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古い建物を活かした宿泊施設「NIPPONIA 秩父 門前町」を見てきた。レトロな風情の客室、地産地消の創作フレンチ楽しめる
2022年8月1日 11:00
- 2022年8月5日 開業
西武リアルティソリューションズ、秩父地域おもてなし観光公社、NOTE、三井住友ファイナンス&リースが共同出資する「秩父まちづくり」は、西武秩父駅周辺の古い建物3棟を改修した分散型宿泊施設「NIPPONIA 秩父 門前町」を8月5日に開業する。本稿では、開業に先立ち開催された内覧会の模様をお伝えする。
NIPPONIA 秩父 門前町は、滞在を通じて地元の歴史や文化に浸ってもらうことで、秩父エリアの賑わい創出と持続的な地域活性化を目指す宿泊施設。築約100年の「マル十薬局」を改修したフロント棟「MARUJU棟」と、秩父神社参道の番場通りに面する「小池煙草店」と「宮谷履物店」を改修した「KOIKE・MIYATANI棟」の2か所で構成されている。
どちらも西武鉄道の西武秩父駅や秩父鉄道の秩父駅、御花畑駅から徒歩圏内にあり、秩父神社もほど近い。
蔵にも宿泊できるメインの「MARUJU棟」
MARUJU棟の2階建ての主屋には3つの客室と創作フレンチ「Restaurant MARUJU」が入る。奥には離れと蔵の客室が全5室あり、こちらも宿泊することができる。建物の趣をそのまま残した内装デザインになっていて、どこか懐かしい落ち着いた空間が広がる。すべての部屋は構造が大きく異なり、それぞれの風情を楽しめる。寝室はツインベッドで、檜の洗面と浴室は全室共通だ。
蔵と離れに宿泊できるのは、なかなか経験できない醍醐味といえるだろう。どちらもリビングは吹き抜けで、暗めの落ち着ける空間となっている。
昭和レトロな雰囲気が楽しめる「KOIKE・MIYATANI棟」
「KOIKE・MIYATANI棟」は秩父神社参道の番場通りに面し、登録有形文化財にもなっている「小池煙草店」と「宮谷履物店」を改修して造られた。1階に2室、2階に1室がある。昭和レトロな窓細工や障子などを見ることができ、レトロな雰囲気を楽しめる。1階には「Cafe de KOIKE」も併設している(8月中旬開業予定)。
内覧会では、MARUJU棟の「Restaurant MARUJU」で提供される創作フレンチの夏メニューも紹介された。料理は、西武鉄道の旅するレストラン「52席の至福」を監修した、フランス家庭料理レストラン「モルソー」の秋元さくらシェフが監修している。3か月ごとに変わるメニューには地元・秩父産の食材を豊富に取り入れ、秩父の職人が作った食器を使うなど、地産地消にこだわっている。
宿泊予約は、専用予約サイトからすでに受付が始まっている。1泊1~2名の夕朝食付きプランは1室あたり3万6479円~(税抜)。そのほか素泊まりプランもある。Wi-Fi接続は全館無料で、西武秩父駅直結の温泉施設「祭の湯」の入浴券が付いている。
残念ながら予約時に客室を指定することはできないが、「客室それぞれに特徴があるので、今後要望があれば予約時に指定できるようにも考えていきたい」(西武リアルティソリューションズ 代表取締役社長 齊藤朝秀氏)という。
「明治~昭和の古きよき建物に込められた想いや風情を味わっていただく」と西武HD後藤社長
オープニングセレモニーでは、まず西武ホールディングス 代表取締役社長 後藤高志氏が登壇。今回の出資者名としては、西武リアルティソリューションズ(旧西武プロパティーズ)の会長となる。冒頭、西武グループとしてはじめて古民家再生ホテル事業に参入することを説明し、経営主体「秩父まちづくり」の共同出資者であるNOTE、秩父地域おもてなし観光公社、三井住友ファイナンス&リースの3事業者をはじめ、施設運営(MA)のNKB、金融機関、地元地域の協力によって実現できたことに感謝を述べた。
さらに「秩父は大好きな地域。特急ラビューに乗って秩父に近づいてくる長い正丸トンネルを通って武甲山を望み、秩父の街並みが見えたときには何ともいえない心の安らぎを感じる」と秩父愛を語り、秩父出身の落語家・林家大平さんの大ファンあることから、笑点風に「秩父とかけてスルメイカと解く。その心は……、かめばかむほど味が出る」と謎かけまで披露し、会場を沸かせていた。
そして「さまざまな行動変容が求められる現在において、新しいものだけではなく古きよき遺産にも注目し、さらに磨きをかけて秩父のさらなる魅力向上に取り組んでいく。明治から昭和にかけて活躍した立派な建物をしっかりと守り、建物に込められた想いや風情を地域住民や観光にお越しの方々に味わっていただく。歴史と伝統あるこの秩父地域で皆さまと共存・共栄し、さらなる発展を望んで参りたい」と話した。
続いてNOTE 代表取締役社長/秩父まちづくり 代表取締役の藤原岳史氏が登壇し、「この秩父における新しい観光まちづくりのスタートを切ることだと思っている。宿泊施設ですが、ホテルでも旅館でもなく、有名な観光施設でもインスタ映えスポットでもない。この地域、秩父そのものを見ていただきたい。滞在して、くつろいでいるときに、ふとここは自分の家なんじゃないか、ここに住んでるんじゃないかと錯覚するような、そういった滞在になっていただきたい。秩父の魂やここにしかない暮らしや文化を体に染み込ませる空間を作りたい。今日ですべて完成ではなく、一緒に作っていき、1泊するだけではなくていずれは秩父に住んでいただけるような、そういった事業にしていきたい」と挨拶した。
三井住友ファイナンス&リース 代表取締役専務執行役員 黒田 淳氏は、「全国で数多くの古民家を活性化するプロジェクトに携わってきたがほとんどが施設リースやファイナンスの部分。運営会社に資本参加もしくは事業参加するのは福岡と奈良の2つ、今回の秩父で第3弾となる。地元住民から感じられる秩父愛は大変強いものがあり、秩父の文化や歴史、自然の資源を活かした持続的なまちづくりに少しでも貢献したい」と述べた。
最後に、秩父地域おもてなし観光公社会長を兼任する秩父市長の北堀 篤氏が登壇。「コロナ前の市内観光客数は年間600万人、秩父地域全体では1000万人に手が届くところだった。現在の観光産業は大変な状況にあるが、西武鉄道なくして秩父地域の発展はないと思っている。アフターコロナに向け、特に観光関連産業で地域と連携した取り組みを進めていきたい。本プロジェクトは第1期としての位置づけで、今後もエリアを広げ、持続的な地域の活性化を目指すとのことは、地域の観光産業として期待を持てる取り組みだと思っている。商店街を昔の昭和レトロ、あるいは明治大正の風情が残るようなまちづくりをしていきたい。歩く楽しみが持てるまちづくりを支援し、連携していきたい」と祝辞を述べた。
NIPPONIA 秩父 門前町
所在地:
【MARUJU棟】埼玉県秩父市宮側町17-5
【KOIKE・MIYATANI棟】埼玉県秩父市番場町17-10
最寄り駅: 西武鉄道 西武秩父駅/秩父鉄道 秩父駅、御花畑駅
予約方法: 予約専用サイトまたはメールから
客室数: 8室
チェックイン/アウト: 15時/11時