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AI翻訳や5Gなどドコモのプライベートイベントで見つけた旅行・観光の最新技術。「DOCOMO Open House 2020」レポート
2020年1月23日 19:53
- 2020年1月23日~24日 開催
NTTドコモは1月23日と24日の2日間、東京ビッグサイトの青海展示場でプライベートイベント「DOCOMO Open House 2020」を開催している。
プライベートイベントとはいっても、パートナー企業やグループ企業の出展も多く、さまざまなジャンルの展示が行なわれていたが、そのなかから旅行や観光などに関係する展示をピックアップしてご紹介する。
AI技術を応用したさまざまな自動翻訳システム
DOCOMO Open House 2020の開会に合わせ、ドコモは英語の音声認識サービスを提供するAISense(Otter.ai)との提携を発表している。
Otter.aiは英語の音声をテキストデータ化するサービス「Otter」を提供している。「Otter」は音声認識を意識せずに普通に話された英語音声でも、非常に高い精度でほぼリアルタイムにテキスト化できるサービスだ。日本の報道関係者のあいだでも英語取材のメモとして人気のサービスで、筆者も海外取材時、展示会のブース取材やインタビュー取材、講演取材などで幅広く利用している。
ドコモはOtter.aiに出資するとともに、日本国内での事業展開において協業すると発表した。さらにDOCOMO Open House 2020では、ドコモの「はなして翻訳」などにも採用されている翻訳エンジンを開発する「株式会社みらい翻訳」の自動翻訳技術と組み合わせ、「Otter」で自動認識した英文をリアルタイムで日本語テキストに変換するデモンストレーションが行なわれていた。この翻訳機能、どのような提供形式になるかは決まっていないが、商用サービスの実現に向けて検討をしているという。
このほかにもNTTテクノクロスの日本語音声認識技術「SpeechRec」とみらい翻訳の技術を組み合わせた日本語→英語の自動翻訳のデモンストレーションも行なわれていた。日本語の音声認識は英語よりも技術的な難易度が高いが、こちらでは「言いよどみや言い間違いなどの不要語を自動で除去」「自動で句点を付与」「不要語を含む文章にも対応できる機械翻訳エンジン」などの技術で精度を向上させているという。
別のブースでは、すでにコンシューマ向けにも提供されている翻訳ソリューションである「はなして翻訳」も展示されていた。「はなして翻訳」はドコモのサービスだが、どこのスマートフォンでも利用できるキャリアフリーのサービスとして提供されている。
「はなして翻訳」も自動音声認識して翻訳するサービスだが、こちらは旅行時の短い日常会話に最適化されていて、定型文やカメラによる文字読み取りからの翻訳などの機能も用意されている。ドコモは「はなして翻訳」をコンシューマ向けには無償で提供しているが、オプションサービスとして小売り店などの事業者ごとに定型文などをカスタムした業務向けカスタムバージョンの有料提供も行なっている。
「はなして翻訳」は日常会話を翻訳することに最適化されているが、それに対して前出の「Otter」は1人が長く話す講演や、複数人が参加するミーティングを記録するなどビジネス用途を得意としているので、「Otter」に翻訳機能が追加されても、「はなして翻訳」を置き換えるようなことにはならないとのことだ。
AIを自動翻訳ではなく、英語学習に使うという取り組みも展示されていた。こちらは英作文の問題で、解答が用意された正答例に一致しなくても、文脈や文法が正しいかどうかを自動で判定するもの。教師による採点の補助に利用することもできるし、完全に自動化したアプリ教材にも利用できる。
デモンストレーションでは、和英作文を自動判定するシステムと、質問(英文)に対して音声で解答させ、その解答が文脈として正しいか、発声が流ちょうかどうかを自動判定するシステムが展示されていた。いずれも実証実験中だが、ドコモが提供している英語学習教材「English 4skills」のなかでトライアルが行なわれている。
モバイル空間統計はリアルタイム版の提供を開始
