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ANAウイングス、737-500退役イベント実施。ファンと「スーパードルフィン」をつなぐ感謝祭の第1弾

2019年9月28日 実施

ANAウイングスが福岡空港でボーイング 737-500型機の退役イベントを開催

 ANA(全日本空輸)グループのANAウイングスは、現在6機を保有しているボーイング 737-500型機「スーパードルフィン」の運航を2020年の上期までに終了、全機が退役する。

 1995年に運航を開始し、四半世紀に渡り活躍してきたスーパードルフィンの退役イベントの第1弾として、9月28日に福岡空港で退役記念ファン感謝祭が開催された。

 感謝祭は、運航の中心となってきた福岡空港のスタッフの講話や、実機に搭乗してのトーイング体験、機内外の見学を行なった。

講話会場となったアクシオン福岡に到着
日々737-500型機に接しているANAスタッフが参加者をお出迎え
アクシオン福岡の会議室を使い、各分野のスタッフがセミナーを行なった
参加者にプレゼントされた記念品

 記念イベントの冒頭、スーパードルフィンを運航しているANAウイングスのスタッフによるセミナーが行なわれた。福岡空港国内線ターミナルの特設カウンターに集まった参加者たちは、受付を終えると駐車場に用意されていたバスに乗り込み、アクシオン福岡に移動。視聴覚室にて、セミナーを受講した。

 ANAウイングスの代表取締役社長の衛藤勇氏は、「本日は約120名のANAスタッフもご一緒させていただきます。“スーパードルフィン”の名称でご愛顧いただきました機体も、来年春に全機退役を予定しています。延べ25機を導入し、北は利尻、南は沖縄・石垣と多くの空港に離着陸してきました。

 応募いただいた方からのコメントを一つ一つ拝読して、皆さまの記憶に残っていることを感じました。本日お越しになった皆さまには、このイベントを通じてスーパードルフィンの魅力を改めて感じていただければと思います」とあいさつ。

 その後、スクリーンでは導入当時の運航会社であるANK(エアーニッポン)が作成したイメージフィルムなどの資料映像が放映された。

ANAウイングス株式会社 代表取締役社長 衛藤勇氏
導入当時の運航会社であったエアーニッポン時代の映像資料や、福岡空港の滑走路増設が決定し、取り壊しが決定したANAの格納庫で行なわれた2018年のイベントの様子も放映された
途中、福岡空港を離着陸するスーパードルフィンの“音”を聞き分けられる編集がなされたビデオも放映された
会場の後ろでは120名ものANAスタッフが見守っていた。参加者にはプレミアムクラスの食事やドリンクサービスが振る舞われていた

 セミナーは、グランドスタッフ、整備士、パイロットの順に「授業」を行なった。1人目はグランドスタッフの田島真弓氏から。

「やはりアンク時代(ANK:エアーニッポン)の印象が強いのですが、まだ第1ターミナルがあった当時、ズラッと並んだスーパードルフィンの姿をよく覚えています。

 第2ターミナルはANAが運航しているビジネス路線が多く、離島など生活路線が多い第1とはかなり雰囲気が違って、(第1は)よりアットホームだったと思います。

 スタッフ同士、よい仕事を見かけたりしたときに送りあうグッドジョブカードというものがあるのですが、スーパードルフィンのエンジンに描かれているドルフィンのイラストをなでている整備士さんをグランドスタッフが建物の中から見かけて、そのエピソードは社内でノミネートされました」と当時を振り返った。

勤続22年と自己紹介のあったグランドスタッフ田島真弓氏。第1ターミナル(2016年に閉鎖、取り壊し)の記憶とともにスーパードルフィンとの思い出やエピソードを語った

 続いて整備士の上田厚氏は、「毎年、新しい整備士が入社してきますが『いつも飛行機はキレイに』と伝えています。というのも、B3(737-500型機の略称)という飛行機は、離島路線などボーディングブリッジのない地方空港に行く機会が多いです。タラップから降りたお客さまはイルカのイラストの前で記念撮影されますので、常にキレイに保つように心掛けています。

 これから映像を見ていただきますが、B3の性能がよく分かると思います。例えるならコンパクトスポーツカーですね。着陸時も12~13秒で停止できるスピードまで減速できるなどの性能を持っている飛行機です。

 この飛行機が導入された年に、福岡空港に自前の格納庫ができました。これから福岡空港の滑走路増設の工事に伴い、取り壊しとなってしまいますが、この25年間の運航を支えてくれたハンガーです。同時に飛行機も退役となり非常に寂しい気持ちです」と、福岡空港と密接に関わってきたB3の歴史を振り返った。

