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Airbnb、民泊新法施行1年でパートナーが117社に。田邉代表「地域とホスト・ゲストの相互理解を深めることが大事」
2019年6月7日 10:33
- 2019年6月6日 実施
Airbnbは6月6日、住宅宿泊業法(民泊新法)施行から約1年が経過したことを受けて、同社の現状を報告した。会見にはAirbnb 共同創業者兼CSOのネイサン・ブレチャージク(Nathan Blecharczyk)氏、Airbnb Japan 代表取締役の田邉泰之氏が登壇。
2018年6月15日に住宅宿泊業法が施行され、自宅などを宿泊施設として提供する事業者(ホスト)が、仲介サービス各社に相次いで登録を行なったのがおよそ1年前。そんななか、Airbnbは施行前日の2018年6月14日に「Airbnb Partners(エアビーアンドビー・パートナーズ)」を発表している。
これは銀行や損保会社、行政書士、航空会社、家具店、家電量販店、出版社、コンビニエンスストアなど、多様なパートナー企業との連携によって民泊のエコシステムを構築しようという試みで、例えば民泊施設を提供するにあたって障害になりそうな「施設登録のための行政手続き」「部屋のセットアップ」「ゲストのチェックイン」「清掃」「緊急時の駆けつけ」を、ホストに代わってAirbnbのパートナー企業が行なうといったもの(関連記事「Airbnb、CCCやANAほか36社と提携。民泊ホストの届出を簡便化するサービスも」)。
立ち上げ時点では日本企業36社が参画していたが、約1年が経過して117社まで拡大しており、その内訳は、先ほどの例にような民泊施設の提供に直接関わる「サービスパートナー」が49社、住宅開発を中心に行なう「サプライパートナー」が64社、宿泊者(ゲスト)の集客・送客を受け持つ「デマンドパートナー」が4社となっている。
会見のなかで田邉氏は、住宅宿泊事業が「多様な形で経済効果をもたらしている」と述べ、空き家など遊休資産の活用で収入を得る、定年を迎えたアクティブシニアがホストになることで収入を得る、あるいは、これまで宿泊施設のなかった場所に泊まれるようになることで導線が生まれ、食事の提供や部屋の清掃などビジネスの創出につながるといった例を挙げた。また、ゲストがホスト・地域住民と交流できるような体験型の宿泊は滞在が長くなる傾向にあり、より深く地域を知ってもらうことでリピートに結びつき、口コミなどで新規層の獲得にもなるという連鎖を紹介した。
こうした経済効果を後押しするのがAirbnb Partners各社であるとする一方、地域の理解を得ながら発展するには「自治体・地域とのコラボレーションが必要」であるとして、大分県や熊本県、釜石市、千葉市などと観光振興に関する覚書締結なども進めているという。直近では2019年5月に千葉市と協力して、9月の「レッドブル・エアレース千葉2019」「東京ゲームショウ2019」での民泊支援を実施することが決まっている。
また、田邉氏はこの日の午前中に新宿区と連携協定を結んだことを紹介し、「企業だけでは行き渡らないことがあり、ゲストと地域のトラブルなどにつながる。自治体と深く手を組むことで、ホストを巻き込んで健全に成長していきたい。災害対策などゲストの安全確保や新宿区の地域イベントなどの発信を行なう。一番大事なのは、地域とホスト・ゲストの相互理解を深めること」と展望を述べた(関連記事「Airbnb、新宿区と連携協定締結。事業者の法令遵守・宿泊者のマナー向上を目指す」)。
今後の施策としては、同社を利用して日本を訪れるゲストの4分の1を占めるという中国にフォーカスし、まずは日本の旅館を紹介したり、アプリで中国語のチャットサポートなどを充実させたりしていくという。
「日本の旅館に泊まりたい」というニーズは高いそうで、同社が間に入ることで旅館側の外国語対応のハードルを下げ、事前に性別を把握してサイズの合った浴衣を用意するなど、ゲストにもメリットが大きい。
アプリのサポートは「駅券売機の使い方が分からない」「銭湯の入り方が分からない」といった訪日外国人ならではのストレスに対して、写真を送ってもらうことで使い方を説明したり、日本ならではのマナーを周知したりといった展開を考えているとのこと。
一方、ワールドワイドの状況などを説明したブレチャージク氏は、グローバルでは10万を超える市町村に600万を超えるリスティング(宿泊施設)が登録されており、創業11年間で5億チェックインを達成したという現状を紹介。
日本では、住宅宿泊業法施行1年でリスティングは5万件、Airbnbに登録しているホテルなどを含むと部屋数は7万3000室であり、順調な伸びを見せていることを明らかにした。また、2019年第1四半期の世界人気訪問先トップ10に東京と大阪が入っていると述べ、世界規模で見ても日本が旅行先として注目されていると語る。
そして、日本における民泊の役割は、今後予定されているラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックに代表されるような「大規模イベント」時の旅行者の受け入れであり、東京・大阪などの大都市に集中しがちな宿泊を地方に展開することで実現する「地域活性化」、そして現在日本に850万軒あるという「空き家対策」であるという。ブレチャージク氏はパートナー企業との連携、ホストとのコミュニケーションの充実によって、こうした役割が実現できると考えを示した。