「清水寺」「祇園」「知恩院」などを経由する区間で、106系統を大幅増便させる、という形で需要に応えているという。例えば2024年10月の繁忙期には、全系統あわせたピーク時には2~3分間隔で運行していたようだ。
混み合うタイミングではフルに乗客を乗せ、平日はほとんど運行しない。いわば「儲かる日に、儲かる分だけ運行」であり、利益が出やすいのも当たり前。主な観光地を経由しない地下鉄では代用が利かない「106系統」の営業係数トップに、納得せざるを得ない。
ほかにも、106系と同様に「多客区間の区間便扱い」として新設された「105系統(京都駅前~銀閣寺前)」も、営業係数85(11位)と実績を伸ばしている。
第2位:207系統 九条車庫前~四条大宮~京都駅八条口~九条車庫前(営業係数56、前年57)
第3位:206系統 北大路バスターミナル~東山七条~京都駅八条口~北大路バスターミナル(営業係数56、前年66)
京都市バスで「200番台系統」といえば、市街地を一周する環状路線だ。この路線のなかから、平日・休日問わず頻繁に運行する「207系統」「206系統」が、2位・3位につけた。
206系統は先に述べたとおり、一部区間で106系統と同ルートを通る。平日・休日問わず頻繁に運行しているため1日平均の利用客は2万7789人と全系統で2番目に多いが、折からのガソリン代・人件費高騰の影響で経費が掛かったせいか、営業係数は若干悪化してしまった。
このほか「203系統(錦橋車庫前~西大路四条~錦橋車庫前)」など、200番台の循環系統は軒並み採算が悪化している。一方で観光路線は好成績を挙げており、「市民も使う路線は頻繁な運行の経費がかさんで採算悪化、観光路線は効率よく採算好転」という図式があるといっていいだろう。
環状系統以外にも、黒字路線の常連である「3系統(松尾橋~北白川仕伏町)」が81→86、「46系統(西加茂車庫前~岡崎公園)」が90→95など、均一運賃230円で行ける生活路線の収支が軒並み悪化しているのが気がかりだ。
高収益の秘訣は「運賃500円・ズバッと速達」。観光特急バス、効果はあったのか?
第5位:EX100系統 京都駅前~銀閣寺前(営業係数73)
第6位:EX101系統 京都駅前~五条坂(営業係数76)
営業係数ランキングで、もう1つ注目したいのが2024年に運行を開始したばかりの「観光特急バス」の存在だ。
どちらの系統も並行のバス路線より大幅に停車箇所を絞り込んでおり、「EX100」は祇園・平安神宮などだけに停車して銀閣寺へ。「EX101」は京都駅~五条坂間の1区間を、ひたすらピストン運行する。
ただ、運賃が「1乗車500円」と、普通の京都市バス(均一230円)の倍もかかる。その高額さから市民はほとんど乗車せず、市バスより快適に移動したい観光客だけが乗車するため、既存の系統から観光客を分離するための、巧みな一手と言えるだろう。営業成績でも、上々の結果が出た。
さて、市外からの乗客にとって、観光特急バスは快適だったのか? 京都市バスは所要時間の比較を発表しており、「並行する系統と比べて、EX100号系統が2~12分、EX101号系統が3~7分の速達性が認められます」とのことだ。また運行開始以降、ほかのバス路線の待ち時間が減少したことも報告されている。
利用も順調に伸びており、運行開始当初は2系統で2200人程度/日だったのが、ピークの11月には3000人/日に迫り、最も多い日では4000人/日近くに利用されたという。ただ利用状況は行きが70%以上、帰りは4分の1程度と利用が伸び悩むなど、行き・帰りともに速達を保ちながら効率よく運行する手法は、まだ確立していないのだろう。
まだまだ運転本数は少ないが、京都市バスは観光特急にとって「観光と市民生活の調和を目指して運行しており、収益を目的とした増便は考えていない」としている。この「観光特急バス」、来年はどれだけ渋滞解消に貢献し、どんな営業係数となっているのか、今後に注目だ。
洛西SAIKO(さぁ、いこう)でバスの利便性改善→採算悪化。営業係数ワースト10
そして、京都市バスのさらなる課題は「7割の赤字路線」だ。営業係数の数字が大きい=利益効率が低いバス路線の、ワーストランキングを見てみよう。
ワースト1位:西5系統 桂坂中央~桂駅西口(営業係数300)
ワースト2位:西1系統 洛西バスタ-ミナル~桂駅西口(営業係数289)
ワースト3位:西9系統 小畑川公園北口~JR桂川駅前(営業係数268)
ワースト4位:西3系統 洛西バスタ-ミナル~桂駅西口(営業係数256)
ワースト5位:南8系統 横大路車庫前~竹田駅東口(営業係数249)
営業成績ワーストのうち、西京区の洛西ニュータウン・桂坂を走る「西系統」がワースト5位のうち4路線、ほかの路線もワースト20位内に連なっている。
この地域は市バス以外にも京阪京都交通・ヤサカバスなどが走っており、市バスは「洛西SAIKO(さぁ、いこう)プロジェクト」の一環として、定期券での共通乗車などを積極的に進め、別に市バスを待たずとも乗れる環境に……。この施策が仇となったのか、西5系統では、乗客が前年度より約4割減少、営業係数も256→300と大幅に低落、ワーストを独走することとなった。
郊外の路線は軒並み経営が厳しく、観光需要に“おんぶにだっこ”状態。今後の京都市バスは、「市内での市民の乗車機会を確保しながら、効率・単価よく観光輸送」「郊外路線の赤字幅圧縮」という課題を抱えながら、走り続けるだろう。
最後に、添付画像で全路線の営業係数を添付するので、ご覧いただきたい。






























