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ANA、2020年4月~6月の連結決算は1088億円の損失。コロナ再拡大で弱含みも国内線需要は回復傾向
2020年7月29日 19:38
- 2020年7月29日 発表
ANAHD(ANAホールディングス)は7月29日、2021年3月期(2020年度)第1四半期(2020年4月~6月)の連結決算を発表。同日、ANAホールディングス 取締役 常務執行役員 福澤一郎氏がオンライン会見を開き、内容説明した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響による航空旅客需要が大幅に減少し、売上高は対前年で75.7%減/3789億円減の1216億円。営業費用も対前年42%減/2036億円減の2806億円と削減に努めたものの、需要減が大幅にそれを上まわり損益は赤字となり、営業損失は1590億円(対前年1752億円減)、経常損失は1565億円(同1735億円減)、親会社株主に帰属する純損失は1088億円(同1202億円減)で、「四半期決算としては過去最大の損失」(福澤氏)を計上した。
ANA(全日本空輸)の国際線旅客事業は、各国の渡航制限などの影響で全方面で需要が減少。駐在員の帰国などのために一部路線で運航を継続したものの、運航規模を示す座席キロは対前年で86.2%減少。旅客収入は対前年94.2%減/1546億円減の95億円、旅客数は同96.3%減/241万5000人減の9万1000人となった。
国際線は7月、8月も大幅な運航規模拡大はなく、今後の見通しについて福澤氏は「2023年度末にかけて緩やかに回復」との考えを示した。
国内線旅客事業は4月の緊急事態宣言発令後に需要が減少。座席キロは対前年73.3%減となり、旅客収入は対前年86.5%減/1438億円減の224億円、旅客数は同88.2%減/956万2000人減の127万8000人となった。
ただし、福澤氏は「5月で需要は底打ち」としており、5月から緊急事態宣言が段階的に解除されたことで需要は回復傾向にあると説明。特に県境を跨ぐ移動自粛解除後はビジネス需要を中心に増加に転じ、座席利用率は4月が16%、5月が29%、6月は52%に回復したという。
7~8月は運航規模で7月は対前年約6割減、8月が同3割減を想定し、現状では3~5割弱の予約になっているとのこと。GO TO トラベルキャンペーンの展開も始まっているが、新型コロナウイルス感染症の再拡大傾向の情勢から8月以降の予約数が鈍化しており、8月の終息を想定した4月の想定よりも回復が遅れることの考えで、慎重に需要を見極めつつ、運航規模の最適化を図っていく意向を示した。
ピーチ(Peach Aviation)のLCC事業については、3月中旬から国際線を全路線運休。国内線は6月中旬から全路線での運航を再開したものの、四半期では座席キロが対前年58%減となった。LCCの収入は対前年91.6%減/189億円減の17億円、旅客数は対前年91%減/176万7000人減の17万3000人となっている。
一方、航空事業のなかでも国際線貨物事業は対前年2.7%減/7億円減の254億円と前年並みを確保。旅客便減少で貨物スペースの需給バランスがひっ迫するなかで、衛生関連製品や半導体製品の輸送需要取り込みを図り、臨時便設定や大型フレイター(貨物専用機)を積極的に運航。単価が上がったこともあり前年並みの収入となった。福澤氏は単価はピークを過ぎたので、今後は量を確保していくとの方針を述べた。
そのほかの事業も航空旅客事業の苦戦に伴って軒並み減少。旅行事業は海外旅行で全ツアー催行中止となったほか、国内旅行も緊急事態宣言後にキャンセルが相次いだと説明。売上高は対前年91.7%減の31億円、損益も前年の営業利益4億円から、営業損失27億円へ転じている。
当面の資金繰りについては、資金調達などもあり手元流動性資金が5768億円、現金および現金同等物期末残高は5418億円。福澤氏は事業のキャッシュフロー改善に努める意向を示し、「キャッシュの流出は一程度、いまが底だと思っているので、今後はさらなるコスト削減と、下期以降に取り組むべき事業構造改革を行ないながら、事業資金を回していきたい」としている。
コストについては、運航規模抑制に伴う変動費を1300億円、固定費で320億円を第1四半期で削減。年度トータルでは変動費、固定費合わせて2550億円のコスト削減を見積もっているとする。
また、2021年度の新規採用は凍結したものの、雇用維持は前提との姿勢は変わらず示し、今後はアウトソースしている整備やハンドリングなどの内製化などで人員配置の最適化を図るとした。
加えて、新たな事業構造改革にも取り組み意向を示しており、短期的には上述したような航空事業の最適化や、固定費圧縮。そして、中期的には「航空一本足打法」から離れ、航空事業以外での収益確保を検討していきたいとした。