ニュース
JR西日本とソフトバンク、実証実験中の「自動運転・隊列走行BRT」を報道公開
2022年10月18日 00:00
- 2022年10月17日 報道公開
JR西日本(西日本旅客鉄道)とソフトバンクは、滋賀県野洲市の専用テストコースで実施している「自動運転・隊列走行BRT」の実証実験の様子を報道関係者向けに公開した。
両社では、連節バス、大型バス、小型バスの3台が自動運転で隊列走行する実証実験を2021年10月にスタート。2020年代半ばの実用化を目指して開発・検証を実施している。
今回の報道公開では、テストコース内を自動運転で隊列走行する3台の様子が確認できた。
テストコースの総延長は約1.1kmだが、今回は両端までを利用せず、途中の広めのスペースで折り返す形でコース内を往復していた。自動運転については、最終的には最高速度60km/hでの走行を目指しているが、コースを短縮して直線部分が短くなっていることもあり、10~20mほどの車間を保った状態で最高速度30km/hほどを出しての走行となった。
3台のバスには、LiDAR、カメラ、GPS(GNSS)、磁気マーカーなど、さまざまなセンサーが搭載されており、さらに車車間通信も活用して車速をコントロールしている。今回のデモでは主にGPSを使用した自動運転が用いられているとのことで、導入コストやメンテナンスコストも考え、さまざまな組み合わせを検証していくのも実証実験の目的の1つとされる。
JR西日本 鉄道本部 イノベーション本部 次世代モビリティ開発 担当課長の不破邦博氏によれば、BRTを自動運転で隊列走行させることで、鉄道とバスの中間の輸送力の実現を目指している。異なる路線を走るバスが幹線道路では隊列で走ることにより、柔軟な運用が可能となり、少ない運転手で運行できることから、昨今の人材難のような課題の解決にも繋げたいという。
同氏は、目指す将来像として、「BRTや自動運転技術単体というよりは、まちづくりとどう連携し、持続可能なモビリティサービスを実現するかという点を重要視している」と語る。
今回は、連節バス、大型バス、小型バスの3台を連ねる形での隊列走行が披露されたが、システムとしては最大で4台までの車両をさまざまな組み合わせで運行することができるとのこと。
ソフトバンク 鉄道事業推進本部 事業企画統括部 担当部長の渡辺健二氏によると、実用化した際には先頭車両に運転手が1名乗り込み、後続車両には安全運行をサポートするスタッフが乗車するような形での運行を想定しているとのこと。
そうした運用を見越して、後続車両のドアは先頭車の運転台を操作することで一斉に開閉できるほか、先頭車両から後続車両に向けて車内アナウンスを行なうこともできるようになっている。
運転台のまわりには多数のタブレットやディスプレイが設置されており、各車両に設置されたカメラの映像が確認できるようになっている。運転手はそれを見て安全確認を行ないながら車両を運行することになるが、多くの映像を運転手1人で確認するには負荷が大きく、AIなどの技術も活用しながら、いかに安全な運行を実現していくことも課題の1つになる。
なお、テストコース内には一般道との交差を想定し、信号機も設置されているが、この日は稼働していなかった。実用化の際には、バスと交通システムが通信し、BRT側の走行を優先するように信号機を制御するとのことで、このあたりは鉄道の踏切と同様だ。
デモの終了後には、JR西日本 鉄道本部副本部長 鉄道本部イノベーション本部長の久保田修司氏とソフトバンク 執行役員 法人事業統括付(鉄道事業推進本部担当)の永田稔雄氏が揃って囲み取材に応じた。
今回の実証実験の位置づけを問われ、永田氏は「ソフトバンクとしてBeyond Carrierという成長戦略を描いている。その中で各産業界やさまざまな分野の課題解決をITやイノベーション、DXによって解決していこうという戦略をとっています。今回のJR西日本さんとのBRTの隊列走行というのは、地域交通の課題を解決していく上で意味がある」とコメント。
久保田氏は「先週末金曜日に鉄道150周年を迎え、これからもしっかり育てていく、経営していくことはもちろん、人口減少や少子高齢化といった社会課題に対して、鉄道だけで太刀打ちできるかというと、そうではないだろう、と。おそらく、その地域に合ったようなモビリティサービスが望まれ、そういう中で(BRTでの隊列走行が)選択肢の1つになると思う」と語った。