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西武HD、第13回定時株主総会。社員発信の施策など「ソフト面は非常に重要」と後藤社長

2018年6月21日 開催

西武HDが第13回定時株主総会を開催した

 西武HD(ホールディングス)は6月21日、西武第二ビル くすのきホール(埼玉県所沢市)で第13回定時株主総会を開催した。議長は代表取締役社長の後藤高志氏が務め、議決権を行使した株主は1万3453名(議決権数は238万2754個)。また、総会当日時点の議決権を有する株主は3万7983名で、議決権数は336万9111個。

 冒頭では、来場した株主に向けて映像による事業報告を行なった。2017年5月に策定した「西武グループ中期経営計画(2017~2019年度)」では、「新たな視点でスピード感をもって、イノベーションに挑戦」「新規事業分野の創出」「既存事業領域の強化」を掲げており、2017年度の営業収益は前期比186億2200万円増(同3.6%増)の5306億3100万円、営業利益は同18億300万円増(同2.9%増)の642億5900万円であったことを説明。

議長を務めた株式会社西武ホールディングス 代表取締役社長 後藤高志氏

 主なセグメントごとに見ると、「都市交通・沿線事業」では、メットライフドーム(西武ドーム)でのイベント開催や西武秩父駅前の温泉施設「祭の湯」開業などで旅客輸送人員が前期比1.6%増、特急料金の見直しや有料座席指定列車「S-TRAIN」の運行開始などで旅客運輸収入が同1.7%増。結果、営業収益は同55億6200万円増(同3.6%増)の1620億5600万円、営業利益は同4億5000万円増(同1.7%増)の272億5400万円となった。

「ホテル・レジャー事業」では、2016年7月に「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」が開業、営業を休止していた「東京プリンスホテル」がリニューアルオープンするなどしており、営業収益は前期比163億900万円増(同8.7%増)の2048億5400万円、営業利益は同32億700万円増(同22.8%増)の172億9900万円だった。

 3つのホテルとゴルフコースを展開する「ハワイ事業」では、前期に「ハプナビーチリゾートプリンスホテル」の不動産の一部を売却していたため、営業収益は前期比77億9200万円減(同33.6%減)の153億7500万円、営業損失は同62億5200万円減の20億200万円となった。

 続いて、個別施策の見直しと数値計画のローリングにより、「西武グループ中期経営計画(2018~2020年度)」を策定したことを紹介し、対処すべき課題を挙げた。

 訪日外国人の増加や人口構造の変化を受けて、インバウンド/シニア/子供マーケットを拡大する必要があるとして、宿泊特化型のホテルブランド「プリンス スマート イン」や、会員制ホテル事業「プリンス バケーション クラブ」の展開を進めると説明。また、保有資産の有効活用という点では、既存ホテルの客室、ロビー、レストランへバリューアップ投資を行ない、西武鉄道池袋ビル計画(仮称)やグランエミオ所沢II期などの開発を推進するという。都市交通・沿線事業セグメントでは、ホームドアの設置、新宿線の立体交差化、有料座席指定列車や新型特急車両の導入、駅のリニューアルを具体的な取り組みとして挙げた。

質疑応答抜粋

 総会に上程された決議事項は5つで、剰余金の配当を1株につき11円50銭、総額を38億7481万3128円とする(第1号議案)、取締役の員数の上限を18名から15名に変更するための定款の一部変更(第2号議案)、取締役8人の選任(第3号議案)、監査役2名の選任(第4号議案)、取締役の報酬額改定(第5号議案)。なお、1株あたりの配当は、中間配当11円50銭と合わせると23円になる(配当性向は15%)。

 質疑応答で議長に指名された株主は12名。以下にそのいくつかを抜粋する。

「他社に比べて社員による草の根活動が少ないのでは」と指摘した株主は、「東京都交通局はコミケ(同人誌即売会の「コミックマーケット」)のために臨時バスを出して、乗務員がオリジナルのアナウンスをしていると聞いている。西武でも、前回のラブライブ!トレインでは職員独自のアナウンスがあったが、今回はなく残念。社員のアイディアを直接役員に提案するような仕組みはないのか」と質問した。これについては、活動や施策を社員が自ら考えて経営陣に提案する取り組み「ほほえみFactory」を毎年実施していると回答。さらに議長の西武HD 代表取締役社長 後藤高志氏が補足し、「毎年、グループ全社員から選ばれた50名が環境の保全、子供応援プロジェクト、地域活性化などのアイディアをグループ各社社長、役員の前で提案している。2006年から10年以上取り組んでおり、認可保育園の『Nicot』や、小学生40名を毎年預かって農業体験や宿泊体験を行なう『西武塾』はほほえみFactoryから生まれたもの」と紹介し、ソフト面の強化は重要なポイントと述べた。

 ダイヤ改正後に各駅停車の接続がわるくなったという指摘は複数挙げられ、「快速や急行が何本も通り過ぎ、各停がなかなか来ない」というもののほか、「各停のホームが10両編成の長さに対応したのに止まらない。10両編成の利点が活かされていないのでは」など編成についても質問がおよんだ。後者については、「ホーム自体の有効長は10両分あるが、そのほかの運行に必要な電気的な施設が整備できていないため、現在のところ各停の編成を伸ばす予定はない」と回答。一方で、ダイヤについては「次回以降のダイヤ改正の参考にさせていただく」と述べた。

「北海道ニセコや群馬県水上高原など、スキー場からプリンスホテルの撤退が続いており、既存のものも規模を縮小しているが、今後の計画は」という問いに対しては、スキー場のプリンスホテルはゲレンデの前にあり、スキルに応じたコースを楽しめるのが強みであると回答。そのうえで、「1990年代の前半、映画などの効果でスキーブームが起こり、当時がスキー人口のピークで1800万人ほどいたが、現在は400~600万人ほどでピークの1/3になっている。スキー場の経営は非常に厳しく、安全管理が最重点でそれなりの投資がかかる。しかし、訪日観光客が急増するなかで、雪山は良質な観光資源とみており、例えば新潟のかぐらスキー場には、世界最長クラスの1kmの人工スキー場を建設、1年を通じてスキーを楽しめるようにした。今後も苗場、志賀高原でホテルのリニューアルを予定している」と議長が補足した。

 なお、5つの議案はすべて原案どおり可決され、総会は閉幕した。