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ANAHD、2021年3月期・第2四半期決算は国内線需要回復も過去最大の損失。来年度は「あらゆる手で黒字化を目指す」方針

2020年10月27日 発表

ANAHDが2021年3月期第2四半期決算を発表。ANAホールディングス株式会社 取締役 常務執行役員 福澤一郎氏が説明した

 ANAHD(ANAホールディングス)は10月27日、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の第2四半期連結決算ならびに通期の業績予想を発表した。

 説明にあたった。ANAホールディングス株式会社 取締役 常務執行役員 福澤一郎氏は、「国際線旅客は需要低迷が続いた一方で、国内線旅客は5月に需要が底打ち。そののち段階的な回復が見られたほか、国際線貨物は上期を通じて堅調に推移。費用面では需要動向に応じて生産量を最適化して変動費を抑制し、固定費削減にも継続して取り組んだが、売り上げが大幅に下まわったため過去最大の損失となった」と総括。

 売上高は対前年72.4%減/7641億円減の2918億円、営業損益は同3598億円減の2809億円の損失、経常損益は同3501億円減の2686億円の損失、親会社株主に帰属する四半期純損益は同2452億円減の1884億円の損失となった。

連結経営成績
セグメント別の成績

 ANA(全日本空輸)の国際線は、各国の出入国規制の影響で3月以降の低迷が続き、規制緩和で海外赴任や帰任、留学などの需要を取り込んだものの、旅客数は対前年96.3%/497万8000人減の19万3000人。収入は同94.2%/3189億円減の196億円となった。

 今後の政府間交渉や、検疫体制の整備状況、需要動向を見極めながら、運航規模を最適化していくとした。

 ANAの国内線は、緊急事態宣言解除後の旅客需要は着実に回復した。7月下旬からの新型コロナ感染者数増加を受けて夏休み期間は自粛ムードがあったが、9月はシルバーウィークの4連休やGo To トラベルキャンペーンの効果で回復基調が鮮明化。7~9月の旅客数は、4~6月の2.6倍に達した。旅客数は対前年79.8%/1842万8000人減の467万3000人、収入は同78.6%/2897億円減の789億円となった。

ANAの国際線
ANAの国内線

 ピーチ(Peach Aviation)のLCC事業は、8月後半から全便運航を再開し、8月からは新規路線も開設。9月以降は順調に回復し、9月は北海道、沖縄路線の月間利用率が7割近い水準に達した。旅客数は対前年79.5%/317万8000人減の81万7000人、収入は同81.7%/377億円減の84億円となった。

 そのほか、貨物事業は、第2四半期からサプライチェーンが回復し、自動車関連や半導体の荷動きが活発化。大型貨物専用機により大型特殊貨物を扱い、高単価貨物を優先的に取り込んだことで、単価を回復。国際線貨物では、有償貨物トンキロや輸送重量は前年の半分程度である一方、貨物収入は前年並みを維持している。

 旅行事業は、第2四半期からGo To トラベルの効果で北海道、沖縄を中心に需要が回復。前年と比較すると売上高が685億円減の138億円、営業損益が53億円減の40億円の損失となっているが、第1四半期の売上高31億円からは回復した。

ピーチのLCC事業
貨物事業

 こうしたなか、コスト削減に取り組んだとしており、需要動向に合わせた運航規模最適化し、運航規模に連動する変動費を抑制。人件費などの固定費削減などを含め、営業費用は対前年41.4%/4043億円減少。

 また、別記事でお伝えしているビジネスモデル変革でも固定費削減施策の実施を盛り込んでおり、2020年度は約1500億円減、2021年度は約2500億円減を目指す。ANAHD 代表取締役社長 片野坂真哉氏は「機材、人件費、空港の賃料など、コストは確実に見積もれる。コスト対策の取り組みには自信がある」と述べている。

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

 財務状況については、総資産は2兆7446億円、純資産は8902億円、手元流動性資金は2135億円増加の4522億円となり、キャッシュ・フロー計算書における現金および現金同等物期末残高は4510億円となっている。

 10月27日には、長期性資金確保と財務の健全性を維持・向上させることを目的に、劣後特約付シンジケートローンによる4000億円の資金調達を発表。50%の資本性の認定を受けられる予定で、実質的な財務構成比率を改善。信用格付けの維持を図る。

 片野坂氏は、1日のキャッシュ流出が第1四半期では19億円ほどだったのが、第2四半期は9億円ほどに削減できていると説明し、「キャッシュを持ちすぎと思うほど。手持ち資金は心配していない」と説明した。

財務状況とキャッシュ・フロー
通期の見通し

 前期は開示を見合わせた通期の業績予想については、売上高が対前年1兆2342億円減の7400億円、営業損益は同5658億円減の5050億円の損失、経常損益は同5593億円減の5000億円の損失、純損益は同5376億円減の5100億円の損失と予想。配当も無配とする方針を示した。

 片野坂氏は「今年度を諦めるわけではないが、経営の目線は来年度の確実な黒字化とアフターコロナを見据えた中期展望にある」とし、2期連続の赤字を避けるべく「来期はあらゆる手をうって黒字化を目指す」と決意を述べた。