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車中泊はじめるならキャンピングカー! イベント展示から知るバンコン・キャブコン・軽キャン・トレーラーの選び方

宿泊施設を利用するのとは違った魅力のあるクルマ旅。そのためのアイテム「キャンピングカー」を見ることで、新たな旅行を夢みるのも楽しいはず

 キャンピングカーという呼び名から、アウトドアテント泊の「キャンプ」と同じイメージを持ってしまいがちだが、もともとキャンピングカーは自宅のような快適さを旅先に持ち出したいという要望を持つ人に向けた乗り物だ。

 また、近年は犬や猫といったペットと一緒に旅行へ行くためにキャンピングカーを選ぶ人が増えているが、これもいつもどおりペットが身近にいるという環境を旅先に持ち込みたいという気持ちからのことだろう。

こちらのシート生地はペットを乗せることを前提として「ひっかき」に強い素材を使用している

 こうした王道パターンに加えて、最近は車中泊やバンライフといったクルマ旅のスタイルが広まっている。

 キャンプ好きの間でも、アウトドアでたき火や外調理を楽しみつつ、就寝はテントの代わりにクルマを利用するという人が増えていると聞く。特に最近は野生動物と人との遭遇も増えているので、「安全のために寝るのはキャンピングカー」という風潮は今後増えてくるかもしれない。

たき火や外調理を楽しむキャンプだが、家族が多いと大型のテントが必要になる。しかし、その手のテントは展開や撤収が大変になるし、雨や露で濡れたら使用後の手入れも楽ではない。そんなことからクルマをテントの代わりにする傾向もある

 このようにキャンピングカー人気は年々高まっているのだが、キャンピングカーは旅のスタイルや就寝定員ごとにさまざまなタイプがある。細かな仕様や使い勝手は、実車を見ないと分からないことも多い。

 そこで活用したいのが多くの車両が展示されるキャンピングカーショーなどのイベントだ。トラベル Watchでも2月に開催されるジャパンキャンピングカーショー(幕張メッセ)と7月の東京キャンピングカーショー(東京ビッグサイト)は紹介しているが、キャンピングカーの人気が高い現在は、毎月全国のどこかでキャンピングカーイベントが開催されている状況で、イベントの開催情報は日本RV協会が運営するJRVAイベントドットコムで調べることができる。ショッピングモールや地域の公園などを使用する地域密着型のイベントもあるので「地域名+キャンピングカー」などの文言で検索すると見つかるだろう。

 実車を見ることで内装・家具類の質感や使い勝手のチェックができるし、整備・修理などのアフターサービス、それに具体的な見積もりや納期、購入方法も販売店に直接聞けるので、自分に合うキャンピングカーがどんなものがはっきり見えてくるだろう。

 そこで本稿では、キャンピングカーの購入を考えている人向けに、その基礎知識とイベントで展示車を効率よく見て回るためのアイデアなどを紹介する。

まだ買う予定はなくてもクルマ旅に興味があるなら、キャンピングカーイベントは楽しめる場所だ

キャンピングカー代表格は「バンコンバージョン(バンコン)」

 キャンピングカーにはさまざまなタイプがあるので、イベント会場をすべてを見ていると時間がかかる。特に乗り込みがOKな車両は順番待ちができていたりするし、説明員の数も限られているので接客中の場合はそこでも待たなければならない。そこで、イベントに行く前にはサイズや就寝定員などから見てみたい車種を絞っておくこと。これだけで見学の効率はかなりよくなるはずだ。

 まずはキャンピングカーの種類を覚えたい。日本では以下の4タイプが中心で、代表格がワンボックスカーの「バンコンバージョン(バンコン)」。日本で人気があるのがこのクラスだ。ベース車は4名以上が就寝する想定であればトヨタのハイエースや日産 キャラバン、2名での就寝であれば5ナンバーサイズの商用バンである日産 NV200、トヨタ ライトエース系が主流になっている。

