ニュース
福岡女学院、JALの搭乗客とスタッフを笑顔にするアイデアを学生がプレゼン
東京の実践女子大学も参加
2017年8月7日 14:34
- 2017年8月2日 実施
JAL(日本航空)は、2015年5月から福岡女学院大学(福岡市南区)と包括連携協定を結んでおり、空港での研修やCA(客室乗務員)による出張講義などさまざまなプログラムによって、航空業界へ就職する際の理解をより深めるための活動を行なっている。
8月2日にはその一環として、学生たちによる「JALスタッフと搭乗客のコミュニケーションツール」をテーマとしたプレゼン大会が、福岡女学院で開催された。
複数のチームがプレゼンを発表する場に、JALスタッフや学校関係者が審査員として出席した。また今回のプロジェクトに共同で取り組んでいる東京都の実践女子大学のチームも参加し、個性的なアイデアの発表の場となった。
福岡女学院大学と実践女子大学の学生がアイデアをプレゼンテーション
今回のプレゼンテーション大会は、福岡女学院が取り組んでいるキャリア教育「PBL:Project-Based Learning」の一環として企業に参画してもらい、実際にフィードバックやコメント、想定されるイレギュラーな場面への対応策などをディスカッションしていくスタイルとなっている。
プロジェクトが立ち上がってから、自主的に集まった学生たちがチームを組み、およそ半年の期間を経て当日の本番を迎えた。福岡女学院から4チーム、実践女子大学から2チームが参加したが、福岡女学院側はすべてのチームが発表できるわけではなく、事前に行なわれた予選での上位2チームのみが発表できることになっていた。
開会式内ではその2チームが発表されるとあって、福岡女学院の学生たちには緊張が走った。そうして、プレゼンできる権利を勝ち取ったのは、「MEL」と「博多めんたいJET」の2チーム。残念ながら「チームgi」と「Bouquet」の2チームは応援する側となった。
大会の冒頭、福岡女学院大学 学長の髙島一路氏が「連携協定により、JALさまには多くのご協力をいただきまして誠にありがとうございます。今日は実践女子大学の皆さんとともに素晴らしい取り組みに発展したと感じています。これまでの練習の成果をここで爆発させてください。期待しています」と挨拶した。
搭乗客やCA、グランドスタッフを笑顔にするシールと利用シーンをデザイン
学生たちに与えられた共通のテーマは「日本航空を利用する搭乗客とスタッフを笑顔にするためのシール」を考えるというもの。
JALには、CAがゆかりのある県の千社札シールを配るといったサービス(現在は終了している)があったが、このプレゼン大会では、搭乗受付時や機内といったあらゆる場面で、シールを使ったコミュニケーションを研究した。
各チーム、スタッフと搭乗客双方が笑顔になるためにはどうすればいいかという内容を、この日のために磨き続けてきての発表となった。
プレゼンに与えられた時間は7分。各チーム、スライドや寸劇を盛り込むといった趣向が凝らされたさまざまな発表スタイルで、審査員にアピールしていく。各賞の説明が行なわれたあと、4チームのプレゼンがスタートした。
チーム「キラ女」
プレゼンのトップバッターは実践女子大学のチーム「キラ女」。「JALの旅行客をリア充に!」というコンセプトで、友人同士でお揃いにできる、SNS映えする「ペイントシール」を提案した。
コストの高さというデメリットもあるが、機内でのやり取りから、旅行先でペイントシールを貼ってSNS投稿、帰りの機内でもCAとのコミュニケーション、といった複数回の笑顔を引き出せるという研究結果となった。
チーム「博多めんたいJET」
続いて2組目は、福岡女学院から予選を2位で通過した「博多めんたいJET」の発表。従来の千社札シールを有効活用した「JAL札47」を提案した。
シールには各地方の方言がプリントされ、機内放送でもCAの出身地の方言でアナウンスする。聞きなれない方言に新鮮な気持ちを覚えたり、地元の方言を聞いてホッとしたりする効果を狙うものとして、シールには各県の著名人や特産物がプリントされている。機内アナウンスは1日2便とし、スタッフのマンネリ化を防ぐ配慮もあった。