整備士の上田厚氏は、導入当時から数々の転勤を経て福岡に戻り、その737-500型機への愛着を語った

 最後にキャプテンの岩田和也氏が登壇。「大きな最新型の飛行機が注目を集めるなか、こうしたナローな飛行機の魅力もあります。

 おおよそ一つの飛行機の製造期間は10~15年と言われていますが、737は、-500の前に-200などさまざまな機種があり、現在のNG(ネクストジェネレーション)へと約50年続いています。

 737などの小型機はシアトルのレントン工場で組み立てられ、併設の滑走路から飛び立つことができます。航空博物館もあり、天井から吊り下げられた飛行機を眺めることができます。

 ローカル空港などでは、短い滑走路での離着陸が必要ということで、この737の導入が決まったという経緯があります」と紹介。さらに写真による機種ごとの違いを、クイズとして出題する形で進んだ。

最後にキャプテンである岩田和也氏から、737ファミリーの系譜や航空機の購入やリースにまつわる仕組みなど、子供から大人までが楽しめる内容で語った
岩田氏はスライドを使って、時にクイズ形式も織り交ぜながらの講話。737ファミリーの生まれ故郷であるアメリカ合衆国のシアトル州レントンなどを紹介

 すべての講話が終了し、参加者たちは再度バスに乗り込み、制限区域内に移動。目の前に現われたスーパードルフィンに乗り込んだ。使用された機材の登録記号はJA305K。今回のイベントでは930組の応募があったが、1機に乗り込める人数ということで、26組60名という非常に倍率の高い抽選となった。

 トーイング体験は、国内線側の26番スポットから滑走路を横切り、国際線ターミナル側の40番スポットへ移動、その後機体の見学というスケジュール。21時過ぎにプッシュバックを開始し、滑走路直前で待機。21時台の着陸機のラッシュのためにしばらく待つ時間があったが、カラフルな誘導灯や、着陸してくる飛行機を間近で見られる体験とあって、窓の外に夢中になる子供たちの姿があった。

トーイング体験はJA305Kを使用
入り口付近には記念イベントの案内パネル
トーイング前には、通常どおりCA(客室乗務員)から安全運航に関するアナウンス
誘導路を進み滑走路へ
40番スポットへ到着後、機内では記念撮影タイム
ジャンプシートに座ることもできた
コクピットの見学タイムも用意されており、子供たちはシートに座って記念撮影
タラップから降りるとスタッフが感謝祭の垂れ幕を用意

 機内では、コクピットのキャプテンより「このJA305Kは、1998年9月21日より運航を開始しました。現在の総飛行時間は4万6693時間、総着陸回数は4万7561回となっております。そして来年の3月には退役予定です。残された活躍できる期間もあとわずかとなってしまいましたが、精一杯頑張ってほしいと思います。

 737-500型機と私の出会いですが、今から10年前に副操縦士になるための訓練を沖縄の下地島空港で行なっていました。離陸と着陸を繰り返すタッチアンドゴーの訓練をしていましたが、それまで小さいプロペラ機しか操縦をしたことがなく、大きな機体やコクピットの計器の多さなど、何もかもが違い、これを自分が操縦するのかと緊張したのを覚えております。

 副操縦士として乗務していたある日、福江空港から出発準備をしているとき、ターミナルビルの屋上に子供たちが集まって手を降っていました。広げた横断幕には『先生ありがとう』と書かれており、視線の先には泣きながら手を降っている女性がいました。子供たちは転勤で島を離れる先生を見送る生徒たちでした。

 飛行機は色んな思いを乗せて飛んでいると、よく聞いていましたがそれを実感するフライトでした。離島の空港は立地条件や気候により、(離着陸が)難しいことが多いのですが、小さい空港でお客さまを近く感じながらフライトすることができます。これも短距離で離着陸できる737-500型機の性能によるものだと感じます。

 離島路線は飛行時間も短く、1日に5回、離着陸することもございます。気候や気流も厳しいことで知られており、自身の操縦技術の向上にも大きな影響を与えてくれたと思います」と、エピソードを披露しつつ、40番スポットに到着した。

JA305Kの見学タイム
エンジンも間近で見学することができた
歴史を感じさせる主脚(メインギア)
垂直尾翼をよく見ると塗装の禿げた箇所が見受けられた
整備士たちも記念撮影タイム
トーイングカーも記念撮影の対象
参加者だけでなく多くのANAスタッフも参加し、社員からの愛着を感じられた

 40番スポットに到着し、機体が停止してからは3グループに分かれて、機内・機外・コクピットなどを見学と記念撮影。ANAのグランドスタッフや整備士も、参加者との記念撮影に応じていた。

 今回のイベントを第1弾として、今後も退役記念式典を行なっていくとのこと。