トヨタ ハイエースをベースにしたキャンピングカー。バンコンバージョンタイプで日本のキャンピングカーではこれが主流
ハイエースで4ナンバーなのは標準ボディ車のみ。ハイルーフ、ワイドボディは4トントラックと同じ1ナンバー登録になる。すると車検は初回のみ2年であとは1年ごと。ただ、自動車税は安い。そして高速道路料金はトラックと同じなので高くなる。たいしてキャンピングカー8ナンバー登録にすると、もとが1ナンバー車でも車検は2年、自動車税は普通車並み(少し安い)、高速道路料金は普通車と同じだ
日産 NV200ベースのキャンピングカー。通常は就寝定員が2名のものが多いが、ポップアップルーフを装備することで大人1名、もしくは子供2名が追加で寝られるようになる
コンパクトカーベースのキャンピングカーも種類は少ないがある。通期や買い物が多く、たまに車中泊をするという人に向いている

 バンコンのベース車はハードに使われることを前提とした仕事車なので耐久性が高く、パーツ代も手頃なので修理や整備費用(クルマの部分)がそれほど掛からないのも利点。車体の全高が2m以下(ハイルーフモデルを除く)という部分も扱いやすい点である。

 ただし、キャンピングカーとして見た場合は、荷室高(室内高)が約160cmほどあるハイルーフモデルが人気。理由は成人男性でも室内を立って移動するときにそれほど低くかがまなくても歩けるからだ。

ハイルーフモデルでは室内高が約160cm取れるので室内を歩いて移動するにも楽。また、荷物置き場を確保するためベッドを高めの位置に設定しても圧迫感は少ない

ひとり旅にぴったりの「軽キャンパー(軽キャン)」

 ひとり旅のユーザーを中心に人気なのが、軽貨物車をベースにした「軽キャンパー」だ。

 こちらは2名就寝ができる仕様となっているが、大人2名で寝転ぶと身体が触れるくらい近くなってしまうことが多い。それだけに軽キャンパーで2名就寝がしたい場合は展示車に寝転ばさせてもらい状況をチェックしたいところ。なお、2名で出かければ荷物も2名分あるので、その置き場が取れるかも見ておきたい。

安定した人気の軽キャンパー。ひとり旅を好む女性ユーザーも多いので、女性を意識したシンプルで清潔感のある内装に仕上げるクルマもある

 こうしたことから軽キャンパーはソロ利用をメインとする人に選ばれる傾向だが、ソロでいいとなると軽の車室は大抵が手を伸ばせば届いてしまう「ちょうどいい狭さ」になる。最近は軽キャンパーでもエアコン(クーラー)を装備するものが増えているが、ソロ利用をメインとしていればエアコンとそれを動かすための大容量ポータブルバッテリーを搭載しても、まだスペースに余裕がある。

DC12Vクーラーとポータブルバッテリー。100Ahクラスだと3~4時間ほど動かせるという
ソロ利用も多い軽キャンパーなので「ひとり旅」に絞ったモデルも発売されている。ひとりでの使用ならスペースは十分だ

自由度の高い「キャブコンバージョン(キャブコン)」

 つぎは小型トラックのシャシーにシェルと呼ばれる部屋を載せた「キャブコンバージョン(キャブコン)」だ。こちらはバンをベースにするより設計の自由度が高いので、窓や家具の配置が部屋として良好だったり、部屋のなかを大人が立って歩くことができる室内高を持っていたりする。また、シェルには防音、断熱材が入っているので車外の騒音が入りづらく、車室内のエアコンやヒーターの効果はバンコンより効きやすい傾向だという。

 このように居室部分の作りがいいキャブコンは旅行先でもキャンピングカーのなかで過ごす時間が長めだったり、部屋の居住性をよさを重視するのであれば適したタイプと言える。就寝定員は4名~6名だ。

 キャブコンの主流は、トヨタ製のトラック(ダイナ)をベースにキャンピングカー用に仕立てた「カムロード」が人気。エンジンは3リッターディーゼルターボと2リッターガソリンがあり、ディーゼルターボには4WDも設定される。

 走行性能についてはトラックなのでリアに大きいシェルを積んでいても合流などの加速はわるくないが、キャブコン全般として横風が苦手だったりカーブが続く道では横揺れが大きかったりするので、運転には多少慣れが必要かもしれない。

 キャブコンは車体が大きいイメージもあるが、最近はバンコンからの乗り換え層を中心に全長が5m以内、全幅が2m以内の「ライトキャブコン」といわれるタイプの人気が高まっている。こちらはトヨタ ライトエース系、マツダ ボンゴ、日産 NV200などがベース車となる。

