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エアバスと川崎重工、水素の利用促進調査で協力。「水素燃料はカーボンニュートラルへの重要な選択肢」

2022年4月12日 発表

エアバス・ジャパンと川崎重工業は「水素の利用促進調査で協力する」と覚書を締結

 エアバス・ジャパンと川崎重工業は4月12日、水素社会の実現に向けて協働することを発表し、覚書を締結した。両社は今後「水素の生産から空港への輸送、航空機への補給まで、さまざまな段階における水素サプライチェーンの構築を調査する」とした。

 覚書締結の調印式には、エアバスのノースアジア地域代表兼エアバス・ジャパン 代表取締役社長のステファン・ジヌー氏と、川崎重工業 執行役員・水素戦略本部副本部長の西村元彦氏が出席。

 会見でエアバスのジヌー氏は、「パートナーシップ締結によって、今後は水素の供給網、インフラ整備、航空機への補給についての調査と水素を動力とした、民間航空機の社会実装を目指す」とし、「航空業界のCO2排出実質ゼロの実現のために、業界の枠を越えた取り組みが必要。エアバスは、航空会社、空港、エネルギー市場の技術専門家などすべての関係者と積極的に協力し、航空業界の脱炭素を促進していく。2050年までに航空機の運航におけるCO2排出実質ゼロ、そして脱炭素社会を実現するという政府の取り組みを加速、促進する。合成燃料や民間航空機の主要動力源として水素を利用することは、温暖化に対する航空機の影響を大幅に削減する可能性があると確信している」とした。

 エアバスは2020年9月に「2035年までに水素を動力としたゼロエミッション旅客機の実用化を目指す」と発表しており、ジヌー氏は「普及には水素インフラ構築が必須」で、今回の川崎重工業との協働により、実現化を加速させたい思いを述べた。実用化する航空機については「短距離、中距離を飛ぶ小型機を想定している」とした。

エアバス ノースアジア地域代表兼エアバス・ジャパン株式会社代 代表取締役社長 ステファン・ジヌー氏

 川崎重工業の西村氏は、水素燃料について「世界がカーボンニュートラルを目指すなか、再生可能エネルギーとともに水素エネルギーの導入が必須だというのが共通認識。使用時にCO2を排出しない究極のクリーンエネルギーである水素は、持続可能な燃料として最適」と述べ、「旅客航空機は電動化が困難な輸送機の典型であり、水素燃料はカーボンニュートラルへの重要な選択肢」とした。

 川崎重工業は、水素の液化、運搬、そして受入基地までの貯蔵および輸送のインフラ整備を主に担っており、水素市場に向けたサプライチェーンの構築と拡大に向けて、先進技術の見通しを提供し、さらに対象空港への水素供給に向けたインフラ整備を構築するとしている。

「空港は航空機、鉄道、長距離バス、トラック、旅客船などが集まり、水素供給地の一大集積地、つまりハブとなる。カーボンニュートラルの重要な拠点となることが期待されている」と述べた。拠点となる空港については「まだ未定決」としているが、国土交通省が進める「カーボンニュートラルエアポート」において、羽田空港、セントレア(中部)、関西空港、神戸空港が水素利用に手を挙げており「今後決まってくる話ではないか」とした。

 両社は「専門分野における知見を活かしながら、水素がもたらす潜在的な機会を明確にし、航空業界の脱炭素化を支援する」とし、調査期間は1年を予定している。

川崎重工業株式会社 執行役員・水素戦略本部副本部長 西村元彦氏
覚書を締結、握手する川崎重工業 西村元彦氏とエアバス ステファン・ジヌー氏。両社は「航空機の水素利用に必要な政策提言と課題への取り組みに向けたロードマップを共同で作成する」とした