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ピクサー作品の制作工程を科学や数学などで紐解く「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」スタート
東京・六本木ヒルズで9月16日まで
2019年4月15日 15:52
- 2019年4月13日~9月16日 開催
六本木ヒルズ展望台 東京シティービューで、「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」を4月13日~9月16日に開催中だ。展覧会では、ピクサーの作品作りの裏側をアジア初、しかも期間限定で公開。科学、数学、テクニカルアーティストに焦点をあて、命でもあるストーリーを観客に効果的に伝えるための仕組みを知り、学ぶことができる。
展覧会のポイントはハンズオン展示であること。作品作りにおける8つの工程を実際に体験し、手を動かしたり、デジタルツールを使ったりして、仕組みを理解したりしながらアニメーションを作り、動かすことが可能なのだ。
展覧会に先駆けて行なわれた内覧会には、ピクサー・アニメーション・スタジオ ミュージアム・展覧会 シニアマネジャーのマレン・ジョーンズ氏が駆けつけ、冒頭であいさつ。
「ピクサーはストーリーを作り、皆さまにお伝えするのが大好きです。今回の展示会ではストーリーを現実的に、効果的に伝えるためにどのようなツールを使っているのかをお見せします。
映画やストーリーはパッとできあがるものではなく、関わる多くの人が一生懸命働き、努力し、学校に通い、情熱を持って作りあげます。そこには科学・数学・エンジニアリングが工程のすべてのステップに取り入れられています。
モニターベースやインタラクティブ展示を通じ、訪れた人々はアニメーター、照明デザイナー、モデラーたちが実際に行なう作業を垣間見ることができます。そしてピクサーの制作チームが毎日のようにクリエイティブなチャレンジの解決に科学・数学・エンジニアリングを応用していることを知ることができます」と話した。
展覧会を開催するきっかけに関しては、10年ほど前に「ボストンサイエンスミュージアム」側からオファーが来たことを紹介。科学と数学、テクニカルな部分を紹介するよい機会と感じコラボレーションがスタート。ピクサー側からは映画作りとストーリー、ミュージアム側は多くの人々が分かりやすく楽しめる展示のノウハウが本展覧会に活かされたと話してくれた。そして、「クリエイティブで好奇心の強い皆さんをインスパイアし、教育するという共通のゴールを作りあげた」と語った。
展示会の目指す部分については「次世代のクリエイティブなストーリーテラー、問題解決者を育むこと」と答え、続けて「近年のテクノロジの進化はめざましく、5年後にどのような技術があるのか分からない今、特定のテクノロジに特化して意味はないと思います。ということは今日の子供たちは、まだ存在しないテクノロジを学ぶことになるのです。
そのために好奇心やクリエイティビティなど、一人での学習または共同作業における挫折や失敗を怖がらず、それが起きたときに立ち直る方法など、時間を超えたスキルを学んでもらうことが大切だと考えます。
このエキシビジョンは、このようなことを理想とし、ご来場いただく方々に感じ取っていただき、多くの人とわかちあっていただけるとうれしいです。この素晴らしい“学びの体験”をぜひ楽しんでください」とコメント。
また、会場には「ボストン サイエンスミュージアム」より企画展示運営 マネジャーのピーター・ガーランド氏も来場。ギャラリーツアーを行なった。会場からの「クリエイティビティあふれる発想のために子供が今のうちにやっておくことは?」との問いに、同氏は「重要なことはたくさんのことを学ぶこと。そしてたくさんの失敗を経験し、失敗や間違いを恐れないことです。早い段階で学習を始めることも大事。探求、学ぶことをし続けることも必要でしょう」と回答。
そして展覧会に関しては「日本はとてもクリエイティビティあふれる場所だと、訪問して驚いています。子供がインスピレーションが必要なように、大人も同様です。本展覧会では、大人もぜひ子供のような心で体験し楽しみ、さまざまなことを吸収してほしい」と話した。
