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顔パスで国際線に乗れるFace Express、空港到着から機内までの4ステップを解説
成田・羽田で実証実験がスタート
2021年4月14日 13:21
- 2021年4月13日 公開
NAA(成田国際空港)とTIAT(東京国際空港ターミナル)は、NECの顔認証技術を使った搭乗手続き「Face Express」の実証実験を、成田空港と羽田空港で4月13日に開始した。その初日、成田空港第2ターミナルで、Face Expressを利用する様子が報道公開された。
Face Expressは、チェックインカウンター付近に設置している自動チェックイン機と自動手荷物預け機、そして保安検査場入り口の進入ゲート、搭乗口の自動搭乗ゲートなどに顔認証機能を追加。チェックイン時に搭乗券・パスポートの情報を個人の顔と紐付けることで、各ポイントで搭乗券・パスポートを取り出すことなく「顔パス」で通過できるようになる仕組みだ。
成田では、第1ターミナル 南ウイングのCカウンターと、第2ターミナル KカウンターにFace Express対応の自動チェックイン機と自動手荷物預け機を設置。
第1ターミナル南ウイングと第2ターミナルの保安検査場にFace Express対応のゲート、第1ターミナル第5サテライトの51、52、53、54、55、56、57A、第2ターミナル本館の61、62、63、64、65、66、71、サテライトの81、82、83、91、92、93の各搭乗口にFace Express対応の搭乗ゲートを設置した。
成田のFace Express対応機器の導入台数は、第1ターミナルでは自動チェックイン機が出発用11台、乗り継ぎ用6台、自動手荷物預け機が10台、保安検査場ゲートが8台、自動搭乗ゲートが22台。第2ターミナルでは自動チェックイン機が出発用14台、乗り継ぎ用2台、自動手荷物預け機が8台、保安検査場ゲートが7台、自動搭乗ゲートが39台。
空港に着いてから顔パスで飛行機に乗るまでの流れ
ステップ1:チェックイン
Face Expressを利用したチェックインから搭乗までの流れは次のようになる。
まずはじめに、チェックインカウンター付近に用意されている自動チェックイン機でパスポートを読み取るとともに自身の顔写真を撮影し、その写真とパスポート(のICチップ)に保存されている写真を照合して本人確認を行なう。
その後、通常の端末同様の手順でチェックインを行なうことで、航空券情報や手荷物の情報、パスポート情報が顔情報と紐付けられる。通常の自動チェックイン機同様、この時点で搭乗券や預け入れ手荷物用のタグを受け取る。
ステップ2:手荷物預け入れ
続いて、預け入れ手荷物がある場合は、自動チェックイン機で受け取ったタグを取り付けてから自動手荷物預け機に進み、顔認証で預ける。手荷物を預けたら保安検査場へ進む。手荷物がない場合は、預け入れ機に立ち寄らず直接保安検査場へ進めばよい。
ステップ3:保安検査場
通常、保安検査場に進入するときに航空券やパスポートのチェックが行なわれるが、Face Expressでは、新たに用意されたFace Express専用の進入ゲートで顔認証を行なうだけで進入できる。
ステップ4:搭乗口
搭乗機への搭乗時は、通常は航空会社の係員による対面でのパスポートや搭乗券のチェックと本人確認が行なわれ、読み取り機で搭乗券を読み取って機内へと進むことになる。
しかしFace Expressでは、パスポートや搭乗券を取り出すことなく、ゲートに設置されている自動搭乗ゲートで顔認証を行なうだけで機内へと進めるようになる。
このように、これまでチェックイン時、手荷物預け時、保安検査場入場時、搭乗時など各ポイントを通過するたびにパスポートや搭乗券を取り出す必要があったが、Face Express利用時には、顔情報を登録するときにパスポートを取り出すだけで、そのあとはパスポートや搭乗券を取り出すことなく各ポイントを通過できることになる。
なお、(保安検査場を抜けたあとの)出国手続きについては、これまでと変わらず有人窓口で行なうか、顔認証ゲートなどを利用する必要があり、そこではパスポートを取り出す必要がある。
以上は空港でチェックインして搭乗するまでの流れだが、すでにオンラインチェックインをすませている場合でも、自動チェックイン機や保安検査場ゲートで顔情報を登録することでFace Expressを利用できる。同様に、乗り継ぎの場合ですでに搭乗券が発行されている場合でも、乗り継ぎカウンターの自動チェックイン機を利用してFace Expressを利用できる。
なお、Face Expressの利用は「13歳以上で身長130~195cm」に設定しているとのことだが、13歳未満でも保護者の同意によって利用可能で、身長についても子供は親が抱えれば、背が高い場合にはかがめば対応できるという。ただし、子供は顔の変化が早いこともあり、パスポートに保存されている顔写真の情報と、Face Expressで撮影した顔写真との照合がうまくできない可能性もあるとのこと。
7月の本格運用開始を目指してシステムの改善や整備を進める
NAA 経営計画部門 副部門長 上席実行役員の宮本秀晴氏によると、Face Express対応は、コロナ禍により当初の予定より1年ほど遅れたものの、すでに機器の設置は終了しているとのことで、「今後航空会社とも協議しながら運用面や機器のチューンナップなどを進め、東京オリンピック・パラリンピック開催前の7月ごろに本格運用を開始したい」という。
Face Expressは、当初は空港スタッフなどのリソースをいかに効率よく活用するか、という観点で導入を進めてきたが、コロナ禍では空港スタッフと搭乗客が非接触で手続きを行なえるため、今後国際渡航を再開するうえでFace Expressが新たな要素になると説明。そのうえで、「今後は利用する航空会社を増やすべく、設置を増やして行きたい」と述べた。
Face Expressの実証実験は4月13日に始まり、現時点で成田で対応しているのはJAL(日本航空)とANA(全日本空輸)の2社のみで、今後の対応エアラインの拡大について現時点では未定。
今後は本格運用開始を7月ごろに設定したうえで、Face Express対応機器のチューンナップや、航空会社と運用手順の制作などを進めるとともに、すでに興味を持っているいくつかの航空会社と話し合いを進めて規模を拡大するなど整備計画を立てていきたいという。
また、Face Express登録時の顔写真の撮影や顔認証時は、現在はマスクを外して行なうようになっている。Face Expressで採用しているNEC(日本電気)の顔認証技術では、すでにマスクを装着していても高精度に認証できるとのことだが、国際渡航の手続きであるということと、顔認証での搭乗手続きは初めてのこともあり、まずはマスクを外した状態での運用で進めることにしたと説明。
出入国システムとの連携については、Face Expressが航空会社のチェックインシステムのため、簡単に接続するのは難しいとしつつも、国の機関と顔認証技術などについての情報共有は行なっており、今後技術が進んでいくなかで連携できる可能性はあるとの見通しを示した。
顔認証システムを開発したNEC 執行役員の林良司氏は、「本プロジェクトは、国産かつ世界最高水準の生体認証技術を使って、それを遺憾なく発揮し、快適な空港での経験を世界中から来られる方々に提供する、という強い想いで取り組んだ」と、プロジェクトに対する意気込みを説明。そして、「空港(でのFace Express設置)は始まりであり、今後はこういったシステムが街中やオフィス、イベント会場などに拡がっていく。快適な社会価値の創造を展開して行きたい」と述べた。