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ソフトバンク新本社が入る「東京ポートシティ竹芝」内覧会。5G、センシング、ロボットでスマート社会を目指す最先端ビル内部を開業前に見てみた

2020年9月14日 開業

竹芝に開業する「東京ポートシティ竹芝」。写真は40階建てのオフィスタワー

 東急不動産と鹿島建設が共同開発した街区「東京ポートシティ竹芝」(東京都港区海岸1-7-1)が9月14日に開業した。

 建物は地上40階建てのオフィスタワー(A街区)と、地上18階建てで住戸数262のレジデンスタワー(B街区)で構成しており、新交通ゆりかもめ・竹芝駅からは徒歩2分に立地し、歩行者デッキで直結している。特徴は、AIやIoTを活用したビル管理で、オフィスタワーにはソフトバンクグループとソフトバンクの本社が入居する。ここでは、内覧会でメディアに公開されたオフィスタワーの様子をお伝えする。

 竹芝エリアは、新たな国際ビジネス拠点にすべく国家戦略特区として2015年に認定されており、大規模な再開発が行なわれてきた。近隣にはJR東日本(東日本旅客鉄道)と四季(劇団四季)が手掛けた「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」が4月に第1期開業している。

 国家戦略と合わせて、東京都が提唱する「スマート東京 -東京版Society 5.0-」にも「Smart City Takeshiba」として選定されており、「大手町・丸の内・有楽町地区(大丸有地区)スマートシティプロジェクト」「豊洲スマートシティ」とともにデジタル技術を活用した新しい東京を目指すモデル地区でもある。

 その中核となる東京ポートシティ竹芝は、海の玄関である竹芝ふ頭へのアクセスも容易にする。JR浜松町駅から竹芝駅までは全長500mのバリアフリー歩行者デッキを整備して、エリア人口の活性化と交通安全性の向上に一役買っている。

地上16mの高さに設置されている歩行者専用通路「ポートデッキ」。首都高速都心環状線の上を通る

館内に5G通信、センサー、ロボットを配備した最先端ビル

 オフィスタワーは6階がオフィスロビー、9~39階まではソフトバンクグループとソフトバンクの本社となり、8階にはシェアオフィスである「Business-Airport Takeshiba」、撮影スタジオである「ポートスタジオ」が入居する。

 1階にはイベントホール「ポートホール」を備え、2~5階には東京都立産業貿易センター浜松町館を設置する。また、1~3階の商業エリアではコンビニエンスストアや飲食店街「竹芝グルメリウム」が営業し、2~6階の屋外には庭園「スキップテラス」が整備されている。

8階から浜松町駅方面を見た写真。ポートデッキや旧芝離宮恩賜庭園が見える
オフィスエリアはソフトバンクグループとソフトバンクが入居
1~3階に商業テナントが入る
350名収容可能なイベントスペース「ポートホール」
記者会見場としても使えるスタジオ「ポートスタジオ」
会員制のシェアオフィス「Business-Airport Takeshiba」

 東京ポートシティ竹芝にはいくつもの最先端技術が取り入れられている。その1つが5G通信(第5世代移動通信システム)だ。館内にはソフトバンクの5Gネットワークが構築されており、対応端末を使えば、高速大容量・低遅延・多数同時接続の環境で通信できる。実際、ソフトバンクのスタッフが内覧会のために用意したARアプリを見せてくれたが、画面には施設の特徴や位置情報などがスムーズに表示されていた。

5G通信でAR(拡張現実)を使ったフロア案内のデモンストレーション

 1300台におよぶセンシングデバイスによるビル管理も特徴として挙げられる。トイレの空き状況や店舗・エレベーターの混雑状況、ゴミ箱の状態、人の流れなどを常に取得し、それに合わせた情報の可視化や最適化をリアルタイムで行なっている。

 来館者や入居者には店舗やエレベーター、トイレなどの混雑状況をデジタルサイネージやアプリで通知し、ビル管理者には施設内のヒートマップや立ち入り禁止区域の自動監視、登録した要注意者の検知などを管理アプリで報告してくれる。また、商業店舗に対しては来店者の数や入店時刻を記録し(ソフトバンク利用者であれば端末情報から性別や年齢も判定)、レポートを配信することでマーケティング支援も行なう。

オフィスワーカー向けのビルアプリをiPadで実行している様子。ビル内の情報をもとにエレベーターやスキップテラスの混雑状況を教えてくれる。また、天気や交通情報も知ることができる

 オフィスワーカー向けの一例として見せてもらったのは、顔認証システムによる保安ゲートの開閉とエレベーターの搭乗最適化だ。

 東京ポートシティ竹芝で働くソフトバンクのスタッフは顔情報と滞在フロアが登録されており、エレベーター前に設けられたゲートで顔認証によるセキュリティチェックを受けると同時に、出勤先のフロアまでもっとも効率的に到着するエレベーターが自動で提示される。例えば、ゲートを通過する際に「B」が表示されていたらBのエレベーターに乗れば目的フロアへのボタンはすでに押された状態になっており、何も押さずにただ乗るだけでよい。しかも、そのタイミングで同フロアや近いフロアの人をまとめるようになっているので、効率的に運行できるわけだ。混雑緩和と同時に非接触でもあることから、感染症対策としても有効な技術になっている。

