荒木麻美のパリ生活
ジャパンエキスポで和弓を引く
「MANGA」「COSPLAY」だけではない日本文化の祭典
(2015/7/18 00:00)
7月のパリの一大イベントとなった「ジャパンエキスポ」。アニメやポップカルチャー関連の部分はよく知られていると思いますが、そもそもは日本文化の祭典。日本の現代・伝統文化部門の紹介も約15%はあるのです。今回は私が参加した弓道を中心に、今年のジャパンエキスポでどのように日本の現代・伝統文化が紹介されていたかをご報告したいと思います。
電車の中からすでにジャパンエキスポ
今年も会場はシャルル・ド・ゴール空港から近いParis Nord Villepinteで、パリ市内中心部からはパリ高速鉄道のRERで約25分です。会期は2015年7月2日(木)~5日(金)の4日間。パリは猛暑注意報が出た日もあった暑い週でしたが、来場者数は約24万7000人と今年も大盛況でした。
私は日本で始めた弓道をフランスでも続けているのですが、ジャパンエキスポで弓道を紹介するお手伝いをするため、最終日の日曜日に弓を引きに行きました。約2mの弓を持っていたこともあり、電車の混雑を避けるべく開場時間より1時間早い8時に着くように向かったのですが、それでも電車の中はほぼ満員。空港へ向かうスーツケースを持った人たちと、大きなぬいぐるみを持ったり、コスプレしている人たちが混在する不思議な空間でした。
会場に入って弓道スペースに行くと、弓を引くスペースと、弓道に興味を持った来場者にゴム弓というものを体験してもらうスペースの2カ所に分かれていました。この2つを合わせるとジャパンエキスポ内でもかなり大きなスペースとなります。しかし今年の「弓引き隊」は総勢10名ちょっと。あれ? フランスの弓道人口は確か600人くらいだったような?
ありがたいことに観客そして体験者が絶えることはまったくなかったので、各自ちょこちょこと休憩を挟みつつ、弓引き隊総出でがんばりました。
弓を引いたり、ゴム弓を教えながら観客や体験者の方々といろいろなお話をしてみましたが、たくさんの方がおっしゃっていたのは「弓道というものを知らなかった」「実際に引いている姿を初めて見た」という感想です。
そして、弓道には「『ZEN』を感じる」とおっしゃっていた人も何人か。『ZEN』というのはフランス語としてすっかり定着している言葉なのですが、意味としては本来の意味とは違って、「冷静」「安らぎ」という感じでしょうか。そして弓道からこの『ZEN』を感じるというのです。
実験の結果、和弓を引いているときの脳波は、瞑想をしているときと同じ状態だといっているTV番組を観たことがあります。弓道は肉体面だけでなく、精神面にもよいということがよく分かる話です。私のレベルでは瞑想状態に入っているとはとても思えませんが、その状態に近づくべく日々精進をしています。弓道を初めて見た人たちが、的に当たる、当たらないだけでなく、喧騒のジャパンエキスポにあっても、弓道から『ZEN』を感じ、それに魅せられる人がいたのは大変うれしいことでした(その一方で「何これ! 動きがおっそ!」とつぶやきながら、速足に去る人も何人か見ましたけど)。
そのほかの武道や匠の技術紹介なども盛りだくさん
ジャパンエキスポでは弓道のほか、剣道、合気道、居合道などといった武道のほか、日本の伝統文化や工芸品、食材を紹介するコーナーも充実しています。
実は今回、ジャパンエキスポ初体験の夫も一緒に行ったのですが、アニメやゲーム、ポップカルチャーにまったく興味がない彼も、終日歩き回っていろいろなものを見て楽しかったそうです。彼が撮った写真を見たら確かに楽しそうだったので、私も短い休憩時間の合間を縫って、彼が興味を持ったブースを中心にいくつか訪ねてみました。