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ハワイは“マラマ”の考えに共感できる日本の旅行者をいつでも歓迎。日本旅行業協会、現地議員らと観光再開に向け会談
2022年4月21日 06:00
- 2022年4月4日(現地時間) 実施
JATA(日本旅行業協会)は4月3日~4月7日にかけて、来るべき海外募集型・受注型企画旅行再開に向けた準備の一環として、ハワイに海外視察団を派遣した。
視察先においては、国や地域の観光局、サプライヤーとのプロモーション活動に関する協議をはじめ、海外旅行ガイドライン(運用手引書を含む)の適合性確認、ウィズコロナ時代の仕入・オペレーション事情の把握や観光素材開拓などを行なう。ハワイは日本人にとって海外旅行のシンボリックな行き先であることから、今回の海外視察団派遣の第1弾として選ばれた。
視察団はJATA会長である髙橋広行氏を団長として、2021年度JATAアウトバウンド促進協議会 北中南米部会ハワイ・サブ部会メンバー旅行会社8社とハワイ路線を就航している日米航空会社5社の執行役員や担当部門長ら21名が参加した。なお、ハワイでは3月26日以降、マスク着用の義務を解除している。
上院議長と下院議長との会議では相思相愛の関係であることを確認
会議はハワイコンベンションセンターで午前と午後に分かれて行なわれ、午前の部ではハワイ州観光局の本局であるハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)の局長兼CEOであるジョン・デ・フリーズ氏、ハワイ州上院議長であるロナルド・コウチ氏、下院議長であるスコット・サイキ氏らに加え、日本国総領事館の総領事である青木豊氏が参加した。スコット・サイキ下院議長は「とっておきのアロハシャツを着てまいりました」とゴジラが描かれた自身のアロハシャツを指して一同の笑いを誘うなど、会議は和やかに始まった。
冒頭では団長である髙橋会長が新型コロナウイルスの影響でハワイへ送客できていないことを詫び、改めてハワイは日本にとっての海外旅行先の象徴的な存在であることを話した。
それに対し、ジョン・デ・フリーズ局長は「本当にこの機会をハワイの私どももずっと長い間心待ちにしておりました。皆さんとこのような場所に集まってお話を聞いて、もうトンネルの終わりに来ている、光が見えてきている、というのを肌で感じて実感させていただきました」と答えたのに続き、ロナルド・コウチ上院議長も「謝罪など必要ありません。それよりもお互いに手を携え、こうやって協力して理解しながら、成功に向かってともに歩んでいくということが大切かと思います」と視察団の訪問を歓迎した。
ジョン・デ・フリーズ局長はハワイ側も日本からの観光客を心待ちにしているとし、「日本からのお客さまは常に尊敬の気持ちを持って、ハワイの人々、そしてハワイの自然資源に対して接していただいてると思っています。残念ながら現在ハワイに来ていただいてる方は、アメリカ本土もしくはカナダの方が多いのですが、こういった旅行者の方々は日本やアジアからのゲストほど消費してくれるわけではありません」と現状を説明した。
ほか、ハワイ州と福岡県、カウアイ群と守山市(滋賀県)が姉妹提携していることや、カウアイ島が周防大島町と姉妹島として交流が盛んなことなど、日本各地とも結び付きが強いことを紹介した。
スコット・サイキ下院議長もハワイと日本の関係は観光を通した重要な外交であるとし、「その観光という外交を通じて、より強い絆関係を築いていくことができると思っています。こちらもこれまでクローズされていた観光ツーリズムを再開するというのは決して容易なことではないと理解しているので、私どもハワイ側でもできる限りのお手伝いをさせていただきます」とハワイ側の姿勢がウエルカムであることを重ねてアピールした。
そしてハワイでは現在、アロハ精神と並んで重要な考え方である「マラマ」について、ジョン・デ・フリーズ局長が説明した。マラマには“守っていく”や“大切にしていく”といった意味合いがあり、「まずは家族、そして自分の生まれ育った場所に対してはもちろんのこと、それ以外にも広義で自然を大切にするということが含まれています。そして今後、私どもの関係が築かれていくビジネスの関係でもマラマの心を大切にしていきたいと思っております」と、ハワイの観光業における根底にある考えを日本側の参加者に伝えた。
JATAからはハワイ観光におけるこれからの施策を説明
JATA側からは今回伝える点として、海外渡航の再開ロードマップ、新しい海外旅行ガイドライン&運用マニュアル、今後の目標数値、復活のためのプロモーション活動、責任ある観光を実践するといった5つの項目を説明した。
海外渡航の再開に向けたロードマップについては、アメリカへの渡航は3回目のワクチン接種が完了していることを条件に、日本帰国後の隔離期間の撤廃、外務省の感染症危険レベルが2に引き下げられたことによる日本の水際対策の緩和を報告。JATA会員旅行会社は自主規制として危険レベルは2もしくは1の状態でないと企画旅行を行なわないと規定しているので、これは大きな前進であることを説明した。
一方、1日の入国者数の上限が1万人に制限されていることが現在の課題になっており、コロナ前の2019年は1日換算でインバウンドとアウトバウンド合わせて約14万人の入国者数がいたことからも大きなギャップになっていることも伝えた。
