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日本最大級クレーンが75.8m/422tのランプ橋を架ける。NEXCO中日本が名二環 飛島JCT橋梁架設工事公開

2018年2月17日 実施

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は2月17日、名二環(名古屋第二環状自動車道、C2)で工事中の事業区間、名古屋西JCT(ジャンクション)から飛島JCT(愛知県海部郡飛島村木場)の延長12.2kmのうち、伊勢湾岸道(伊勢湾岸自動車道、E1A)と接続する飛島JCTランプ橋の架設工事を公開した。

 名二環とは名古屋市中心部を取り囲むように外縁部10km圏に整備される環状道路で、国道302号と並行するように敷設しており、全長67kmのうち54.8kmが供用中、12.2kmが事業中区間となっている。

 同区間は国土交通省の直轄事業と、同社による有料道路事業の合併施工で、今回架設した飛島JCTは同社が手掛けている。工期は2015年6月18日から2019年4月27日までの1410日間で、開通は2020年度の予定。完成すれば交通分散による渋滞の解消、ルート選択肢の増加、名古屋港へのアクセス強化などが期待できる。

各ランプ橋架設時の図面

 この架設工事は1月20日から2月17日にかけてほぼ毎週末、4夜間実施しており、都合4つのランプ橋が取り付けられている。1本目は東海JCTから名古屋西JCTへ向かう下り線(外回り)のDランプ橋(73.6m、386t)で、1月20日に実施。2本目は名古屋西JCTから東海JCTへ向かう上り線(内回り)のAランプ橋(82.7m、435t)で、1月27日に実施。3本目は1本目と同じく東海JCTから名古屋西JCTへ向かう下り線のDランプ橋(46.8m、211t)で、2月3日に実施していた。

 この一連の工事では今回の4本目が最後の橋桁で、名古屋西JCTから四日市JCTへ向かうCランプ橋(75.8m、422t)を架設した。供用中の伊勢湾岸道上空の作業となるため、伊勢湾岸道 飛島IC(インターチェンジ)~名港中央IC間を通行止めのうえ実施している。

今回架設するCランプ橋。75.8m、422t
日本最大級のクローラクレーン「LR11350」
クローラシャシーとクローラ上部。クローラ上部にもウェイトがある
カウンターウェイト。右にいる作業員との比較で大きさが分かる
クローラシャシーとカウンターウェイトをつなぐ支柱
橋桁の移動にはドーリーを使う
ドーリーはリモコン操作
ブーム長は96m

 本工事のハイライトは、日本最大級のクローラクレーン(移動式クレーン)で橋桁を持ち上げて旋回、伊勢湾岸道上空に架設するという点にあるが、そのための機材はドイツ Liebherr(リープヘル)製「LR11350」で、最大荷重能力は1350t(作業半径12m時)、クローラシャシー(走行装置)は幅13×奥行き14.5m、ブーム長は96m。本体重量は920tで、そのままではクレーン動作時に倒れてしまうので、カウンターウェイトとしてクローラシャシーに30t、クレーン上部に300t、車体後方部に600tの合計930tが加わり、総重量は1850tとなる。

 クローラシャシーにはタイヤが付いているが、クレーン上部やブームを取り付けたまま自走できるわけではないので、細かく分けたパーツを約90台のトレーラーで現場に持ち込んで、現場で組み立てて使う。なお、1~3本目のランプ橋と今回では作業位置が異なるので、一旦分解してクローラシャシーを移動させたうえ、再度組み立てているとのこと。さらにいえば、この1350t吊りクローラクレーンを組み立てるためには400t吊りのトラッククレーンが必要で、そのトラッククレーンを組み立てるために50t吊りのラフタークレーンが使われている。この親・子・孫の順で組み立てるために2週間の時間が必要というから、規模感が伝わるのではないだろうか。

ブームから下がるワイヤ。奥に鉄塔が見える。国道302号の西側に送電線が通っている
鉄塔の左に見える照明柱は橋桁の旋回時に干渉するため、このあと撤去する(のちに復旧)
ドーリーが移動を開始。橋桁は一旦国道302号を北進して、切り返してクレーンそばまで南下

 今回架設したCランプ橋の橋桁の長さが75.8m、重さが422tであることはすでに触れたが、こちらも当然完成したものを運んでくることはできないので、小分けした部品を持ち込んで、現場で溶接して架設時の姿になっている。

 当日夜の実際の作業手順としては、作業周辺の国道302号と伊勢湾岸道の通行止めを行ない、2台のドーリー(台車)に載せた橋桁を国道302号に運び出し、ブームのそばまで移動させる。橋桁を逆Y字状にクレーンで吊り下げ、バランスを確認。持ち上げて反時計回りに旋回して所定の位置まで移動(記事後半の動画参照)、接合部で位置合わせをして固定するという流れ。

 写真を見ると分かるが、実はすぐ近くに鉄塔があり、事業区間と並行するように送電線が通っている。また、今回の作業半径44m時のLR11350の定格荷重は442tなので、Cランプ橋の422tに対して約20tの余裕があるとはいえ、負荷率は95.8%で4本の架設のなかでは最大とのこと。こうした部分からも難しい作業であることが伺える。

作業現場を国道302号上の北側から見た様子

 21時30分を過ぎてドーリーが橋桁の移動を開始。このドーリーには運転台などはなく、無人。リモコンで操作する。23時前にはクレーンから橋桁までワイヤが接続され、0時を過ぎてドーリーと橋桁の固定を解除、0時20分ごろに持ち上げが始まった。0時50分ごろには所定の位置まで到達し、位置合わせを開始。1時20分ごろにおおむね位置合わせが完了。このあとボルトを使って接合するが、その作業が完了するのは明け方になるという。

Cランプ橋の架設
クレーンのそばまで橋桁が到着
クレーンからワイヤが逆Y字状に接続された
持ち上がった
反時計回りで旋回
接合部で作業員が待ち受けている
ブームの奥にもう一方の接合部である橋脚がある
このあとボルトで固定する