 車体がわりとコンパクトなライトキャブコンは取り回しはいいが、ベース車の排気量が少ない(1.5リッター~1.6リッターあたり)ので非力さを感じてしまう場合がある。

カムロードのキャブコンバージョン車。室内をかがまず歩けるのは着替えなどでも便利。ルーフの上にかぶさる部分はバンクベッドというベッドスペース。物置としても使える
こちらもカムロードのキャブコンだがシェルのサイズが違うとこんなにイメージが変わる。長いシェルの方が人も荷物も増やせるが、その代わり重くなるので、加速性能が落ちたり横風の影響を受けやすくなるなど、走行性能面でショート版より不利になることも
軽キャンパーのキャブコン。軽キャンパーながら広い室内となるが、重量増などで走行性能は厳し目。横風が強い日も苦手だ。一般道を通ることが多く、のんびり走るのが好き人に合うだろう

けん引できるなら「キャンピングトレーラー」も

 最後はキャンピングトレーラー。こちらはけん引装置付きのけん引車を別途用意しなければならなかったり、運転に慣れが必要だったりと特殊な面はいくつかあるが、居室やベッドが広くシンクやコンロもあり、さらに簡易トレイが置けるスペースがあるなど、キャンピングカー本来の目的である「旅先でも自宅のように快適に過ごす」ための装備が揃っているのが特徴だ。

 さらに維持費や税金面でもキャンピングカーより安価で済むなどのメリットもあるので、キャンピングトレーラーを選ぶ人は増えている。なお、希少価値があるのでリセールもいいそうだ。

けん引免許不要のキャンピングトレーラーの人気が上がってきている。旅先ではトレーラーを宿泊地に残し、機動性のいいけん引車(ふつうのクルマ)だけで出かけられるのも便利
リビングモードからベッドモードへの展開。3名が就寝できるサイズだ。なお、トレーラーではシンクだけでなくコンロも装備しているのが一般的で、簡易トイレが置けるマルチスペースもある
キャンピングトレーラーは車高が乗用車同等なので乗り込みが楽という面もある。小さい子供がいたり、お年寄りが乗る場合はほかのキャンピングカーより快適に感じるだろう

寝るだけでなく「過ごす」クルマは居心地のよさもポイント

 次にキャンピングカーでの過ごし方を想像したい。現地に到着後、就寝以外で車内で過ごす時間が長い場合はリビングモードでの快適性のよさは重要。そのためキャンピングカーは限られたスペースを上手に活用する居室作りをしているが、クルマによってはリビングテーブルの足元などは狭さを感じることもあるので、気になったクルマがあれば実際に座らせてもらうといいだろう。

 あとは荷物を置くスペースの確認だ。1泊くらいの旅行であれば問題なくても連泊となると荷物は増えるし、旅先でなにかを買うこともあるので、荷物を置くスペースがあるかは重要。

 実際に聞いた話では、家族3人の利用でバンコンの購入を検討していた人が、遊び道具を持っていったり土産物の購入を考えると、バンコンでは手狭と感じて収納スペースが大きいキャブコンに変更したというケースもある。これは一例だが、荷物が増えることは誰にでもあるので、キャンピングカーは就寝定員だけでなく荷物を置くスペースのことも考えて探した方がいいだろう。

カムロードキャブコン車の荷物スペース。長期の旅行でも十分なスペースがある。バンコンの場合、ベッド下をの収納スペースにしていることが多い。展示車を見るときは家具やベッド以外に収納スペースのチェックも大事な部分

 快適に過ごすということでは居室内の冷暖房装備も大事なポイント。暖房については「FFヒーター」という装備がある。これはエンジンとは別系統の独立したヒーター機器で、燃料はクルマの燃料タンクから供給するので別途給油は不要。

 ヒーター本体は車外に取り付けるので排気は外へ排出されて一酸化炭素中毒の心配はなく、燃焼の仕方はファンヒーターと同じようなものなので音は静か。夜のキャンプ場でも問題なく使用できる。

 FFヒーターは人気のある装備なので多くのキャンピングカーに標準装備化されているが、オプション設定のクルマもある。付けるにはよけいに費用が掛かるが、冬にもクルマ旅に出かけたいと思っているならFFヒーターは装着すべき装備だ。

