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ANAグループ、パイロット飲酒問題に対する改善に向けた措置を国交省へ報告

2018年11月16日 報告

ANAグループはパイロットの飲酒問題に起因した運航便遅延に対する措置を国土交通省へ報告した

 ANAグループは11月16日、ANAグループパイロット(運航乗務員)の飲酒に起因した運航便遅延に対し、運航会社であるANA(全日本空輸)、ANAウイングス、エアージャパンの3社合同で実施する措置を国土交通省に報告した。

 これは10月25日に石垣島発のANA1762便(石垣8時10分発)に乗務予定であったANAウイングスのパイロットが前夜の飲酒に起因する体調不良を申し出たために別の運航乗務員と交代することになり、5便が遅延し、計619名に影響を与えたことに対する措置。当該運航乗務員は諭旨退職となったほか、ANA 取締役執行役員 フライトオペレーションセンター長の大井道彰氏と、ANAウイングス代表取締役社長 泉弘毅氏はそれぞれ役員報酬10%減額(1か月)の処分を受けた。

 国土交通省では、飲酒を起因とした運航便遅延が連続して発生していることを受けて、「飲酒に関する航空法等の遵守の徹底について」との通達を11月1日付けで発出し、航空会社に対して、飲酒に関する航空法等の遵守について徹底を図るとともに、講じた措置について文書での報告を求めていた。

 ANAグループ3社では今回の問題について、「乗務開始時刻12時間前を超えて飲酒」「飲酒量の自己コントロール」「ANAのパイロットが同席していたにも関わらず注意することなく飲酒」の3点が問題であったとし、「自覚の欠如」「組織的なサポート不足」「基準が未統一」であったことを課題として以下のような措置を実施する。

パイロット(運航乗務員)

(1)乗務前の飲酒に関する自己管理の徹底・強化

・乗務12時間前以降の飲酒制限に加え、飲酒量に関する社内規則での明文化。これまでは飲酒量の目安は2単位(ビール1L、日本酒2合などが目安)までとすることを一時的な本部長通達として出していたが、運航管理規則集のアルコールチェック容量に格上げする。12月から反映する。

・パイロットが自身のアルコール体内分解能力を日常的に把握し、自己管理意識を向上させることを目的とし、全パイロット約3000名に対して日常使用可能な呼気検査器を12月以降順次貸与を開始する。貸与する呼気検査器はフィガロ技研の「FUGO sumart」となる。

・アルコール教育プログラムの見直しと再徹底を12月以降に開始するとともに、これまでANAのみに開かれていたアルコールカウンセリング窓口のグループ各社への展開を2019年4月を目途に開始する。

(2)乗務前アルコール検査体制の強化

・羽田空港以外では、これまで記録が残らないバータイプの呼気検査器を用いて第三者確認を実施していたが、記録が残るストロー式呼気検査器を国内外全発地空港に配備(パイロット出頭がある空港は国内外76空港)。羽田空港へのストロー式呼気検査器の配備は2018年内に実施。機器はタニタの「FC-1200」を採用する。

・羽田空港ではこれまで記録が残るストロータイプの呼気検査器を用いていたが、これに第三者確認を追加する。検査結果と確認実施者の記録を管理。これにより、全空港で「第三者確認」「ストロー式呼気検査器」「検査結果記録を管理」の基準に統一する。

全パイロットに貸与されるフィガロ技研の「FUGO sumart」(画像:同社Webサイトより)
羽田空港で使用されている記録が残るストロータイプの呼気検査器、東海電子「ALC-PROII」(画像:ANA)
羽田空港を除く全空港の乗務前検査に採用されるタニタの「FC-1200」(画像:同社Webサイトより)

運航乗務員以外で航空機の運航の安全に携わる者(CA/客室乗務員、整備従事者、運航管理者)

・全航空従事者に対し、日常的な健康管理の一環として始業時の酒気確認を実施。2019年1月を目途に準備が整い次第開始する。
・航空従事者が所属する全事業所へのストロー式呼気検査器の配備し、随時検査が可能な体制を構築。2019年1月を目途に準備が整い次第開始する。

上記以外の運航に関わる作業者(空港構内で車両運転に従事するグループ社員)

・車両乗車前のストロー式呼気検査器での確認の実施

 ちなみにANAでは呼気中のアルコール濃度が0.1mg/Lを超えた場合の乗務を禁止しており、過去5年間で8回、直近1年間で2回のアルコール濃度基準値超えのため乗務できなかったパイロットがいたが、いずれも交代要員が対応することで運航への影響はなかったという。