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リニア・鉄道館にドクターイエローT4編成がやってきた! 再塗装した先頭部はなぜ手塗りに?
2025年6月9日 18:00
- 2025年6月7日 実施
愛知県の「リニア・鉄道館」(愛知県名古屋市港区金城ふ頭3-2-2)で6月7日、ドクターイエローこと923系・電気軌道総合試験車が搬入された。その搬入・設置に際して、“一般参加者が手を添えて、一緒に最後の移動を行なおう”というイベントが開催された。
この「ドクターイエローT4編成 搬入作業体験イベント」の参加者は34組38名。推し旅「鉄推し!~バトンタッチ!感謝を込めて~」に参加する形で、4月2日から5月14日にかけて募集を行ない、応募倍率は約22倍に達したという。
搬入されたのは7号車
「ドクターイエロー」923形T4編成は最後の検測運転、そして大井車両基地における「お掃除体験イベント」を終えたあと、2月20日に静岡県浜松市のJR東海浜松工場まで回送された。そこで編成が解かれて、7号車(923-7)が「リニア・鉄道館」に運ばれてきた。
これまで、「リニア・鉄道館」には前任の922形T3編成の7号車(922-26)が展示されていたが、これと入れ替える形である。
922-26は、石川県にあるJR西日本の北陸新幹線担当車両基地・白山総合車両所に隣接する「トレインパーク白山」への移転が決まっており、6月4日に搬出された。
それによってできた空きスペースに、923-7が搬入された。先頭車は2両あるが、検討の結果、1号車ではなく7号車が展示されることになった。なお、リニア・鉄道館に設置する前に、浜松工場で再塗装などの整備作業が行なわれた。
浜松工場長からリニア・鉄道館館長への引継ぎ式
イベントは、11時10分から「引継ぎ式」が行なわれた。「JR東海の事業用車」から「リニア・鉄道館の展示車両」に変わる節目である。
ここでちょっと解説。ロボットが自動塗装を行なうには、車体の形状に関するデータが必要になる。700系はすでに引退しており、それと同じ先頭部形状を持つ車両は2編成のドクターイエローしかいない。これが、手塗りが用いられた理由と思われる。
ちなみに交番検査とは、3万キロ走行あるいは30日ごとに、主要機器のカバーを開けて内部の検査を行なったり、消耗品を交換したりする作業である。
参加者が手を添えて展示位置に搬入
続いて11時30分から、搬入作業が始まる。この時点ですでに屋内への搬入は済んでおり、最終的な設置場所まで移動するのみとなっていた。
といっても、40トンぐらいある大物であり、動かすよりも、止めることの方が難しい。そのため、移動そのものは専門の業者が担当して、参加者は移動する車両に手を添えて「一緒に押す」という内容になった。
ところで。923-7の展示場所は、これまで、922-26が展示されていたのと同じ場所だ。ただし、この場所は直接、外部との出入りができない。
そこでまず、922-26の搬出と923-7の搬入を実施するために、その後方で展示されていた急行型電車、クモハ165形を一時的にどかして、出入りのためのスペースを確保した。イベントが始まった時点で、すでに923-7は、クモハ165が展示されていた場所まで搬入済み。それを、参加者が押して展示場所まで移動する流れとなった。
923-7を眺めながら食事会、続いてガイドツアー
その後、12時00分からは食事会が行なわれた。その場所は、923-7に隣接する場所に展示されている100系新幹線電車の食堂車、168-9001。2階建て車両の2階がホールになっているから、大きな窓からドクターイエローを眺めつつ食事会、という趣向になった。
このあと、参加者は複数のグループに分かれて順次、923-7をバックにした記念撮影やガイドツアーとなった。
浜松から名古屋までは道路輸送
リニア・鉄道館は名古屋市の南部、港区の金城ふ頭にある。一方、整備が行なわれた浜松工場は静岡県の浜松市にある。では、その間の移動はどのように行なわれたのだろうか。
なにしろ、全長が約27m、全幅が約3.4mもある大荷物だ。トラックに載せて運びましょうというわけにいかない。そもそも、道路法で定められている「一般道路を通行できる車両のサイズ」の上限(長さ12m、幅2.5m)をはるかにオーバーしている。
リニア・鉄道館の敷地が海に隣接していることから、豊橋から船で輸送するのかと思ったら、さにあらず。実は、2日がかりで道路を使った陸送が行なわれた。台車は外して別のトラックに載せて、車体の下には道路輸送用の専用台車を履かせる。それを牽引車で牽引して運ぶのだ。
ただ、道路を使って陸送するといっても簡単ではない。新幹線電車の道路輸送は「制限を超える特殊車両の通行」にあたるため、道路管理者に申請して「特殊車両通行許可」を取得する必要がある。申請したとおりの経路を通らなければならず、しかも時間帯は深夜に限定される。
実は、豊橋港と浜松工場の間の新幹線電車の陸送は、新車の搬入でも使われたことがあるルートだ。今回は、途中まではそれを逆行したことになる。全体では100kmを超える距離になるので、一晩での移動は不可能。二晩がかりとなり、昼間は豊橋港で待機していたのだった。
一方、リニア・鉄道館から、石川県の「トレインパーク白山」に場を移す922-26は、金沢まで陸送するのは現実的とはいえず、海上輸送された。6月7日の時点で、すでに船積みを終えて名古屋港を出港、航行中だったという。
そして、金沢港からトレインパーク白山までは陸送になる。これは、隣接する白山総合車両所への新車搬入と同じルートだ。なお、トレインパーク白山での展示開始は既報のように、6月20日9時からである。