質疑応答では、「担当者が東京出身で標準語の場合は?」との問いに「福岡県内でもエリアによって分かれており、東京でも下町の言葉を提案できれば」と答えた。
チーム「博多の女になりたい」
3番目にプレゼンしたのは、実践女子大学1位のチーム「博多の女になりたい」。まず冒頭のスライドで、旅行前日から帰宅までの旅行客の様子を考察。旅行中は笑顔が多いが、帰宅すると日常に戻ってしまうことに着目し、「余韻」を残し思い出の部分を強調したいという考え。
10代後半~20代後半の若年層を対象に絞り、「フォトニケーションシール」を提案した。これは「フォト」と「コミュニケーション」を組み合わせた造語で、搭乗客がそれをスマートフォンなどに貼って、CAが認識することにより、写真の声がけがしやすくなる役割を持たせた。
旅行先よりも機内での思い出を残すことが少なくなりがちと仮定し、フォトニケーションシールによって、増えた写真を旅行後に見返すときにもJALの存在があることによって、リピーターにつなげることが狙い。
JAL側から搭乗客に渡すシチュエーションとしては、空港などのご当地看板の前で自撮りをしている場合などに手渡すことを想定しているとのこと。
チーム「MEL」
最後にプレゼンしたのは福岡女学院の予選を1位で通過したチーム「MEL」。手荷物カウンターで引くことのできる「JALみくじ」というアイデアで、搭乗受付時の空白時間を利用したエンタメ性に富んだものとなっている。
チームは実際に福岡空港の搭乗カウンターの様子を見学し、1人あたりの平均所要時間と発券を待つ時間を計測し、26秒の空白時間があることから、その時間を利用しておみくじを引いてもらうこととした。
おみくじの内容も、意外性によって笑顔を引き出す作戦となっており、大喜利の要素をふんだんに取り入れた。
質疑応答で、「列に並んでいる急ぎのサラリーマンに対しても同じことを?」という問いには、あくまで希望者に向けて、というスタイルを想定しているとのこと。
グランプリはチーム「MEL」の「JALみくじ」
すべてのプレゼンが終了し、結果発表と閉会式に。日本航空特別賞は実践女子大学のチーム「博多の女になりたい」が獲得し、準グランプリは、チーム「博多めんたいJET」が選ばれた。そして、栄えあるグランプリはチーム「MEL」が受賞した。
グランプリの発表を行なったJAL 九州・山口地区支配人の溝之上正充氏から、「こうしたチームで何かをするとき、リーダーシップを発揮して引っ張る存在も大切ですが、“集合知性”が大事になります。
脳科学の研究結果には、普通の人たちが一丸となって、その集合知性を発揮してすばらしいアウトプットをする、といった事例もあります。そこにはイコーリティ:対等であること、ユニティ:一体感を持っていること、そしてマインドフルネス:理解し合うこと、この3つが大事です。
今日は、どのチームも集合知性を発揮されていたと思います。日々の業務のヒントとしても大変参考になりました。チーム『博多の女になりたい』の提案も、今の時代にあったSNSの活用があり、斬新でした。大いに参考にしたいと思っています」とコメントし副賞を手渡した。
最後にこのPBLを運営してきた福岡女学院 次長の吉松朋之氏から、「支援いただいた日本航空さまには感謝申し上げます。学生時代にやり尽くした経験を持たせてあげたいということで、このPBLを続けてまいりました。大学のリソースだけでは限界があります。こうして企業さまのお力をいただいております。
発表できなかったチームのプレゼンも練習からずっと見てきて、どのチームが出ても遜色ない実力を持っています。実践女子大学の発表も、やはり中央でやってきたことを感じさせるプレゼンでした。こうして発表する場所やタイミングが違えば、また違った結果となるということも学生には感じでほしい。今回で一区切りとなるが、引き続きキャリア教育について活動していきます」と、学生たちに賛辞を送った。