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JAL、成田~ハワイ線乗務のCAからアルコール検知。「食事やマウスウォッシュのせいでは」本人は飲酒を否定

アルコール感知器業者らとともに調査を進める

2018年12月17日 事例発生

2018年12月20日 発表

 JAL(日本航空)は12月20日、執行役員 総務本部長の植田英嗣氏、客室安全推進部長の井上雄一朗氏、客室本部 副本部長の三浦武彦氏が「アルコール検知事例」について説明を行なった。

 12月17日19時55分成田国際空港発、ダニエル・K・イノウエ国際空港(ホノルル)行きのJL786便に乗務したCA(客室乗務員)から、機内におけるアルコール検査において基準値を超えるアルコール値が検知される事例が発生したという。

 当該CAはアルコール値の検知後に乗務の任を解かれ、12月19日の夜に帰国し所属長が面接したところ、本人は12月14日以降飲酒していないと否定している。

アルコール検知事例

発生日:2018年12月17日
便名:JL786便 成田国際空港(19時55分予定)発~ダニエル・K・イノウエ国際空港(07時30分予定)着
機材:ボーイング 787-9型機(JA874J)
搭乗者数:123名(幼児1名含む)
乗務員数:12名(運航乗務員2名、客室乗務員10名)
当該客室乗務員:ビジネスクラス担当のシニアキャビンアテンダントから0.15mg/Lのアルコール値(基準値は0.10mg/L)が検知される

事例発生の流れ

17時55分(日本時間)
・出発前のミーティング時に吹きかけ式のアルコール感知器を使って乗務員同士の相互確認で2回検査を行なう。当該CAのアルコール値は0.00mg/L(基準値は0.10mg/L)

19時58分(日本時間)
・JL786便出発

20時27分(日本時間)
・JL786便離陸

23時15分以降(日本時間)
・乗客への夕食サービス後に当該CAを含めた乗務員も食事
・ほかのCAから当該CAと1mの距離で会話を交わしアルコール臭がすると先任CAへ報告
・先任CAが当該CAと対話するがアルコール臭はしないと判断
・さらに別のCAより当該CAからアルコール臭がすると先任CAに報告

23時50分~55分(日本時間)
・先任CAが吹きかけ式のアルコール感知器を使い当該CAを2回検査したところ、いずれも0.15mg/Lのアルコール値(基準値は0.10mg/L)が検知される
・当該CAは食事や使用したマウスウォッシュのせいではとアルコール類の飲酒を否定するが、乗務の任を解かれる ※CAが10名から9名になったが、役割の交代などにより運航に支障はないとのこと

翌0時20分ごろ(日本時間)
・うがいなどを行ない約30分後の翌0時20分ごろ、同じ吹きかけ式のアルコール感知器を使い3回目の検査を行なうが、0.10mg/Lのアルコール値を検知

7時27分以降(現地時間12月17日)
・ダニエル・K・イノウエ国際空港到着
・空港で吹き込み式のアルコール感知器を使い検査を行なったところ、アルコール値は0.00mg/L
・当該CAは12月19日に帰国。所属長による面接実施 ※事例発生以降乗務は行なっていない

 当該CAは12月14日以降一切の飲酒はしていない、歯列矯正中であり食事やマウスウォッシュにより反応がでたのではと主張。「なぜ数値がでたのか分からない」と話しているという。現在JALはアルコール感知器の業者などと相談しつつ調査を進めている。

 10月28日のJL44便(ロンドン・ヒースロー国際空港~羽田空港線)に乗務予定だったJALの元副操縦士から英国の基準を上回るアルコール量が検出され、現地警察により拘束・逮捕。のちに禁固10か月の実刑判決が言い渡された事例があり(その後、元副操縦士は懲戒解雇処分)、JALでは再発防止策を進めている(関連記事「JAL、飲酒した副操縦士の実刑判決で社内処分を説明。当人の懲戒解雇と処分の公開は『社会に与えた重大性を鑑みて決定』」「JAL、飲酒した副操縦士の逮捕で再発防止策。『顔認証などで検査の厳格化を検討』と赤坂社長」)。CAは全員吹きかけ式のアルコール感知器を携帯し、出発前のミーティングで乗務員同士が相互に2回確認し合うという取り決めは、これらの事件を受けて12月5日以降義務付けられているもの。

 再発防止策推進以降、使用するアルコール感知器は、運航乗務員が行なう検査ではストロー型の「吹き込み式」、CAが行なう検査は「吹きかけ式」という違いはあり、元副操縦士は「吹きかけ式」を使った検査をパスしていたという事実はある。

 しかし、CAが携帯している「吹きかけ式」は正しく息を吹きかけないとエラーを示すものであり、ロンドンで元副操縦士を検査した「吹きかけ式」は正しく息を吹きかけない場合、何も反応しないという仕様の違いがあるという。今回の事例は、乗務員同士が相互に確認し合うという過程も経て「0.00mg/L」という出発前の数値となっている。

 当該CAは乗務時にビジネスクラスを担当しており、乗客へのアルコールの提供はあるが、コンディションを調べるためのテイスティングも含めてアルコールを口にすることは禁止されている。

 機内での食事メニューにある発酵チーズ、ティラミスは、アルコール検知につながる可能性があり、当該CAは歯列矯正中であることから口臭を気にして複数種のマウスウォッシュを複数回使用していたとのことだが、植田氏は「皆さまに心配とご迷惑をおかけしているなかでこのような事例を発生し申し訳ございません。(アルコール検知の)数字が出たことは厳粛に受けとめて調査を行なっていきたい」と述べた。