荒木麻美のパリ生活

日本発祥のNPOがパリの道路をお掃除

活動開始から10年、パリジャンたちの参加も増加

日本発祥のNPO団体「green bird」の活動に参加してきました

 パリでは道を掃除する清掃車と清掃人をしょっちゅう見かけます。道には数mおきにゴミ箱もあります。それなのに多くの人が「パリは汚い!」と口を揃えるのが現実。

 要はパリジャンのモラルの問題なのです。一歩外に出れば汚しても気にしない人が多い。犬の糞も罰金を課せられるというのに拾わない人をまだまだ見かけます。電車の中でも靴を履いたまま、足を椅子に乗せる人がよくいます。要するにそれをわるいこととは思っていないのでしょう。

 そんなパリを少しでもクリーンにしようと活動しているのが「green bird(グリーンバード)」という、「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに活動する日本のNPO団体のパリ支部です。

 green birdが日本で誕生したのは2003年5月ですが、パリでの活動が始まったのは2007年1月のことでした。パリでの活動を開始して10年となるgreen birdですが、私は4月下旬、初めて参加させてもらいました。

 今回の活動場所はGallieni駅周辺。green birdはパリ市の清掃局とのつながりが深いため、パリ郊外で活動することはほとんどないそうですが、今回はパリ市内ではなく、パリ市のすぐお隣での活動となりました。

Gallieni駅周辺はこんな感じ

 ちなみに場所の選定は、参加者からの要望または企業やほかの団体とのコラボレーションの都合によることがほとんどだそうです。

 集合予定時間の14時半になると、集合場所に人々が集まってきます。何度も参加している常連らしき人もいれば、初めての参加という人も。私の印象では、初めての参加という人がかなり多かった印象です。

 パリ支部代表の稲井さんによると、参加者の9割はフランス人で、残りが日本人だそう。「日本発祥のNPOなので、もう少し日本人の参加者が増えるといいですね」とのことでした。参加者数の平均人数は50~60人ほどだそうですが、今回は40名弱、年齢や人種はさまざまでした。

右の日本人女性が代表の稲井佳子さん

 あくまで日本のNPO団体なので、清掃に必要な道具はすべて日本から送られたものを使用しています。支給されたベストに軍手、ゴミ袋にトングを配られると、各自メトロ周辺の好きなところに行って清掃開始です。清掃時間は1時間です。

 参加者いわく「パリ市内より郊外の方が汚い!」とのことで、たった1時間で大量のゴミが集まりました。場所によっては尿(恐らく人間の……)の臭いのするところもあり、マスクを持ってくればよかった! と思う場面も。1時間後に再度集合したときには、参加者の一人が「病原菌に汚染されないように、手の消毒を忘れないように!」と言っていました。

ここが一番悪臭のひどかったところ……
私が見たなかで今回一番汚かったのはここ。女性が中に入ってゴミを掻き出している姿は「お見事!」というしかありませんでした。手伝っているヘルメットの男性は、今回初めての参加だそうですが、彼もとてもよく働いていました。バイクで来てヘルメットを置く場所がないため、ずっとヘルメットをかぶっていたようですが、私がそのことを指摘すると「実は俺、ダフト・パンクなんだよね」と真顔で言うので爆笑
1時間の活動で集まったゴミ。市のゴミ収集車が持って行ってくれたそうです

 清掃をしながら参加者から話を聞いていたのですが、参加のきっかけは知人や友人に誘われたからという人が多かったです。皆さん「少しでも街がきれいになるのはいいわよね!」とやる気満々で、それはよく働くので感心してしまいました。

参加されていた皆さん
数少ない日本人参加者の3人。お友達同士だそうです。私以外では、日本人はあと男性が一人だけだったと思います
集めたゴミを前に皆いい笑顔!
活動内容について稲井さんに質問をしてきた通りすがりの人

 そのほか「知り合いを作りたい」という人もいて、参加の理由はそれぞれですが、「1カ月に1時間だけ、できる人ができるときにやる」というのが10年間続いている理由なのでしょうね。

 なお、清掃途中、何度も「掃除をしてくれてありがとう!」と通りがかりの人に言われました。稲井さんに熱心に質問をしてくる人もいましたし、こういう人のなかからまた活動に参加する人が出てくるかもしれませんね。

 ただ、一人だけ「君たちが道を無料で掃除をすると、清掃に関わる人の仕事を奪うことにならないか?」と言ってきた男性がいました。最初「う、面倒臭い人?」と思いましたが、別に喧嘩を売っているわけでもなさそうなので、

「でも、そもそも皆が道にゴミを捨てなければ、清掃業者がこんなに来る必要はなくなりますよね?」

と答えると、自分がモロッコから来た移民であること、フランスで移民として暮らすのは大変であることも訴え始めました。移民が担うことの多い清掃業を奪われるという危機感から、何かを言わずにはいられなかったのでしょう。男性が移民としてやってきた30年前のモロッコと現在の日本とでは状況は違いますが、私も移民ではあるので、その気持ちは想像できます。

「私たちが月に1回、1時間掃除をしただけでは、清掃業に携わる人の仕事を奪うようなことにはならないでしょう。一番大事なことは、皆が少し気を付けるだけで、パリはもっと美しく、皆が気持ちいいと思える環境になっていくということ。これはゴミ問題だけではなく、パリの生活全体に言えることですよね。私たちの活動をとおして、パリジャンたちがそのことを少しでも考えるきっかけになったらいいと思っています。あなたもその一人で、だから話かけてきたのでしょう?」

と私が(初参加なのに偉そうに)男性に言うと、急ににっこりとして、「そう、そのとおりだよ!」と言いながら握手を求めてきました。こういうのが「あぁフランスだな」と思う瞬間です(笑)。

 話は戻り、リーダーの稲井さんは2009年から本業の会社員をしつつ、完全なボランティアでgreen birdのリーダーをやっているそう。清掃に使う道具のメンテナンスも稲井さんが一人でやっているとか。いろいろご苦労はあると思いますが、活動をとおして人とのつながりが生まれ、学ぶこともたくさんあるそうで、これからも「継続していくこと」を一番の目標にやっていきたいとのことでした。

 私は街が汚いといったネガティブなことについては「だからパリジャンは!」と思うことが正直あります。でもgreen birdに参加するパリジャンがこれだけたくさんいるわけですし、ひとくくりにパリジャンといっても、そのバックグラウンドはさまざまなはず。

 私も国籍は日本といえどもパリに住んでいるという意味ではパリジェンヌなわけで、きれいにして「あげる」というのではなく、「同じ地域に住むもの同士、少しでも気持ちよく暮らせるよう、一緒にきれいにしましょう」という気持ちで参加すればよいのだなと思いました。

 それで自分の気持ちも少しスッキリすれば一石二鳥ですよね。私も今回の参加をきっかけに、これからも行けるときにはマイペースで参加したいと思います。日本人が減っているそうですし、ご興味のある方は一緒に参加してみませんか? 参加したい場合は、green birdパリチームのWebサイトに開催日時と場所が掲載されています。事前に参加申し込みをしていただくか、旅行中に当日思い立ったような場合は直接現地へ行っても大丈夫です。

ゴミ拾いに関係して、自宅近くのサン・マルタン運河を散歩中に見かけたサーフライダー・ファウンデーション・ヨーロッパのパリ支部の人たち。海辺の環境保護を目的にカリフォルニアで発足した団体ですが、世界中で約25万人のメンバーがいるそう。海の汚染の80%は土中の汚染から来るということで、彼らも運河周辺のゴミ拾いをしていました

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。