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アマデウス、旅行業の展望を示すレポート「The Future of X」を説明。竹村社長「テクノロジーがすべてを改善する鍵」

2019年10月31日 発表

アマデウスは旅行業の展望をまとめたレポートを説明した

 ホテルや航空券などの旅行予約システムで大手のアマデウスは10月31日、日本の旅行業の展望をまとめたレポート「The Future of X」について説明した。

 アマデウスは航空券やホテル、鉄道、レンタカーなどの予約発券システム(GDS:Global Distribution System)を提供する企業として1987年に創業、全世界190以上の国と地域でサービスを展開しており、1秒間のトランザクションは7万5000以上。これはGoogleを超える規模だという。身近な例では、ANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)が同社の航空券予約システム「Altea」を導入している。

Amadeus IT Group オンライントラベル担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼アジア太平洋地域マネージング・ディレクター ミーケ・デ・シェッパー(Mieke De Schepper)氏

 オンライントラベル担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント兼アジア太平洋地域マネージング・ディレクターのミーケ・デ・シェッパー(Mieke De Schepper)氏は、モバイルテクノロジーが進化して決済手段が多様化するなか、旅行のオンライン化が急速に発展し、かつてローカルな存在だった旅行会社はネットワークによってグローバル化、再編が進み、ExpediaやBooking.comのような企業が登場したと指摘する。

 一方で、ローカルな企業にもチャンスはあり、「ニッチなサービスで旅行者にユニークな体験を提供することでグローバルなブランドに対抗できる」という。オンライン化、モバイル化が進み、旅行者はスマートフォン上で旅の情報にアクセスできるようになったが、同時に情報過多になっており、キュレーション(整理と編集)とパーソナライズが欠かせない。

 旅行会社はパートナーシップによって「つながり」を持ち、分断された情報をまとめていくことが肝要で、それによって旅行者が適切なコンテンツを比較できるようになる、とした。

アマデウスについて

 レポートの詳細を引き継いだアマデウス・ジャパン 代表取締役社長の竹村章美氏は、「総合旅行会社はオンライン旅行会社に淘汰されてしまうのではという懸念を持っているかもしれないが、アマゾンやアリババは実店舗を出店しており、最終的にはヒューマンタッチサービスの代用はできない」と話す。

 旅行者(特にビジネストラベラー)はギリギリまで選択の余地を残そうとする傾向にあり、その旅行商品の価格は適正か、ほかと比べてこれでよいのかを考えている。移動方法や立ち寄りたい観光スポット、レストランの予約など多岐にわたる情報を求めるため、旅行会社は以前とは比較にならないコンテンツを保有する必要があり、「そこでAIが必要になる」という。出張はもちろん、同じ休暇でもバケーションに行くのかオリンピックを見に行くのかでは目的が異なり、旅行中のニーズも変化する。こうした変化に対応するため、旅行会社はAIで予測していくことが必要だと説明した。

 また、企業から見るビジネストラベルという視点に立ったとき、日本でもワークライフバランスの関心が高まり、出張と余暇を組み合わせる「ブレジャー」はこれからのトレンドになっていく。企業は出張者の変化する要望を取り入れつつ合理的、費用のかからない出張を仕立てる必要があり、単にコストを減らすだけでなく、出張者に負担のない旅行が求められていく。

 その解決策の一つとして音声認識技術を挙げ、「出張者から電話がかかってくると音声認識で誰かを認識して出張の手配を始める」といったテクノロジーのほか、身近なところではJAL(日本航空)が羽田と成田のチェックインカウンターで利用者の音声をAIが判断してスタッフのタブレット端末に表示する取り組みを2019年3月から試験導入していることを例示し、搭乗手続きの短縮や、手荷物・ラウンジ利用・座席アップグレードなど多様な要望に答えるための仕組み作りが進んでいると紹介。竹村氏は「明確なことは、テクノロジーがすべてを改善する鍵になるが、ローカルな企業によるヒューマンタッチサービスは今後も必要とされる」とまとめた。

株式会社アマデウス・ジャパン 代表取締役社長 竹村章美氏