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【実録レポート】史上初、タコ壺+そば? 「淡路屋のおもうつぼ」でそば&たこめし食べてみた

「ひっぱりだこ飯」のタコ壺に……そばを入れた?

 かけそばを盛り付けるのは「蕎麦どんぶり」、漁師さんがタコ漁のために海底に沈めるのが「タコ壺」。そして、ご飯を入れるのが「お茶碗」。ところが、「かけそばとご飯をタコ壺に入れて提供する店」が、兵庫県明石市に誕生した。

 店名は「淡路屋のおもうつぼ」。店舗を運営しているのは、駅弁でおなじみ淡路屋だ。

 カウンターで囲まれた店は、パッと見た感じでは、普通の立ち食いそば店と変わらないように見える。しかしそこは、「ひっぱりだこ飯」「JR貨物コンテナ弁当」などのヒット駅弁を連発する淡路屋が、普通の店舗を手掛けるわけがなく……さっそく、店内に入ってみよう。

淡路屋のおもうつぼ店舗外観

駅ナカだけど普段使い空間! スーパーと同フロアで「タコ壺そば+駅弁販売」

明石駅。ピオレ明石東館は、自由通路の北東側に入口がある

 淡路屋のおもうつぼは、JR・山陽電鉄の明石駅に併設された「ピオレ明石」東館1階で営業している。立地は駅構内ではあるものの、改札からは少し離れており、完全に「普段使いの商業施設」の一角だ。

 同じフロアにあるのは成城石井やお惣菜、スイーツなどのテナント、さらにミスタードーナツやすし店、きしめん店など。外食形態・中食形態の店舗が激戦を繰り広げる1階フロアの“へそ”部分、ちょうど真んなかという立地だ。

 そのなかで淡路屋のおもうつぼが提供しているそばは、きわめてシンプルなものだ。ただし、そばを通常の蕎麦どんぶりではなく、陶器製で少しタテ長の“タコ壺”に入れて提供している。もちろん本当の漁に使うタコ壺ではないが、つやつやとして光沢があり、海に沈めれば本当にタコが獲れそうな雰囲気がある。

 淡路屋はロングセラー駅弁・ひっぱりだこ飯でタコ壺を模した陶器を使用しており、お店の方によると「そば用に一回り大きいものを作ってもらった」とのこと。陶器にはひっぱりだこ飯と同様のタコの文様が刻まれているため、ツボ容器のわりには持ちやすく、いい具合に手になじむ。

 それにしても、「タコ壺に入ったそば」を食べられるのは、間違いなくここだけだけだろう。ちょっとSNSのネタにすれば、映えること請け合いだ。

 そして看板商品の「ひっぱりだこそば」は、ひっぱりだこ飯に入っているタコやタコ天、タケノコなどの具がごろごろと入っている。これがひっぱりだこ飯だと大半がご飯のなかに隠されているが、そばなら透明の出汁のなかに見えており、1種類ごとに「こんなに具が大きかったのか!」と確認しながら食べることができる。

 また、オプションで頼める「ミニたこ飯」は、ひっぱりだこ飯容器よりもひと回り小さい“ミニ・タコ壺”で提供される。ざるそばのつけ出汁もミニ・タコ壺で出てくるなど、ありとあらゆる場面でタコ壺が大活躍だ。

駅弁屋さんが「駅そばではない駅ナカそば店」出店。なぜ?

株式会社淡路屋 副社長 柳本雄基氏

 さて、本来は駅弁屋さんである淡路屋が、そば店出店を決意したのだろうか?

 淡路屋の柳本雄基副社長によると、もともと淡路屋はいろいろと外食店舗を出店していたものの、2013年にフレンチレストラン店舗を閉店して以降、祖業である駅弁に力を注いでいたとのこと。しかし、「もう一度外食を手がけてみたい」「(柳本副社長が)そばが好き」といった想いもあり、今回の出店に至ったそうだ。

 そして、気になるのが「そば用タコ壺容器」の販売だ。淡路屋のおもうつぼ店内では、ひっぱりだこ飯デザインのコーヒーカップや植木鉢、ひっぱりだこ飯専用のフタなど各種商品も販売しているものの、そば容器に関しては「まだ先」とのこと。今後の続報を待ちたい。

客足は想定以上。そば+駅弁販売はまさに“淡路屋のおもうつぼ”?

 柳本副社長によると、淡路屋のおもうつぼは想定以上の客足で、開業時の目標はしっかりクリアしているそうだ。

 実際に商品を3~4品自腹で頼みながら20分ほど滞在していると、カウンターでは15人程度がそばを頼んでいる。また、揚げたての天ぷら盛り合わせ(「天ざる」用)がかなり美味しそうに見えたのか、次から次への注文の連鎖が相次ぎ、筆者が頼む寸前に品切れとなる事態も見られたほどだ。それにしても、想像以上に地元とおぼしき方々が多い……というより、地元の方々しかいない。

 また、駅弁販売スペースも絶えず人がいて、「近所同士のランチ会に差し入れするから」とお店の方と相談したうえで、数個を見繕ってまとめ買いする人々も。もともと明石市内での淡路屋の駅弁販売店は山陽新幹線・西明石駅構内にしかなく、「ひっぱりだこ飯は明石の名物駅弁だから知っていたけど、近くで売っていないから食べたことがない」という方もいたようで、この店で見かけて買いに来た方もいるようだ。

 こうして見ると、「鉄道を利用しなくても駅弁を買える店舗」は、なかなか需要があるようだ。外食・中食の激戦区ピオレ明石で、ここまで絶え間なく集客できているのであれば、ビジネスとしては間違いなく及第点であろう。

 淡路屋が満を持して出店したそば店「淡路屋のおもうつぼ」は、さまざまな想定外の需要を生んでいるようだ。なかなか目立つこのお店、一度訪れてみる価値はある。