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北陸・福井の泊まれるレストラン「オーベルジュほまち 三國湊」で美食ステイ! 伝統建築の町家ホテルで贅沢に過ごす
2024年3月5日 12:00
福井県坂井市の三國湊エリアに1月28日、「オーベルジュほまち 三國湊」(福井県坂井市三国町南本町3-4-39)がオープンした。周辺に点在する町家に宿泊し、レストランではフレンチのシェフ・吉野建氏がプロデュースするフランス料理を堪能できるオーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)だ。
福井県といえば3月16日の北陸新幹線の敦賀延伸で、金沢~敦賀間に6つの駅が開業する。このうち「芦原温泉駅」から三國湊まではクルマで約20分とあって、旅行者増に期待がかかるエリアだ。今回はそんなエリアにある、オーベルジュほまち 三國湊に試泊してきた。
「オーベルジュほまち 三國湊」ってどんな施設?
オーベルジュほまち 三國湊は江戸時代から明治時代にかけて北前船の交易で栄えた三國湊エリアにある。町中に溶け込むようにある古民家などをリノベーションした宿泊棟9棟・16室と、レストラン棟「タテルヨシノ 三國湊」1棟、フロント棟1棟で構成しており、町まるごと一つのオーベルジュのようになっている。
名前の由来は当地に伝わる言葉「帆待ち」から。もとは、北前船が出航に向けてよい風を待っている状態のことだが、船員が積み荷の販売や別の荷役で報酬を得ていたことから、転じて子供たちのお駄賃やご褒美の意になった。「ホテルでの滞在がお客さまへのご褒美になるよう」との願いを込めて名付けたという。
オーナーはNTT西日本や地元企業など民間11社からなる、三國湊エリアの観光まちづくりを担う「Actibaseふくい」。運営はヒューイットリゾートなどを展開する「コアグローバルマネジメント」が担当する。主なターゲットは日本の文化に興味がある国内外の富裕層で、将来的には滞在者の約半分をインバウンドにしたい考えだ。
暮らすように滞在できる町家でゆったり
9棟の宿泊棟は三國湊エリアの構成遺産の一部として点在している。宿泊棟は切妻造妻入の前に平入の表屋をつなげた「かぐら建て町家」と呼ばれる三國湊の伝統的な建築や、「平入造」「入母屋造」の建物などを改修したもの。明治初期の料亭から蔵、商家のお店まで、個性豊かなバックグラウンドを持っている。
内装は武道や書画、料亭や花街、北前船や三國祭など、さまざまなテーマに沿っており、町家の持ち主が提供したという美術品が随所に配置され、ここでしか味わえない贅沢な滞在が楽しめる。入り口や通路、庭など、福井県でしか取れないという「笏谷石(しゃくだにいし)」を利用している宿泊棟もあるので、探してみるのも楽しい。
今回泊まったのは昭和初期に建てられたという平入の町家「鱗(うろこ)」。2階建てで小さな庭もある。
客室内には長期滞在を想定して、キッチンを併設。コーヒー豆にコーヒーミル、ドリッパーと本格的なコーヒーが楽しめるセットを用意していた。
このほか、寒い冬の福井ならではの工夫として、あちこちに暖房設備を用意していた。風呂場の暖房はもちろん、洗面所には小さな暖房器具まであったので寒がりな筆者としては大変ありがたかった。
個性的な蔵ステイも
試泊会では宿泊した客室以外も見学できたが、個人的にヒットしたのが蔵に泊まれる「亀甲(きっこう)」。元豪商問屋の建物の蔵の半分を利用した部屋で、上を見上げると蔵の梁。夏は併設のウッドデッキでのんびりできる。
元豪商問屋の建物には4つの部屋に分かれているが、通りに面した「分銅(ぶんどう)」もお勧め。ロフトに登れば窓から通りを行く三國祭の山車の行列を見学できる。普段は上がることはできないが、5月の祭の時限定でハシゴが置かれて登れるようになるとのこと。特等席で約300年の伝統を持つ祭りを楽しみたい。
