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今後20年の航空機需要の7割超を占める単通路機の主戦場はアジア。ANAとスカイマークが737 MAXを導入

ボーイング、民間航空機市場を説明

2022年12月7日 実施

ボーイングが民間航空機市場について説明した

 ボーイングジャパンは12月7日、北東アジア市場における民間航空機市場について説明した。担当したのは民間航空機市場担当の副社長 ダレン・ハルスト(Darren Hulst)氏。

 世界の旅客機市場は、コロナ前(2019年)と比較すると、稼働している旅客機は93%、便数は80%、旅客は74%の規模まで回復している。その旅客を地域別に見ると、10月時点で欧州は84%、北米は96%という高い水準に届いている一方、アジア・オセアニアは47%と半分にも満たないが、そのアジアの内訳まで踏み込むと、中国を除くアジア太平洋は便数も81%に回復していることが分かるという。

 過去、9.11(2001年)や、リーマンショック(2008年)に端を発する世界金融危機などの状況においても、世界のGDPとRPK(有償旅客キロ:座席の販売状況を示す指標)はほぼ足踏みすることなく成長を続けてきたが、新型コロナのパンデミック(2020~2021年)では特にRPKはかつてない打撃を受けており、2022年に入ってようやくトラフィックがコロナ前の65~75%まで戻ってきている。

米国・ドイツ・中国の制限と便数の変化
地域別の旅客の回復状況(対2019年、2022年10月時点)
GDPとRPKの推移
地域別の便数の回復状況(対2019年、2022年第47週)

 ハルスト氏は、コロナ禍の3年で分かったこととして、「航空業界は回復力があるが、政府の制限の影響を強く受ける」「規制が緩和されると急速に需要が回復して、航空業界側がそれに追いつけない」という点を指摘した。特に後者は、コロナ禍で航空業界の人材が離れたことで、地上職などのオペレーションがまわらず、復便・再開したくてもできないという業界の声が実際にある。

 なお、日本市場は先行して回復した国内線に続き、今後9か月のうちに国際線も急速に回復する見込みという。北米やオセアニア、中東などはコロナ前相当の回復が予想されており、次いで中国を除くアジア、欧州という順になっている。

国内では全国旅行支援、海外に向けては水際の緩和を行なった
2023年半ばまでの日本市場の見通し

 ボーイングは定期的に「今後20年間の航空機需要」を公開しているが、ハルスト氏は2022年~2041年の見通しとして、民間航空機は今後20年で4万1170機が必要になり、そのうち単通路機が75%(3万880機)を占めるほか、双通路機は18%(7230機)、リージョナルジェットが5%(2120機)、貨物専用機が2%(940機)と説明した(ただしAPACは中国を除く)。

「エアラインはコストが安く、高い機能を持つ航空機を求めることがコロナ禍で分かった。ボーイングは長期的な戦略で737型機、787型機、777型機に注力していく」という。

今後20年間の航空機需要

 単通路機では、2020年12月に737 MAXファミリーの運航が再開しており、現在780機超の機体が運航中で、49社が導入を済ませている。累計フライトは270万時間超。

 この2年間で1361機を販売、561機が納入済み。日本人に身近なところでは、ANAが737-8型機を30機(確定20機、オプション10機)の最終購入契約をしたほか、スカイマークも6機の737-8型機のリース契約を結んでおり、さらに6機の737-8型機と737-10型機の発注に向けてボーイングと合意している。

 ハルスト氏は、航空会社の92%が2つ以上のサイズの単通路機(737-8型機と737-9型機など)を保有していて、目下のトレンドは737-10型機、737-7型機の受注が増えてきていることで、737 MAXファミリーはアジアの航空会社のなかで重要な位置を占めると指摘。事実、3割がアジアのエアラインからの受注だという。

 氏は説明のなかで繰り返し「Versatility(多用途性、汎用性)」と述べており、旅客機を(737 MAXのような)ファミリーで導入することによる共通化などがエアラインのコスト(乗務員の訓練や機体のメンテナンスなど)に寄与するとして、「今後も世界の経済発展には航空機が欠かせない」と話した。

737 MAXファミリーは日本を含むアジアが主戦場になる
ワイドボディ機市場の見通し