ニュース
ANAウイングス、737-500退役イベント実施。ファンと「スーパードルフィン」をつなぐ感謝祭の第1弾
2019年10月1日 20:35
- 2019年9月28日 実施
ANA(全日本空輸)グループのANAウイングスは、現在6機を保有しているボーイング 737-500型機「スーパードルフィン」の運航を2020年の上期までに終了、全機が退役する。
1995年に運航を開始し、四半世紀に渡り活躍してきたスーパードルフィンの退役イベントの第1弾として、9月28日に福岡空港で退役記念ファン感謝祭が開催された。
感謝祭は、運航の中心となってきた福岡空港のスタッフの講話や、実機に搭乗してのトーイング体験、機内外の見学を行なった。
記念イベントの冒頭、スーパードルフィンを運航しているANAウイングスのスタッフによるセミナーが行なわれた。福岡空港国内線ターミナルの特設カウンターに集まった参加者たちは、受付を終えると駐車場に用意されていたバスに乗り込み、アクシオン福岡に移動。視聴覚室にて、セミナーを受講した。
ANAウイングスの代表取締役社長の衛藤勇氏は、「本日は約120名のANAスタッフもご一緒させていただきます。“スーパードルフィン”の名称でご愛顧いただきました機体も、来年春に全機退役を予定しています。延べ25機を導入し、北は利尻、南は沖縄・石垣と多くの空港に離着陸してきました。
応募いただいた方からのコメントを一つ一つ拝読して、皆さまの記憶に残っていることを感じました。本日お越しになった皆さまには、このイベントを通じてスーパードルフィンの魅力を改めて感じていただければと思います」とあいさつ。
その後、スクリーンでは導入当時の運航会社であるANK(エアーニッポン)が作成したイメージフィルムなどの資料映像が放映された。
セミナーは、グランドスタッフ、整備士、パイロットの順に「授業」を行なった。1人目はグランドスタッフの田島真弓氏から。
「やはりアンク時代(ANK:エアーニッポン)の印象が強いのですが、まだ第1ターミナルがあった当時、ズラッと並んだスーパードルフィンの姿をよく覚えています。
第2ターミナルはANAが運航しているビジネス路線が多く、離島など生活路線が多い第1とはかなり雰囲気が違って、(第1は)よりアットホームだったと思います。
スタッフ同士、よい仕事を見かけたりしたときに送りあうグッドジョブカードというものがあるのですが、スーパードルフィンのエンジンに描かれているドルフィンのイラストをなでている整備士さんをグランドスタッフが建物の中から見かけて、そのエピソードは社内でノミネートされました」と当時を振り返った。
続いて整備士の上田厚氏は、「毎年、新しい整備士が入社してきますが『いつも飛行機はキレイに』と伝えています。というのも、B3(737-500型機の略称)という飛行機は、離島路線などボーディングブリッジのない地方空港に行く機会が多いです。タラップから降りたお客さまはイルカのイラストの前で記念撮影されますので、常にキレイに保つように心掛けています。
これから映像を見ていただきますが、B3の性能がよく分かると思います。例えるならコンパクトスポーツカーですね。着陸時も12~13秒で停止できるスピードまで減速できるなどの性能を持っている飛行機です。
この飛行機が導入された年に、福岡空港に自前の格納庫ができました。これから福岡空港の滑走路増設の工事に伴い、取り壊しとなってしまいますが、この25年間の運航を支えてくれたハンガーです。同時に飛行機も退役となり非常に寂しい気持ちです」と、福岡空港と密接に関わってきたB3の歴史を振り返った。
最後にキャプテンの岩田和也氏が登壇。「大きな最新型の飛行機が注目を集めるなか、こうしたナローな飛行機の魅力もあります。
おおよそ一つの飛行機の製造期間は10~15年と言われていますが、737は、-500の前に-200などさまざまな機種があり、現在のNG(ネクストジェネレーション)へと約50年続いています。
737などの小型機はシアトルのレントン工場で組み立てられ、併設の滑走路から飛び立つことができます。航空博物館もあり、天井から吊り下げられた飛行機を眺めることができます。
ローカル空港などでは、短い滑走路での離着陸が必要ということで、この737の導入が決まったという経緯があります」と紹介。さらに写真による機種ごとの違いを、クイズとして出題する形で進んだ。
すべての講話が終了し、参加者たちは再度バスに乗り込み、制限区域内に移動。目の前に現われたスーパードルフィンに乗り込んだ。使用された機材の登録記号はJA305K。今回のイベントでは930組の応募があったが、1機に乗り込める人数ということで、26組60名という非常に倍率の高い抽選となった。
トーイング体験は、国内線側の26番スポットから滑走路を横切り、国際線ターミナル側の40番スポットへ移動、その後機体の見学というスケジュール。21時過ぎにプッシュバックを開始し、滑走路直前で待機。21時台の着陸機のラッシュのためにしばらく待つ時間があったが、カラフルな誘導灯や、着陸してくる飛行機を間近で見られる体験とあって、窓の外に夢中になる子供たちの姿があった。
機内では、コクピットのキャプテンより「このJA305Kは、1998年9月21日より運航を開始しました。現在の総飛行時間は4万6693時間、総着陸回数は4万7561回となっております。そして来年の3月には退役予定です。残された活躍できる期間もあとわずかとなってしまいましたが、精一杯頑張ってほしいと思います。
737-500型機と私の出会いですが、今から10年前に副操縦士になるための訓練を沖縄の下地島空港で行なっていました。離陸と着陸を繰り返すタッチアンドゴーの訓練をしていましたが、それまで小さいプロペラ機しか操縦をしたことがなく、大きな機体やコクピットの計器の多さなど、何もかもが違い、これを自分が操縦するのかと緊張したのを覚えております。
副操縦士として乗務していたある日、福江空港から出発準備をしているとき、ターミナルビルの屋上に子供たちが集まって手を降っていました。広げた横断幕には『先生ありがとう』と書かれており、視線の先には泣きながら手を降っている女性がいました。子供たちは転勤で島を離れる先生を見送る生徒たちでした。
飛行機は色んな思いを乗せて飛んでいると、よく聞いていましたがそれを実感するフライトでした。離島の空港は立地条件や気候により、(離着陸が)難しいことが多いのですが、小さい空港でお客さまを近く感じながらフライトすることができます。これも短距離で離着陸できる737-500型機の性能によるものだと感じます。
離島路線は飛行時間も短く、1日に5回、離着陸することもございます。気候や気流も厳しいことで知られており、自身の操縦技術の向上にも大きな影響を与えてくれたと思います」と、エピソードを披露しつつ、40番スポットに到着した。
40番スポットに到着し、機体が停止してからは3グループに分かれて、機内・機外・コクピットなどを見学と記念撮影。ANAのグランドスタッフや整備士も、参加者との記念撮影に応じていた。
今回のイベントを第1弾として、今後も退役記念式典を行なっていくとのこと。