ニュース
タイ国政府観光庁、2017~2018年に向けた「ラグジュアリー」戦略を明らかに
タイの4つ星、5つ星のリゾート施設など20社を集めて商談会
2017年6月1日 15:51
- 2017年5月26日 実施
タイ国政府観光庁は5月26日、都内で「アメージング・タイランド・ロードショー in 東京 2017」と銘打った商談会を実施した。同イベントは、タイのリゾート・観光施設の担当者(セラー)と、日本国内の旅行代理店ら(バイヤー)の商談の場として毎年開催しているもの。
2017年から2018年度にかけてのタイ観光は、「ラグジュアリー&ローカルエクスペリエンス」をコンセプトとし、富裕層をターゲットに据えた戦略を打ち出す。そのため、今回の商談会では参加するセラーの多くを4つ星以上の企業に限定して行なわれた。
タイの深いところにコミットする旅行商品を
商談会の前に開かれた説明会では、タイ国政府観光庁 投資局長のコラウィット・ウォンプラサート氏が登壇。2016年の日本からタイへの観光客は141万人、前年比約7%増で順調に伸びていることを報告。2017年は147万人を見込み、前年比3%増として、経済効果は2100億円規模になると予測した。
このように日本からの観光客数は伸びを見せてはいるものの、「航空便のキャパシティが上限を迎えつつある」ことから、単純により多くの観光客を呼び込もうとしても観光業のより大きな活性化には結びつきにくい。そのためタイ国政府観光庁としては、「観光のクオリティを上げていく」ことでさらなる成長を目指す。
その具体策として挙げたのが、「ラグジュアリー&ローカルエクスペリエンス」というコンセプト。タイという国がもとから持っている「ぜいたくな商品、独特の生活文化など、タイの深いところにコミットする」旅行商品を推進することで、主に富裕層にアピールするのが目的だ。
続いて、タイの最新情報と合わせて、それら「ぜいたくな商品」や「独特の生活文化」の詳細例を、同庁 東京事務所の藤村喜章氏が紹介した。
タイはこれまで「安い」「トラディショナル」「男性向け」といったイメージの強い観光地だったが「最近はそのイメージが変わった」と同氏。地域別にいうと、中央部の首都バンコクを中心に、歴史や文化を感じられる北部のチェンマイ、スコータイ、東北部のイサーン、そしてビーチリゾートが広がる東部のパタヤとトラート、南部のプーケット、サムイがあり、それぞれで新しい見どころが育っているという。
例えば東北部についてはクメールの流れをくむ古い文化だけでなく、サッカーやモータースポーツといった新しい観光資源もある。東部のトラートにはプーケット島に次いでタイで2番目に大きいチャーン島が、南部にはプーケット島以外にもさまざまなリゾートがあり、まだ日本人にはあまり知られていない場所も多いとのこと。
このようなデスティネーションの多さに加えて、親日国であり、高度な医療機関が多く存在するため安心して旅行できること、(物価が安いため)ぜいたくに買い物やグルメを楽しめること、スパやマッサージといったリフレッシュできるスポットが多いことも特徴だとした。
2017年の日本からの観光客数は、見込みは147万人だが、目標は150万人。ゴルフ、女性、学生、マラソンランナー、シニア、若いカップルといった層もターゲットに据え、いくつかのキャンペーンも展開する。
例えば女性に向けては、タイ王国王妃の誕生月である8月に「女性タイ旅月間」キャンペーンを実施。2016年も同様の活動を行なったが、そのときはイミグレーションでピンク色のカーペットなどを敷いて女性を歓迎していたという。2017年もこうした活動を行なうほか、スマートフォンアプリを通じて各種施設で割引サービスを受けられるようにする。
2018年度にかけては、質の高いデスティネーションでタイのイメージアップを図るとともに、富裕層(ハイエンド)向けのリゾートや世界遺産をアピールし、スポーツやウエディングといったテーマ旅行の拡大を進める。プレミアムサービスやビザ発給などを通じて長期滞在しやすくし、顧客単価の向上によって観光産業の利益向上につなげる考えだ。
タイには観光素材は多く、魅力あるツアーを組みやすいのではないかと話す同氏。しかしながら、ビーチリゾートが首都から離れており、公共交通機関も発達していないため移動に時間がかかることが課題の1つ。ビーチリゾート近くにある地方空港には現在チャーター便の往来はあるものの、日本からの直行便が就航することに期待している。
目標は日本人の「ファーストビジターを増やす」こと
タイ国政府観光庁 東京事務所 所長のパッタラアノン・ナチェンマイ氏は、説明会後にメディアのインタビューに答えた。今回の「ラグジュアリー」をコンセプトとした取り組みは、日本からの観光客だけでなく、欧州を中心とした他国もターゲット。ただ、中国・上海は別格で、ラグジュアリーを求める富裕層は中国が圧倒的に多いようだ。
そんななか、日本からの観光客については、すでにタイを訪れたことのあるリピーターの率がとりわけ高いことから、初めてタイ観光に訪れる「ファーストビジターを増やすことが目標」と同氏。また、もう1つの課題は、先述のとおり、首都バンコクと地方を行き来する際に利便性の高い公共交通機関が少ないこと。同氏の個人的な感覚としても、移動手段の整備の必要性について認識しているようだ。
なお、日本人とそれ以外の国の観光客との間には、観光の仕方に差があるとも語った。グループツアーよりもFIT(個人旅行)の流れに向かっており、観光スポットにおける歴史背景に興味を持つのは共通だとしたが、「冒険」という面では欧州の人の方が旺盛だという。例えば象乗り体験で、日本人は象に直接エサを与えられればそれで満足しがちだが、欧州の人は「象使いになるにはどうしたらいいかなど、本気で勉強したがる」という。
また、日本人観光客は20代後半からと年齢層が高めで、一方の欧州は10代後半からの幅広い年齢層が旅行に訪れる。こうした日本人ならではの旅行に対する考え方やさまざまな事情を踏まえた形で、2018年度にかけて女性向けや富裕層向けの旅行商品が登場すると思われる。今後どんなタイ旅行を楽しめるようになるのか、今から気になるところだ。