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ジェットスター、JALマイルをバウチャーに交換開始など10周年の事業戦略。新型機A321LRは7月1日運航開始

2022年4月14日 実施

ジェットスター・ジャパンは10周年を迎えるにあたり、今後の事業戦略を発表した

  ジェットスター・ジャパンは4月14日、事業戦略発表会を都内で開催した。冒頭では、代表取締役社長の片岡優氏が就航してから10年目を迎える2022年までの業績を振り返った。

 同社は2012年7月3日に就航し、2022年3月末までに累計3935万人の乗客を運んできた。首都圏初のLCCとして誕生し、フルサービスキャリアと競合を起こすことで航空需要が伸び悩むのではないかとささやかれたこともあったが、他社も含めた航空需要は増加の一途をたどり、「新たな航空需要の創出に貢献できたと考えております」と評価した。

 ベースである成田空港は同社就航後、利用者数が3.87倍に伸びたことを筆頭に、新千歳空港は同28.3%増、松山空港は26.3%増、大分空港は21.8%増と、各地の空港でも飛躍的に成長していることを紹介した。

ジェットスター・ジャパン株式会社 代表取締役社長 片岡優氏
就航してから現在までの搭乗実績
空港利用者数も軒並み増加

 順調に業績を伸ばしてきた同社であるが、2020年3月からは新型コロナウイルスが猛威を振るうことで減便を強いられ、ここ2年ばかりは「ずっと耐えてきました」と片岡氏が繰り返し語るように、厳しい状況であったことを説明した。

 しかし、第4波が収束したあたりから需要の回復が見られるようになり、年末年始の搭乗率は好調に推移し、直近の春休み期間である3月は84%を記録している。好調な需要増を受けて、4月の運航率はもとのスケジュールに対して98.9%と、ほぼ減便なしで運航しているという。この流れは続くと予想されることから、GWも計画どおりの運航スケジュールになる予定だ。

現在は運航便数も回復傾向にある
「飛べ飛べエビバディ!」をキャッチフレーズに事業を進める

 そして需要回復期にある現在、新たな施策として、機材の強化、成田空港の機能拡充、JALとの連携といった3本の柱を立てて取り組むことを明かした。

 1つ目の機材は、すでに発表しているエアバス A321neo(LR)型機の投入だ。A320ceo型機よりも若干大きめの機体であり、座席数や搭載可能なコンテナ数が増えるメリットに加え、燃費効率がA321ceo型機に比べて約15%向上しており、環境面への配慮もなされている。

 カラーリングも変更し、同社のコーポレートカラーであるオレンジを機体下部から尾翼にかけてさらに大きく目立つような外観にする。新しい塗装システムを採用することで、塗料の重量を最大30%削減している点も特徴になっている。

 A321LRの1号機は7月1日に就航する予定で、成田~新千歳/福岡線で1日最大6便を運航する。現在、A321LRの導入は3機を予定しており、2号機は年内、3号機は来年になる予定だ。

7月1日から新たに導入するエアバス A321LR型機
カラーリングを今までとは一新する
A320ceoとA321LRの比較
1号機の運航ダイヤ
就航記念として成田発着周遊フライトを6月30日に行なう

 成田空港の機能拡充については、同社が使用している第3ターミナルが第2ターミナルの方へ拡張されることにより、第2ターミナルからの移動距離が現在の500mから300mになることを説明。加えて、フロア面積が約1.5倍になり、自動チェックイン機は16台から36台、自動手荷物預け機も8台から24台に増強されることで、利用客の利便性はかなり高くなるとしている。

 こちらの施設は4月21日から運用が始まる。このほか、コンタクトレス化として搭乗手続きのセルフサービス化をさらに強化することで、時代に合った非接触のサービスも推進していく。

第3ターミナルの拡張強化により利便性が向上
コンタクトレス化を引き続き推進していく

 JALとの連携については、CCO代行 兼 コマーシャル本部長の阿部元久氏が説明した。JALマイルとの提携をさらに強化するもので、1つはJALマイルでClub Jetstarに入会・更新が可能になっており、同社とJALをよく利用する乗客にとっては大きなメリットになる。

 そして、JALマイルを同社の運賃や座席指定・手荷物料金に使えるジェットスターフライトバウチャーに交換することも可能で、1万マイル単位では1マイル=1.5円分になるなどお得度は高い(1000マイル単位は1マイル=1.0円分)。この2点は5月9日以降開始予定になっている。

 3つ目は同社を利用した際のJALのマイル積算率が25%から30%に向上すること、4つ目は同社の国内線特典航空券の引き換えに必要なJALマイルがこれまでより500マイル少なく済むことだ。こちらの2点は、6月1日搭乗分、6月1日申し込み分から適用する。

ジェットスター・ジャパン株式会社 CCO代行 兼 コマーシャル本部長 阿部元久氏
JALとのパートナーシップを強化し、JALマイルがお得に使えるシーンが増える

 同社は7月3日で10周年を迎えるが、今後の中長期的な取り組みについては、執行役員 構造改革室長、人事・IT統括の田中正和氏が説明した。

 厳しかったこの2年を振り返り、環境変化に強い財務基盤を築くには事業の多角化は必要であるとしたうえで、まずは貨物便の運航に携わることで新たな収入源を確保したいとしている。具体的に挙げたのは、ヤマトホールディングスとJALが提携して進めている2024年に運航予定の貨物専用便による輸送ビジネスへの参画だ。同社は運航会社としてこのプロジェクトに加わる。

 昨今はSDGsも企業が活動するうえで重要なポイントになっており、同社も積極的に関わっていく方針を打ち出している。その内容は、事業そのものから取り組む地域活性化、地域交流、次世代育成プログラムの実施を推進していくとし、それに加え、二酸化炭素の削減、D&Iの推進、アクセシビリティの向上で持続可能な世界の構築に貢献したいとしている。

 最後に、人材の強化も重要であることを説明した。今後を見据えて、パイロットの採用を最近開始し、整備士も継続的な採用を進めているとのことだ。また、採用を控えていたCAについても近日中に採用を再開する予定であると明かした。加えて、新たなチャレンジに向けて間接部門のスタッフも随時採用していく方針であり、今後の成長に向けて新しい力を積極的に迎えたいと話した。

ジェットスター・ジャパン株式会社 執行役員 構造改革室長、人事・IT統括 田中正和氏
ヤマトホールディングスとJALが計画している貨物専用便に運航会社として参画する
人材の積極採用を開始し、人事制度の改革により育成やキャリア形成、多様化を推進する