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三菱航空機、水谷社長が会見。7月の航空ショーでMRJの飛行展示を計画

2020年半ばの量産機引き渡しは「ギリギリ守れるのではないか」

2018年4月18日 実施

三菱航空機株式会社 代表取締役社長 水谷久和氏

 三菱航空機は4月18日、代表取締役社長の水谷久和氏が会見を開き、同社が開発を進めている国産リージョナルジェット「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」の現状について説明した。

 冒頭、「今日は皆さんを驚かせるような新しい情報はない」と前置きしたうえで、2017年4月に現職に就いたこと、2017年に多くの外国人技術者を投入したこと、パリの航空ショーで実機を展示したことなど1年間を振り返った。

 量産機引き渡しを2020年半ばまで延期する理由となった計器室の配置見直しと電気配線の見直しについては、前者は設計作業をほぼ終了、予定どおり進んでいると述べ、後者はルーティングの構想のメドが立ち、逐次製造図に取りかかっており、製造図のできたものから製作に入っていくと説明した。

 モーゼスレイク(アメリカ・ワシントン州)で行なっている飛行試験は、今朝の段階で1900時間程度となっているが、型式証明を取得するためのTCフライト(Type Certification:型式証明飛行試験)には至っておらず、その時期については「我々からはいつからと明言できない状況」と述べるにとどまった。ただ、2017年に比べればMRJの開発状況は成熟しており、「開発作業全体のレベル感を評価されるものだと思っている」「民間機に初めて参画している会社なので、連邦航空局もそういう目で見ている」「進捗を感じてもらえているのでは」と先行きに期待を示した。

 そのうえで、予定している2020年半ばの量産機引き渡しのスケジュールは「ギリギリ守れるのではないか」と改めて明言。外国人技術者を多数投入したことで知見は貯まっており、今年中には設計変更を反映させた機体を完成させたいと決意を新たにした。

 また、7月に英国で行なわれるファーンボロー航空ショーでは「初の飛行展示に向けて調整を進めている」と明かし、モーゼスレイクにある4機の試験機のうち、いずれかを持ち込むことになるだろうという。実現すれば「MRJへの認識を深めてもらえる」と水谷氏。

質疑応答に応える水谷氏

 会見後の質疑応答では、「計画の始まった10年前とは市場環境が変わっており、競合に比べ優位性が薄れたのでは」との指摘を受けたが、水谷氏はエアバス・ボンバルディア陣営のCシリーズは100人乗り以上の機材であり、ボーイング・エンブラエル陣営も同じ市場を見ているのではと応え、70人乗り/90人乗りのMRJとは客層が異なるという考えを示した。また、MRJが搭載するプラット・アンド・ホイットニーのギヤードターボファンエンジン「PW1200G」の持ち味を本当に活かせる開発をしているのはMRJだと自負していると述べ、同じエンジンを採用するボンバルディア Cシリーズなどの競合より早く開発が始まったことの優位性はあると説明。

「MRJ 90型機の1年後にMRJ 70型機のデリバリーを開始する」という以前の予定については、「まずは90(MRJ 90型機)に専念しており、90の見通しが立ってから検討したい」と明言しなかった。