8つの工程に沿ってピクサーの作品制作を紐解く
展示会では「ピクサーの制作パイプライン」として8つの工程を順番に紹介。実際は順番どおりではなく、各工程を行き来しながら精度を高め完成を目指していくという。会場では各工程の解説エリアに合計約40以上のアクティビティ、約30の映像解説が用意されているのでじっくり学んでいこう。
モデリング
エントランスをくぐるとディズニー/ピクサー映画「トイ・ストーリー」シリーズのバズ・ライトイヤーが出迎えてくれ、キャラクターを形作る「モデリング」エリアが広がる。「モデリング」とは、アーティストが描いたスケッチをもとに、コンセプト・アートに沿ってデジタルモデラーがキャラクターのバーチャル3Dモデルを制作する工程だ。
キャラクターマケットの展示や、サンプルに触れたり、モデラーが3Dの立体物を作る際に利用する数学的手法の一つである2D形状を軸として回転させる体験を楽しむことができる。また、「バーチャルライブラリー」の活用でモデラーたちが少ないパーツでも効率的に多くのロボットが生み出せたことから、自分でもロボット作りを行なえるブースも用意。
さらに映像作品も見逃せない。ここでは映画「トイ・ストーリー」シリーズのキャラクターを例に「数学で表面を滑らかにする」方法について、コンピューターサイエンティストが解説してくれる。なお、各エリアにはキャラクターやビッグサイズのコンセプトアートなどが飾られているので一緒に写真を撮ってみよう。
リギング
続いては、「リギング」。キャラクターの動きを作る工程だ。リガーが、モデリングで作られたキャラクターをリアルに動かすために、仮想の骨や筋肉、関節を作り動きを設計する。
「フェイス リギング ワークステーション」では、ストーリーを伝えるうえでとても大切な表情作りを体験。映画「トイ・ストーリー」シリーズのジェシーの表情を約700以上の「動きの支点」を操り生み出していく。作品で見ているあの表情を生み出す複雑さと面白さを感じてみよう。ほかにも数学を利用して関節の可動域を制限、腕の動きを設計することも楽しめる。
サーフェイス
次は髪や服など外見を決める「サーフェイス」エリアへ進もう。サーフェイシング・アーティストが「シェーダー」と呼ばれるコンピューター・プログラムで、オブジェクトの外見や質感、色などを加工し表現する工程だ。
エリアには、ディズニー/ピクサー映画「ウォーリー」のウォーリーが手にするキューブを例に、3Dオブジェクトに柄や模様の付いた布を被せその変化を見るブース。そしてディズニー/ピクサー映画「カーズ」シリーズのラモーンのガレージでカラーやロゴ入れ、サビ&ピカピカ仕上げなどをボンネットに施し「サーフェイス」を学ぶブースなどがある。
セット&カメラ
そして「セット&カメラ」の工程へ。ここではバーチャルな世界をセット・デザイナーが構築し、カメラ・アーティストがレンズの種類やアングルなどを調整し撮影する。
たくさんの花をつけた巨大なオブジェが飾られ、ディズニー/ピクサー映画「バグズ・ライフ」の「アント・アイランド」の世界を虫の目カメラを使い、虫視点でチェック。実際にオブジェ下の穴からも目視での景色を確認することもできる。
また、カメラの基本としてウォーリーらをモデルにどのようにシーンを切り取るのかや視線の誘導に関しても学ぶことも。2台のカメラで焦点距離や画角の違いによる絵の変化を楽しもう。
各工程のモニターベースでのアクティビティにトライ
各工程のモニターベースでのアクティビティもご紹介。今回挑戦したのは「自然をプログラムする」だ。ディズニー/ピクサー映画「メリダとおそろしの山」の巨大な石が並ぶ草原に植物を育成するルールをプログラムする。葉の色やバリエーション、分布の長さ、曲がる方向を指定すると一気に自動で何百もの植物が草原に発生。芝生風になったり、荒れ放題になったりとイメージどおりの草原を生み出すことができた。アングルも変えることができ、下から上から、ぐるりと一周して仕上がりを確認することも可能だった。
なお、「More Info」をタッチするとアクションを数字に置き換えてプログラムを実行していることや、プログラマーがパラメーターの色の範囲を指定し、ランダムに使用していることなどを解説。読むとアクティビティの理解が段違いに深まるのでぜひ一読を。