冬季のクルマ旅ではヒーターが不可欠。キャンピングカーには石油ファンヒーターのようなFFヒーターという装備がある。燃料はクルマの燃料タンクから取る作り。本体は床下に付き、排気は屋外へ出る。音も静か

 続いてはエアコン。いまは急速に装着率が上がっている装備という。ただ、エアコンは小型でも大きな電力を消費するので、電源としてサブバッテリーが必要になる。

 以前はサブバッテリーとして鉛バッテリーが使われていたが、最近はリチウムイオンバッテリーが主流で、さらにリチウムイオンバッテリーのなかでも発火の危険性が少ないリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが使われるようだ。なお、容量的には居室用のエアコンを長時間使いたいと思うなら200Ah以上のバッテリーが必要となる。

 ただ、オートキャンプ場やRVパークではサイトにAC100V電源があるので、それを利用すると(AC/DCコンバーター利用)停車中でもエアコンを快適に利用できるだろう。

サブバッテリーは据え置き式のほか、ポータブルバッテリーも使われる。エアコンを連続で長時間使いたければ大型のサブバッテリーが必要
オートキャンプ場やRVパークにはAC100V電源が使える電源サイトがあるので、それを使えるよう外部電源引き込みの装備もある

 ちなみに大型のキャンピングカーでは家庭用のエアコンを使ったモデルもある。確かにこれは冷えるだろうが、家庭用のエアコンや室外機を振動の多いクルマで使うのは製造メーカーの想定外と思われるので、耐久性や故障した際の保証などが受けられるかが気になるところだ。イベントでは販売側のスタッフに質問できるので、涼しいかどうか以外にこうしたことも聞いてみるといい。

家庭用のエアコンを装備するクルマもあるが故障した際の保証・対応などは要確認
キャンピングカーの電気製品といえば冷蔵庫も重要。冷蔵庫の容量や消費電力などは現車でチェックしておきたい
換気扇も大事。空気を抜くだけでなくスイッチの切り替えで外気を取り入れるようにもできるタイプがあり、窓開けと併用すると効率よく換気ができるので、換気扇の仕様もチェックしたい
キャンピングカーは夜間に十分な明るさがある室内照明が使えるところも利点なので、照明まわりもチェックしたい。照明もサブバッテリーからの電気を使うので、冷蔵庫、エアコンなどほかの電装品と同時に使った際、バッテリーがどれくらい持つかも聞いておきたいところだ
ソーラーパネルを装備しているクルマも多い。発電した電気はサブバッテリーへ蓄える仕組み。居室用エアコンを付ける際はソーラーパネルも同時に付けるのが一般的

 最後に就寝について。多くのキャンピングカーではリビングスペースにマットを敷き詰めてベッドとしている。この方法だと車内幅がベッドスペース幅となるので広々感じるが、大人が並んで寝ると隣との間隔はそれほど広くない。普段1人で寝ている人は寝にくかったりするかもしれないが、ハイエースクラスやキャブコンあれば、1人用スペースを重ねた2段ベッド仕様もあるので、そうしたクルマを選ぶのもいい。

 キャンピングカーでの旅では高速道路のPAなどで夜を明かすこともあるが、夜のPAでは大型トラックも同様に休憩していることが多い。このときに問題になるのがトラックのアイドリング音。大型トラックはエンジンを掛けたまま休憩するため、トラックが横にいる環境は結構うるさいし、休憩中に横に駐められると音で目が覚めることもある。こうした可能性があるなら、遮音性能についても調べておきたい。

普段1人で寝ているなら、独立したベッド仕様を選ぶのがいいかも。キャンピングカーンにおいて「よく寝られる」という項目はもっとも大事
キャンピングカーによくある装備のシンクだが、これは朝晩の歯磨きや顔洗いで重宝するので、小さくてもあると便利だ
外の音がうるさくてよく眠れなかった、ということもクルマ旅ではありがちななので、遮音性についても説明員に確認しておきたい。普段使いも考えているなら燃費も
キャンピングカーは中古車でも人気だが、居室部分の作りのよしあしが買い取り価格に大きな影響があるという。その見きわめ基準の1つが「製造メーカー」。評判のいいメーカーのクルマであれば売れやすいので手放すときに有利な傾向という