ドコモの各基地局にどのくらいの数のユーザーが接続しているかを集計し、各エリアの混雑状況のデータにして販売している「モバイル空間統計」は、この1月より、タイムラグを1時間程度にまで短縮させたリアルタイム版の提供が開始されている。
これまでのモバイル空間統計はデータに各種補正をかけていたため、データ提供まで数日間のタイムラグがあったが、リアルタイム版は補正をかける前のデータを速報版として先行提供する形式となっている。当日のデータが分かるようになったことから、例えば店舗や観光地、交通機関が混雑状況を予測して対策に活用するというような用途でも、突発的かつ予測外の人口変化にも対応しやすくなる。
このモバイル空間統計のデータはドコモの基地局に接続する人しか集計しないので、auやソフトバンクのユーザーについては補正をかけて予想している。一方でドコモの契約者でなくても、海外から来日している人がドコモのネットワークにローミング接続している数についても、外国人訪問者数として集計している。
外国人訪問者数のデータでは、ローミング接続している人の全体の数だけでなく、契約キャリアから国籍を推測し、エリアごとにどの国籍の人が多いか、といったことまで集計できる。例えば中華街化している池袋の西側地域を見ると、ローミング接続者のうち半数近くが中国から、といったことが分かる。国籍による偏りも可視化でき、日本の地方観光でどの場所にどの国からの人が多いかといったことも分かるため、インバウンド観光の分析にも利用できる。
5Gを活かしたクラウド認証型の自動改札システム
DOCOMO Open House 2020では4G/LTEに続く次世代の通信技術である5Gも大きなテーマとなっている。会場は東京ビッグサイト青海展示棟の2ホールを利用していたが、その片方は5Gの基地局が設置され、実際の5Gの電波を使っての展示も行なわれていた。
5Gでは大容量化による通信速度の向上、多数の移動機の同時接続、低遅延などの特徴がある。動画などコンテンツのリッチ化に対応するための「回線の大容量化」が5G導入のもっとも大きな根拠だが、そのほかの5Gの特徴も活用するようなアプリケーションも模索されていて、DOCOMO Open House 2020ではさまざまな展示が行なわれていた。
例えば東芝インフラシステムズは、QRコードを使った自動改札機ソリューションを展示している。こちらはQRコードをユーザーIDとし、クラウドサーバ上で認証して改札を通過させるというもので、高速な認証処理のために低遅延な5Gを使おうというアイデアだ。
会場では実際に5G回線を使ってデモンストレーションが行なわれていたが、改札機として違和感のない速度で動作していた。自動改札の処理となると、ミリ秒単位での高速化が必要となるので、5Gの低遅延性能が活かされるというわけだ。さらにこちらのシステム、クラウドサーバをドコモのネットワーク内に設置するマルチアクセスエッジコンピューティング型とすることで、遅延の低減や安定性を向上させている。
Suicaなどの交通系ICカードのシステムでは、改札などの決済機側が1日1回などの低頻度の同期通信をするだけで運用ができるようになっている。Suicaが開発された当時は低遅延で安定通信できるモバイル回線がなく、決済時にリアルタイムでサーバ認証しないでもよいシステムとして構築されたためだ。しかし5G通信の時代になり、モバイル回線でも高速な決済認証処理が可能となり、今回展示されたようなシステムに応用できるようになったというわけだ。
デモンストレーションでは認証にQRコードが使われていたが、認証手段は顔認証や別の無線通信などでも運用できる。QRコードを使う形式なら、例えば訪日外国人がWebサイト上でチケットを購入し、そのままスマートフォンの画面で乗車する、といったことも可能となる。また、Suicaの置き換えにはならなくても、紙の切符をQRコードに移行すれば、現在の改札機のような紙の切符を処理する機構が不要となるため、改札機の小型化や低コスト化、メンテナンス性向上にもなりそうだ。
「DOCOMO Open House 2020」概要
会期: 2020年1月23日~24日
開催時間: 9時30分~18時
会場: 東京ビッグサイト 青海展示棟 A・Bホール(東京都江東区青海1-2-33)
入場料: 無料(事前登録が必要)
Webサイト: DOCOMO Open House 2020