なお、オーベルジュほまち 三國湊では1月1日の能登半島地震を踏まえ、自治体のハザードマップにホテルの情報を加えたマップを作成。ちなみに地元の人に当時の様子を聞いてみると、震災時は揺れたものの地盤がしっかりした三國湊では大きな被害はなかったとのこと。津波については警報があったため高台に逃げたものの津波の高さは数センチで「日本海の荒波と紛れて分からなかった」程度という。
オーベルジュならではの美食に酔いしれる
オーベルジュのメインといえば、もちろん「食」。「オーベルジュほまち 三國湊」では専用のレストラン棟「タテルヨシノ 三國湊」で夕食と朝食をいただくことが可能だ。
シェフの吉野建氏はフレンチのスターシェフとして国内外に知られる人物。日本やフランスで複数のレストランをプロデュースしており、2010年にはフランス政府より農事功労章シュヴァリエを贈られているフランス料理界の巨匠だ。
そんなシェフがプロデュースした料理は福井の季節の名産品をふんだんに活用したもの。夕食は17時半スタート、20時スタートの二部制。フレンチのコースで、季節により甘エビや越前ガニ、若狭牛などさまざまな食材を活かした料理を楽しめる。
試泊の際いただいたコースはどれも満足のいく一皿だった。新鮮な甘エビを活かしたエビのテリーヌはおかわりが欲しくなるほど絶品。若狭牛のヒレステーキは非常に柔らかく口の中でとけるほど。さすが料理を前面に押し出したオーベルジュの夕食なだけある。ワインや日本酒とのペアリングも可能なので、ぜひお勧めを選びたい。
朝食は7時スタート・8時半スタートの2部制で、ブルゴーニュ地方の伝統的な卵料理「ウフアンムーレット」を中心としたセットメニュー。ウフアンムーレットというのは赤ワインのソースとともにいただくポーチドエッグのこと。パンにスープ、新鮮な野菜サラダもセットになっている。
メニューを見たときは正直「赤ワインと卵ってあうの?」と思ったが、とろとろの卵と赤ワインのソースはベストマッチ。ポーチドエッグの下にひかれたパンも旨味を吸って美味しく、のんびりとした朝食の時間を楽しめた。
なお、メニューは季節や仕入れにより変わるとのこと。行くまで「何が食べられるのか」というドキドキ感を味わうのも旅の醍醐味だ。なお、アレルギー対応は宿泊の3日前までに連絡すればOK。希望者にはベジタリアンメニューも対応可能だ。
三國湊の町歩きをのんびり楽しむ
オーベルジュほまち 三國湊のある三國湊エリアは「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」として文化庁の認定する日本遺産に認定されている。レトロな西洋建築や江戸時代から明治時代にかけての町家などからなる情緒ある町並みが残されたエリアは、のんびり歩いてまわるのがお勧めだ。
オーベルジュほまち 三國湊では3日前までの予約で地元ガイドにやる「まち歩き体験ツアー」を実施中。試泊の際はかつての花街周辺をガイドとともに散策した。
ツアーでは江戸末期に建築されたかぐら建ての商家で骨董店を営む「近藤古美術」を訪問。昭和初期までは煙草元売捌所だったというお店には、当時の資料が今も残っているほか、箪笥や器などの骨董品がずらりと並ぶ。
このほか、三國湊を代表する豪商・森田家による銀行「旧森田銀行本店」や材木商のお屋敷「旧岸名家」をはじめ、三國湊エリアにはレトロな建物が点在している。フロント棟やレストラン棟から徒歩圏内の建物がほとんどなので、ふらりと立ち寄るのもお勧めだ。
北陸新幹線の延線でアクセスがよくなる福井県。先日には観光庁が能登半島地震の影響を受けた北陸4県を支援する「北陸応援割」の詳細を発表したところだ。「オーベルジュほまち 三國湊」でレトロな港町と美味しい食事を堪能してみてはいかがだろうか。