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アウト促進協が総会。海外旅行本格復活に向けキャンペーンやセミナー開催

2023年4月14日 実施

総会には約180人が参加した

 JATA(日本旅行業協会)のアウトバウンド促進協議会(JOTC)は4月14日、羽田空港第3ターミナルのTIAT SKY HALLで総会を開催した。

 JOTCは2017年に発足した旅行会社、観光局、大使館、航空会社、空港会社、ツアーオペレーターなど約180団体からなる協議会で、海外旅行のさらなる需要喚起をはかる「海外旅行促進プロジェクト」を主宰している。

アウトバウンド促進協議会 会長 酒井淳氏

 冒頭に登壇したJOTC会長の酒井淳氏(阪急交通社代表取締役社長)は、5月8日から新型コロナの感染法上の分類が5類になることに触れ、「ほとんど海外旅行の障壁はなくなるだろう。そのときこそ一歩前に進む、なんらかの潮目が変わっていくとき」と期待を表明。4月から開始した海外旅行促進プロジェクトについて「いろいろなキャンぺーンを1年かけて皆でやるという、今までとは少し違う取り組み。打ち上げた花火で終わらせず、1年かけてじっくりやり、成果を出していきたい」と意気込みを示した。

 そのうえで、海外旅行の振興は旅行会社だけでなく業界全体で取り組む必要があるとし、「今年は間違いなく海外旅行復活に向けた初年度になる。JOTCが進めるプロジェクトもそのきっかけになればと思っているので、引き続きご支援ご協力をお願いしたい」と参加者に呼び掛けた。

観光庁 審議官 池光崇氏

 続いて登壇した観光庁 審議官の池光崇氏は、インバウンドが回復傾向にあり、中国がほかの地域と同様の回復を見せれば、2023年の訪日外客数は2019年比約74%の2400万人超になるとの予想を示した。一方でアウトバウンドについては回復が遅く今後力を入れていくべき分野であるとし、「インバウンドとアウトバウンドは両輪ですべきもの。双方向での人的交流、ひいては世界的な経済活動の活発化をめざさなければならない」と改めて重要性を強調した。

 さらに池光氏は3月末に閣議決定した観光立国推進基本計画のなかで、2025年度にはインバウンド、アウトバウンドともに2019年の水準を上回る目標を設定したことを説明。3月15日には観光庁が「アウトバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」を発表したことに触れつつ、「大変チャレンジングな目標だが、業界の皆さんと一体となってやっていきたい。幅広い分野の人と力を合わせて盛り上げ、1日も早い正常期への回復をめざしていきたい」と話した。

一般社団法人日本旅行業協会 海外旅行推進部長 稲田正彦氏

 総会ではJATA海外旅行推進部長の稲田正彦氏が、海外旅行促進プロジェクトについて改めて説明。2023年の出国者数は1000万人前後の見込みであるとし、継続的かつ多面的にキャンペーンを実施することで、2025年の出国者数2000万人超という観光立国推進基本計画の目標達成を目指す方針を示した。

 プロジェクトでは4つのキャンペーンを実施。既報のとおり、海外旅行の意欲が高い「アーリーアダプター」をターゲットに、第1回海外旅行応援投稿キャンペーンを5月31日まで実施中だ。海外旅行先で撮影した写真とコメントをキャンペーン特設サイトから投稿すると、抽選で海外旅行や航空券などが抽選で当たるもので、現在約100件の投稿があるという。今後は旅行会社や航空会社で告知し、認知向上を目指す。

 続いて5月8日からは「現地のZ世代イチ推し!Twitter投稿」キャンペーンを実施。若者の海外旅行を後押しするキャンペーンで、海外現地で流行しているモノ・コトをTwitter投稿を通じてアピールする。

 夏休みには「夏旅Wキャンペーン」を実施。5月15日から8月31日まで実施するプレゼントキャンペーンで、タビナカ便利グッズ編、タビナカ現地特典編、旅アト賞品プレゼント編の3回に分けておこなう。詳細は5月中旬に公開する予定だ。

 さらに、5月15日から9月30日までパスポート取得費用サポートキャンペーンも行なう。7月から9月に海外旅行する人が対象で、方面ごとに観光局が協賛して費用をサポートするもの。現時点では抽選で合計3000人に8000円の電子ギフトを贈呈する予定という。まずは8月末までだが、発表時にメディアからの注目が高かったこともあり、稲田氏は第2弾についても内容は異なる可能性はあるものの検討中とした。

 このほか、同氏はJOTCのウェビナー参加者8247名を対象にしたアンケートの結果も発表。回答率は4.1%だったが、旅行会社の現場スタッフの生の声を集めることができたという。

 アンケートでは、3月13日のマスク着用緩和で予約が増えたこと、消費者が海外旅行への参加を懸念する理由は「旅行代金の高騰」や「物価高」が多いと考えられているといった結果が出た。このほか、3月以降の予約では東アジアやヨーロッパが人気で、友人や家族との旅行に加え、1人旅にハネムーナーなども増加。その一方、今後はパッケージツアーが縮小し、OTAが存在感を増すと考えるスタッフが多いことが分かったという。