日本コンピュータビジョンの顔認証システム「Sense Thunder-E」を使ったセキュリティシステム
AI温度検知機能も搭載しているので体温も瞬時に測定される
三菱電機のエレベーター行先予報システム「エレ・ナビ」と連携することで運行の効率化を図っている
出勤先のフロアが入力されているのでノータッチで移動できる

 そのほか、東京ポートシティ竹芝ではロボットも数多く導入している。清掃ロボットや運搬ロボットなど、タスクによってさまざまなロボットを用意しているが、ここではSEQSENSEの警備ロボット「SQ-2」を紹介する。

 SQ-2は360度の広範囲映像モニタリングと通話システムを備えた巡回警備ロボットで、ここで稼働するSQ-2は自動で複数階を移動することもできる。三菱電機のロボット・エレベーターシステムと連携することで実現しており、限られた台数でも効率よく巡回することが可能だ。

 仕組みとしては、SQ-2がほかのフロアに移動する際にエレベーターを制御するクラウドに許可を求める。制御クラウドは目的のエレベーターをSQ-2専用に設定し、手動操作を受け付けないようにする。SQ-2が目的フロアに移動し、降機が完了したら専用モードを解除する。このようにエレベーターを専用モードにすることで、階層間移動を可能にしている。

自動で巡回する警備ロボット「SQ-2」。バッテリが少なくなると自動で充電スタンドまで戻ってチャージするので充電作業も必要ない
エレベーター搭乗時は「ロボット専用になります」とアナウンスする
この状態ではエレベーターの手動操作がオフになっているので、人が割り込んでも移動できない

 商業テナントは21店舗が軒を連ねる。コンビニエンスストアは、1階に「ローソン Model T 東京ポートシティ竹芝店」、6階に「セブン-イレブン 東京ポートシティ竹芝店」がオープンする。今回の内覧会では見ることができなかったが、ローソンではTelexistenceと東急不動産が共同で導入した商品陳列ロボットが稼働する予定だ。

 飲食店は、カレー、ラーメン、中華、イタリア料理、メキシコ料理、タイ料理、居酒屋など、バラエティ豊かな構成になっている。気軽に立ち寄れるコーヒーショップとして「タリーズコーヒー」や「ブルーボトルコーヒー」も出店している。

1階にあるタリーズコーヒー
居酒屋などが集まっている2階の「みなと横丁」
3階にあるブルーボトルコーヒー

 東京ポートシティ竹芝は最先端技術を投入した新時代のビルではあるが、一方で水場と緑を整備し、自然を感じる環境のなかで働く「Green Work Style」も提案している。それが2階から6階まで続く屋外庭園「スキップテラス」だ。そのなかには「竹芝新八景」として菜園や水田、ミツバチの巣箱などを設置し、オフィスワーカーの憩いの空間を提供しつつ環境教育や生物多様性保全に取り組んでいる。

2階から6階まで階段状に整備された屋外庭園「スキップテラス」
リゾートホテルを思わせるようなチェアも用意されている
水辺や水田が整備され、多種多様な草木が植えられている光景は、都会のオフィスビルだというのを忘れさせてくれる

 なお、9月18日~20日にかけて、開業記念イベントとして「TAKESHIBA SMARTCITY FES」を開催する。イベントでは、劇団四季によるトークショーや歌唱披露、アーティストによるライブ、吉本興業のタレントによるオンライン配信などが予定されている。基本無料だが入場に際しては予約が必要であり、一部の公演は有料なので、詳細についてはWebサイトをチェックしてもらいたい。

説明会はオンラインで実施

 内覧会に先駆けて実施したプレス向けのオンライン説明会では、東急不動産 代表取締役社長の岡田正志氏が東京ポートシティ竹芝について概要を説明した。

 東急不動産では現在、渋谷の大開発を行なっているが、それとは別の大型案件として、海と空の玄関口と言える浜松町~竹芝エリアがポテンシャルの高い場所であることから再開発を決意。各種課題を解決し、自治体や関係各所、「竹芝地区まちづくり協議会」のメンバーとともに200回以上の街おこしイベントを開催してきたことも紹介した。

 入居を決めたソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏は、最先端の街にする「Smart City Takeshiba」プロジェクトを進めるためにまずはビルから始め、パートナー企業と連携して進めている新しい技術をこの場所でどんどんと発表し、キャッチフレーズである「驚きと感動のある街を、ここから。」を実現していくと意気込みを語った。

 行政からは東京都知事である小池百合子氏、港区長である武井雅昭氏がビデオで祝辞を述べた。

東急不動産 代表取締役社長 岡田正志氏(左)、ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEO 宮内謙氏(右)
東京都知事 小池百合子氏
港区長 武井雅昭氏