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NEXCO東日本、管制運用を高度化した関東支社「道路管制センター」の新施設公開
新たに車載カメラとスマホを使った情報収集など
2016年2月19日 12:34
- 2016年2月18日 実施
- 2016年2月25日 運用開始
NEXCO東日本(東日本高速道路)は、関東支社「道路管制センター」の新施設を2月25日にリニューアルオープンするにあたり、2月18日に開所式を行ない、内部や設備を報道陣向けに公開した。
関東支社 道路管制センターは、全国最多の道路事象となる、1都7県の高速道路1345kmを集中管理。延床面積約5700m2の地上3階建てで、屋上には災害時の人員輸送と状況把握のため、6.8トンまでの中型ヘリが夜間でも離着陸可能なヘリポートも備える。建物はマグニチュード7.3クラス(震度6~7対応)の首都直下地震に対応した最高水準の耐震性能を有し、管制室内には床免震および機器免震を採用、大規模地震時でも管制業務の継続が可能。災害時、管制業務が出来なくなった他の支社をバックアップする機能も持つ。
新道路管制センター公開に先立って開所式が行なわれ、まず主催者としてNEXCO東日本 代表取締役社長 廣瀨博氏から、「NEXCO東日本では、東日本大震災を契機として首都直下地震に備えた機能分散やリスク管理など、さまざまな防災機能強化を図ってきました、その要となる新道路管制センターがリニューアルオープンします。道路管制センターの歴史を振り返りますと、昭和47年(1972年)に岩槻通信管理所が設置されて以来、1都7県1345kmの高速道路を管制しています。1日平均260件にもおよぶ異常事象に対応するなど、全国最大規模の管制業務を担当しています。当センターでは、関東管区警察局岩槻高速道路管理室とともに24時間365日道路状況をリアルタイムに収集し、安全安心を提供する高速道路の司令塔の機能を果たしています。
今回リニューアルオープンする新道路管制センターの特徴は、3点あります。高い耐震基準と床免震構造を組み合わせ、首都直下地震にも対応する構造とするとともに、災害対策用ヘリポートや自家発電設備ライフラインを新設しました。有事の際には、他支社との管制機能のバックアップを可能とする監視制御システムを採用し、管制業務を途絶えさせることなく、高速道路ネットワークを確保できます。リアルタイムの情報のみならず、渋滞発生時には渋滞の伸縮傾向複数経路の所要時間など、よりきめ細かな道路情報を提供していきます。道路管理車両のGPS情報や車載カメラ画像を集約管理し、最大規模の大型ディスプレイで状況をリアルタイムに把握できます。緊急時の現場支援の迅速化、正確な情報提供などを行なうなど、管制運用の高度化を図っています。東日本大震災時には関東支社管内でも、管内延長の約90%、1090kmが通行止めになるなど甚大な被害を受けました。当時は直後から大きな混乱のなか、道路管制センターに被災状況が集約され、救助、救援物資輸送のための緊急交通路確保の初動体制に大きく貢献しました。今後もさらに機能を拡張させ、ビッグデータを活用した渋滞情報の精度向上、事故リスク評価など、実現に向け検討を加え、これまで以上に安全、安心、快適、便利に高速道路を利用できるよう努力していきます」と挨拶があった。
次に来賓として、警察庁 関東管区警察局 広域調整部長 河合信之氏から、「新道路管制センターは、道路情報を一元管理し、ドライバーへのタイムリーな情報提供、管制業務が可能な高度なシステムを導入した施設であります。地震や水害への対策、ライフラインの確保のほか、防災ヘリの離着陸施設も備える、防災拠点としての機能を備えています。危機管理対応にあたっても、頼もしい存在となります。こうして管制室の一画にいると、巨大なパネル、管制台、とての機能的で快適な、業務効率のよい施設であることが分かります。高速道路はいうまでもなく、人とモノの大動脈であり、とりわけこの岩槻の道路管制センターは首都に直結しつつ、首都圏周辺まで放射状に伸びる複数の重要路線を管轄する、首都圏高速道路管理の中枢施設であります。管制制御する道路交通量も極めて多く、日頃のご苦労は並大抵ではないと思われます。一方昨年(2015年)1年間の全国の交通事故による死者数はわずかではありますが前年に比べて増加しまして、これは15年ぶりのことです。高速道路の死亡事故も増加に転じてしまいました。全国で200件、215名の方の命が失われました。こうしたなか、NEXCO東日本 関東支社では、昨年も高速道路における、各種メディアを利用した啓発活動や、ドライバーへの情報提供、管理車両によるパトロール活動、安全施設の整備、車両制限令違反の現認と告発など、道路管理者として、交通事故防止の諸対策を積極的に推進していただけました。昨年、岩槻管理室の所管エリア内では、一昨年と比べ6件5名、死亡事故が減少しました。警察の力だけでは到底できないことです。新管制センターの一角をお借りして、交通取り締まりおよび交通規制当局の立場から、警察活動を行なっていきます」と挨拶があった。
続けて灯入れ式に移り、点灯用のボタンを、埼玉県 危機管理防災部長 小島敏幸氏、国土交通省 関東地方整備局 道路部 道路情報管理官 戸倉健司氏、警察庁 関東管区警察局 広域調整部長 河合信之氏、NEXCO東日本 代表取締役社長 廣瀨博氏、NEXCO東日本 常務執行役員 関東支社長 横山正則氏の5名が押して、交通管制用大型ディスプレイを点灯させた。
最後に、NEXCO東日本 関東支社 管理事業部 管制高度化チーム リーダー 平池俊文氏からは、施設の概略説明があった。
管制・制御室の交通管制用大型ディスプレイは、5.5×17m(縦×横)。55型液晶ディスプレイを8段14列の112面。下部にCCTV用32型ディスプレイが20面並ぶ。
隣の施設制御用大型ディスプレイは、2.7×7.7m(縦×横)。55型液晶ディスプレイを4段8列の32面。間に共有用の55型液晶ディスプレイが4面ある。
交通管制用ディスプレイは、路線図に事故や渋滞などのイベントを表示することはもちろん、現地カメラ映像、走行ビデオ、気象情報、非常電話受付状況、航空写真、ジャンクションの3Dマップ映像など、さまざまな情報を表示できる。
施設制御用大型ディスプレイには、13トンネルの38画像を表示でき、文字情報や重要事象状況図で状況を判断しやすくなっている。大規模災害時には、ストレスコントロールがかかり、優先度の高い事象を抽出し画面に表示させ、混乱を避けることができる仕組みになっている。
ほか、新たな情報収集として、GPSシステムと車載カメラをパトロールカーに搭載し、正確な位置情報とともに車載カメラの動画を専用スマホアプリを使って得るというシステムも紹介された。これらの情報も管制室のディスプレイに表示させることができる。
また、通行止め時の一斉指令放送の内容を料金所、コンシェルジェ、お客様センターへテキストでメールのように配信し、的確に伝えるというシステムも紹介された。
建物は高い耐震性と防災機能が強化されている。近くの綾瀬川が決壊した際には、1m浸水することを予測し、建物全体を1.6mかさ上げしている。災害時のライフラインに、3日分の燃料を確保した自家発電装置や井戸設備も持ち、3日分の飲料水と食料も備蓄する。井戸設備は通常時には、トイレの洗浄水として活用し、災害時には濾過装置により飲料水として利用できる。なお、下水は5日分を貯めることができる。
屋上のヘリポートは21×21mの面積があり、災害時の人員輸送と状況把握のため、6.8トンまでの中型ヘリが夜間でも離着陸可能なもの。リポートからエレベーターまではストレッチャーで運べるようにスロープになっている