7部会が方針発表、現地視察や消費者向け独自イベントも

 総会ではJOTCの7つの部会の代表者などが活動方針を説明。各部会は一部を除きコロナ禍で活動を中止していたが、今回の総会をキックオフとし、活動を活発化していく方針だ。

アウトバウンド促進協議会 海外教育旅行部会部会長 福田叙久氏(ATI 相談役)

 2020年6月に新設した海外教育旅行部会では、コロナ禍でも年5回部会を開催。昨年は夏から海外教育旅行が徐々に再開したことから、学校関係者や旅行会社の教育旅行担当者向けに、近距離方面のセミナーやトラブルシューティング事例の共有を実施。コロナ禍で海外教育旅行を実施する際に重要な手引書も策定した。

 今年度は海外教育旅行に適した国・地域について、欧米を含む長距離も含めてアピール。海外教育旅行担当者向けに業務知識のブラッシュアップセミナーを実施するほか、公立高校の海外修学旅行の補助費用について、航空運賃やホテルの値上がりを踏まえて提言する予定だ。

アウトバウンド促進協議会 クルーズ部会会長 松浦賢太郎氏(クルーズのゆたか倶楽部 代表取締役社長)

 同じく2020年6月に新設したクルーズ部会では、3か月に一度会議を実施。クルーズに対するマイナスのイメージの打破をめざし議論を続けたという。昨夏には日本客船社3社と外航客船協会、JATAが協力した初のキャンペーン「Let's Go! クルーズキャンペーン」を開催。今年度は日本国際クルーズ協議会と連携し、外国船会社も網羅したキャンペーンを実施したい考えだ。

一般社団法人日本旅行業協会 海外旅行推進部副部長 薦田祥司氏

 北中南米部会は部会長の藤原卓行氏(JTB 執行役員 仕入商品事業部長)に代わり、JATA海外旅行推進部副部長の薦田祥司氏が説明。2023年度はアウトプットをゴールに決め、旅行会社と観光局、航空会社、関連団体とのネットワーキングによる情報共有からスタートする。特に日本の旅行者とって重要なハワイに注力するほか、2026年のFIFAワールドカップがカナダ・アメリカ・メキシコ3か国の共同開催のため、先を見据えたプロモーションを実施するという。

アウトバウンド促進協議会 欧州・中東部会部会長 山川豊治氏(阪急交通社 取締役執行役員 西日本営業本部長)

 欧州・中東部会では昨年8月にフィンランド、今年の1月にエジプト・カタールに使節団を送ったところ。今年は使節団を増やすとともに、海外旅行復活に向けた第1弾として、中東ワーキンググループを設置し、オンラインセミナーを開催する。さらに、大地震で被害を受けたトルコ支援のワーキンググループ設置も検討中だ。このほか、欧州への販売促進活動も積極的に取り組む。

アウトバウンド促進協議会 東アジア部会部会長 西尾忠男氏(ジャルパック 代表取締役会長)

 東アジア部会は韓国、台湾、中国の3つのワーキンググループから構成。このうち機運醸成のため、韓国は昨年6月から活動を再開し、韓国観光公社と共同でポストコロナに向けたオプショナルツアーを企画。安心・安全・高付加価値をテーマに韓国の地方送客をはかり、共同催行できる江原道のオプショナルツアーを12月に実施した。

 台湾は1月から活動を再開して現地を視察するとともに、台湾観光局とイベントを開催して旅行会社が送客。今年の10月にも同様のイベントを開催する予定だ。このほか中国は今後の動向次第で、観光インフラの確認と視察団の派遣を検討中とした。

一般社団法人日本旅行業協会 海外旅行推進部国際センター所長 伊東和宏氏

 アジア部会は部会長の髙浦雅彦氏(近畿日本ツーリスト 代表取締役社長)に代わり、JATA海外旅行推進部国際センター所長の伊東和宏氏が説明。2023年が日本ASEAN友好協力50周年であることから、アセアンセンターや各観光局と、若者の海外交流促進を図り、教育旅行セミナーや語学研修プログラムなどを実施。航空会社のフライトの復便、新規就航の機運醸成にも取り組む。

アウトバウンド促進協議会 オセアニア・大洋州部会部会長の高橋正浩氏(日本旅行 執行役員グローバル戦略推進本部 統括副本部長)

 オセアニア・大洋州部会では、長野県で6月または7月に第11回日豪観光交流促進協議が計画されていることに言及。7月から8月にはFIFA 女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランドが開催されることから需要喚起に期待がかかるとした。活動としては5月に1回目の会議を実施。コロナ前の方針をリセットし、新しい方針やワーキンググループの設定を検討する。

一般社団法人日本旅行業協会 理事長 志村格氏

 このほか、総会の最後にはJATA理事長の志村格氏が登壇。「コロナ禍で出国需要がないと航空路線が維持できないということがよく分かったし、日本人だけなぜ海外に行かないかを皆が真剣に考えるようになった」と振り返り、観光庁の政策パッケージを「画期的なこと」と歓迎。「JATAとして、観光庁、国交省の決意とここに集まった人の180人のパッションを結び付け、JOTCを評論家ではなく具体的な成果を出す運動として維持していく」と決意を表明した。