日本の多数の産業界から1日の入国者数上限の撤廃を日本政府に対して強く要請していることに加え、3回目のワクチン接種率の上昇と経口薬の普及もあり、6月までにはさらに緩和が進んでいくことに期待していると述べた。ハワイへのツアーについては、6月までにハワイへの企画旅行が再開し、7月以降には確かな実績として現われて、10月以降はコロナ前の2019年と同じ状況に戻ることを予測し、そのような結果になるよう日本政府に対して働きかけていくと説明した。
目標数値については、今回参加している旅行会社、航空会社からのヒアリングをもとに検証した2022年、2023年の2年間の目標値を公表した。
渡航者数に関しては2022年では2019年比40%の60万人強、2023年では2019年とほぼ同数の150万人強を目標に設定。消費額に関しては1名1日当りの消費額が265ドル程度を目標としている。数値達成は容易ではないが、ハワイにおける日本市場のプレゼンス維持に向けてプロモーション活動も強化すると伝えた。
前述したプロモーション活動についても課題と方向性を説明した。現在は日本の厳しい水際対策を“江戸時代の鎖国政策の再来”と各国から揶揄されているとしつつも、国内移動も自粛している日本人特有のメンタリティに対して理解を求めた。しかしその結果、パスポート取得率は20%を割り、ほとんどの日本人が海外に行ける状況になっていない現状も紹介した。
それを改善すべく、第1段階は海外旅行全体の需要を創出するための活動を行ない、「海外旅行に行けますよ」と背中を後押しするようなキャンペーンを主にデジタル、SNSを使って実施する。そして、第2段階はハワイに特化した需要を促進する活動を行なう予定になっている。継続的なプロモーション活動を行なうことで、海外旅行に行くことを受容する、後押しするような社会の雰囲気を醸成したいと説明した。
ディスカッションでは、1日の入国者数の緩和について、上限の緩和か撤廃を求める航空会社と、情勢を鑑みて適切にコントロールされているとする外務省がお互いの立場から意見交換を行なった。
ハワイ側からは、コロナの罹患率や入院率の低さ、ワクチン接種率の高さ、最先端技術を持った医療施設による治療体制など、水際対策はアメリカ本土とは違った形で奏功していることを挙げ、ハワイとアメリカ本土を一括りに捉えないよう日本政府に理解してもらいたいと要望した。
ハワイ州の各郡長とは今後に対しての意見交換
午後の会議では、ホノルル市長であるリック・ブランジャルディ氏、ハワイ郡長のミッチ・ロス氏、マウイ郡長のマイク・ビクトリーノ氏が来場し、午前の会議に続いてジョン・デ・フリーズ局長も参加した。
ミッチ・ロス郡長が「私は名古屋に3年ほど住んでいましたが全然日本語しゃべれません」と日本語であいさつして会場を爆笑の渦に巻き込むなど、フレンドリーな雰囲気で始まった。ジョン・デ・フリーズ局長が、午前の会議で議会から日本へのサポートを約束していただいたこと、日本とハワイとの関係は長年にわたって築かれてきたもので、今後の展開についての感覚もシェアしてもらったことを3氏に説明した。また、同じくJATAからのプレゼンテーションも行なわれた。
そのあとのディスカッションは、ハワイ側や日本側から多くの質問が飛び出して活況な時間となった。今後の具体的なエアラインの運航状況、ハワイ島のコナへの直行便の復活に関して質問が出ると、JALがコナへは可能な限り早く復活させたいとし、7月からホノルル~東京(羽田・成田)は週20便に増やし、ホノルル~大阪は7月は往復3便(14日、22日、30日)だが8月からは増便する予定で、利用客が見込まれるようなら機材の大型化や臨時便の投入も考えていると答えた。
ハワイは観光地でありながらアメリカでも2番目に安全な場所であることを日本側に伝える
アメリカ本土からがそうであったように、観光機運の高まりによって旅行需要が伸びた際への準備体制に関する質問については、日本の感染症危険レベルが2に下がったのでパッケージツアーの作成を各社が一斉に始めているところで、夏前にはどこも出揃うだろうと伝えていた。
それに関して、ツアー造成で客室を押さえる際に日本マーケットは忘れられていないだろうかという日本側の質問に対しては、ホテル側は日本のツーリストを忘れることなく、心待ちにしているとハワイ側は返答。その理由として、マラマという考え方に当てはめたとき、ハワイに対して尊敬の念を持ってハワイを楽しんでいただける姿勢はツーリストの模範とも言える存在で、それはホスピタリティ業界にとって非常によいお客さまであることから、忘れられているかもしれないという心配はまったくの無用であることを伝えた。
また、「もし現地でコロナにかかっても大丈夫だろうか。重い場合は入院できるのだろうか」という日本人ツーリストが考える懸案事項をハワイ側に伝えると、現状では落ち着きを取り戻しており、感染者数、入院者数も少なく推移していて、アメリカのなかでもトップ2に入るくらい安全な場所であることを説明。パンデミックが始まって25か月ほど経過したが、その間の「セーフ・トラベルズ・プログラム」中に訪れた観光客は680万人に上り、そのなかで感染して具合がわるくなって病院で治療を受けた人は1000人ほどいるが、入院した人はゼロであることも紹介した。
ハワイにおける感染者は圧倒的に住民の方が多く、その理由としてホームパーティや教会での参拝などでクラスターが発生している事例がパターンであるとしている。このような理由からハワイ側は「観光客の方に来ていただくということに関しては、自信を持って安全だと言えると思います」と力強く返答し、逆に日本には姉妹提携している都市が多くあるので、まずその方たちに訪れてもらって「ハワイに対する不安を払拭してもらえないでしょうか?」という提案を日本側に伝えた。