さらに「カーブでマイクの『手の振り』を表現する」にもチャレンジ。トランジションカーブの種類とフレーム数で手の動きをアニメーション化するのだが、ポーズAからポーズBまでのフレーム数やカーブの形で動きが変化し、感情表現もできることが丸分かり。こちらも解説を読んで理解が進むほど全パターン試したくなる。
アニメーション
「アニメーション」ではディズニー/ピクサー映画「Mr. インクレディブル」のエドナ・モードの姿を発見。こちらはアニメーターがキャラクターに演技をつけ、ストーリーに命を吹き込む工程だ。
演技による感情表現に焦点をあて、コマ送りとキャラクターの動きをじっくり見ることができる。サイドの椅子に座って、エドナ・モードと記念撮影も可能だ。さらに「ストップ モーション アニメーション」のブースでは、オブジェクトの写真を連続して撮影し、滑らかな動きを生み出す仕組みを学べる。オリジナルの短編作品作りもでき写真に自分自身が映り込みランプと共演することも。各会場で一番人気の体験学習ブースとのこと。
シミュレーション
「シミュレーション」はシミュレーション・テクニカル・ディレクターがキャラクターの髪や服を本物のように動かす設定を行なう工程。
映画「メリダとおそろしの森」のワンシーンを例にシミュレーションの効果がオフの状態とオンの状態をスイッチで交互に見ることができる。またサイドにはメリダの髪の毛のカールの表現についても映像作品で解説。「物理学で巻き毛をつくる」としてスプリングに軸を入れることで動きを制限。動いたあとのカールのほどけが防げ、より柔らかで自然な動きの表現が可能となったと解説されていた。
ライティング
ディズニー/ピクサー映画「ファインディング・ドリー」のドリーが美しいサンゴ礁で待つ「ライティング」エリアへ。照明デザイナーが照明効果でシーンに強弱をつけ、ストーリーの情感を引き立てる工程だ。
「ドリーと一緒に照明効果を体験してみよう」では、8色の照明と水の速度と明るさの演出照明をスイッチとスライダーで切り替えていく。水の表情の変化を学び、あたたかで明るい水の中で泳ぐシーンや夜の暗く冷たい雰囲気のなか泳ぐシーンなどを作り出していこう。
レンダリング
ついにパイプラインの最終工程である「レンダリング」に到着。レンダー・テクニカル・ディレクターによりコンピュータ内のバーチャル3Dを1秒24コマの2Dイメージに変換。これらが次々と再生されることで映画となる。
「『インサイド・ヘッド』でレンダリングを体験してみよう」では、ボタンを押し続けることで、約33時間かけて行なわれるバーチャル3Dから2Dへの変換作業を時系列で観察することができる。低解像度のイメージが刻々と変化し、高解像度の美しい仕上がりになっていく様子を見てみよう。
さらに舞台裏を紹介する映像「レンダリングには時間がかかる」や、働く人々にフォーカスした映像「ピクサーで働く人たち」も見応えありだ。レンダリング方程式やモンテカルロ・シミュレーションの平和的な活用法など、技術スタッフの奮闘を知ることができ、より一層に作品が好きになるはず。
会場限定オリジナルグッズなど
「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」でじっくりピクサーの技術を学んだあとは、ショップでオリジナルグッズをチェック。「蓄光Tシャツ」や「マグカップ」に「アクリルスタンドコレクション」のほか種類も豊富。税込み2000円以上購入すると非売品の「オリジナルB5下敷き」を先着2万5000名にプレゼントしている。
「PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス」概要
会期: 2019年4月13日~9月16日 ※会期中無休
会場: 六本木ヒルズ展望台 東京シティービュー(六本木ヒルズ森ビルタワー52階)
開館時間: 10時~22時
入場料: 一般1800円、高校生・大学生1200円、4歳~中学生600円、シニア(65歳以上)1500円
前売り券: 1500円(一般)、オリジナルグッズ付きプレミアム前売り券1800円(一般)
Webサイト: PIXARのひみつ展 いのちを生みだすサイエンス
(C)Disney/Pixar